虹が暮れた夜に
日が暮れてきた。いつの間にか虹も暮れている。
待ち合わせをした駅まで戻ってから、もう一軒。
「口直しにビールを」
「では、私も」
違う種類のビールを飲み比べる。
「よくわからないね」
「はい。よくわかりませんね」
お互いに顔を見合わせて笑う。
ネオンに照らされた雨の糸が窓の外で煌めいている。
「そろそろかな」
「そろそろですね」
地下鉄へ向かう階段の上で君が手を差し伸べる。
柔らかくて温かな君の手を僕はしっかりと握りしめる。
「じゃあね」
「じゃあね」
僕達はお互いに毎日一つずつお互いの良いところを言い合うことにしている。
『明日の分の褒め言葉…たまに見せるどこか遠くを見つめるような瞬間の表情が色っぽい。そんな君を守ってあげたくなる』
『では、私から…私の欲しい言葉が分かっているみたいに言ってくれるあなたはすごい。でも、明日の楽しみがなくなっちゃった』
『まだ、明日にはなっていないよ。明日は明日。また会いたいよ』
『また会いましょう』