落書き。~小人さんの誤算~
はい、お久です♪
カクヨムサポートに投稿していた短編が溜まってきたので、こちらにも投稿します。
サポーターでギフトの御礼に書いたものなので、それなりの時間差が出来ますが、新作をあちらに投稿するのと同時に、こちらへ旧作を投稿しようと思います。待てば0円的になりますが、御了承ください。
m(_ _)m
「チヒロ様の婚約も整ったことだし、我らもそろそろ式を挙げないか?」
「それなら、あの歌を」
「あの歌?」
城下街外れの森林公園で、ドルフェンはサーシャといた。葉の落ちた木々も多いが、さすが一個の森。風をはらむ緑も多い。
特に庭師達のこさえる四季の郷は、その季節ごとの特色を見事に表していた。
その一角《キルファンの庭》にサーシャは眼を細める。二人が座る庭では、立ち枯れた木々の合間に大きな石を中心とした池の庭が形成されていた。
滅多に水の凍らないフロンティアだが、それなりに気温の下がった池は木枯らしの寄せる細波で綺麗に泡立っている。
ときおり魚の作る波紋を瞳に映し、サーシャはドルフェンの柔らかな笑みに頬を染めた。
ようやく、本当に結婚するのだと実感が湧き、それに伴って式の様子を脳裏に描く。そして、ふと彼女は眼を煌めかせた。
「王太子殿下の婚儀で、チィヒーロ様の歌われた歌が..... 心に沁みて。あれを演奏させていただきたいですわ」
ああ、とばかりに得心顔をするドルフェン。
護衛として壁に立っていた彼も覚えている。高らかだが、切なく心を締め付けるように見事な音色。
孤児院の子供達が歌を合唱していたが、その歌がまた..... 切なく、街や民の心情を繊細に歌いあげていた。
「素晴らしい曲と歌だった。まさに王都そのものを語るような」
「ええ。あれをもう一度聞きたいのです」
緋毛氈の敷かれた長椅子に座り、二人は肩を寄せ合う。
「御願いしてみよう。きっと御祝いに使わせてくださるさ」
ふくりと眼に弧を描き、微笑み合うサーシャとドルフェンだが、それが発端となり、先々の婚儀で歌う定番曲になるとは思いもしない小人さん。
件の曲は、藤山○郎の《夢淡き○京》 東京の部分を王都に変えただけの曲である。
しばらく後、婚儀のたびに教会に寄付したパイプオルガンで演奏されるその曲に冷や汗を垂らし、拝むように空を見上げる小人さん。
すんませんっ! 藤山先生ぃぃ! 盗んだわけじゃないんですっ、ホントにそんなつもりはなかったのぅぅぅっ!!
あーいっと心の中で絶叫する千尋。
まさか、こんなことになるとは思わなかった、懐メロや軍歌が大好きなのは秘密の爺婆っ子な小人さんである♪