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五十一本目 New War

日常か~ら~の~




 ――昼休み

 とある学校の、その教室で。


「あーーっ!畜生!!何で受験なんてものがあるんだあああああああ!!」


 世の学生の多くが抱くであろう感情を、彰太は存分に発散していた。

 その様子には龍成も思わず苦笑いを浮かべている。


「あははは……」


 しかし、何も言えない。

 それにはとある理由があった。


「羨ましいわね……余裕そうで」


 そう憎々し気に――しかし誰も気づかない程度に頬を染めて――呟くのは愛梨だった。

 高校三年生。

 彼女も彰太と同じ悩みを抱えていた。

 しかし。


「いいご身分だよなぁ龍成っ!お前は推薦入学なんてもんで受験なしなんだからよぉ!!」

「完全にセリフが三下ね……」


 そう、推薦入学。

 彼らの諍いの原因を作っているのはそれだ。

 彰太と愛梨が受験勉強の励む――彰太は本当に励んでいるかは怪しい――中、龍成は推薦により、早々に大学の合格が確定しているのだ。

 武術に関して、全国大会優勝者も真っ青な実力があるのだから、それも当然かもしれないが。

 尚、彰太のやさぐれっぷりはBFOが出来なくなるから、というのが一番の原因だったりする。


「いやぁ……頑張ってね」

「ちくしょうっ!!」


 愛梨は実はさほど問題ないのだが……特に苦労しているのは彰太である。

 何せ廃人だらけのBFOで、そのトップ陣に位置している彰太は……当然プレイ時間も相応に多い。

 生来のセンスのお陰で廃人にはなっていない(休日を除く)が、それでもやはり勉強の時間はかなり削っている。


「くぅ……せっかくニーズヘッグもいなくなったってのに……!」

「……早く追いつきたいわね」


 最近ようやく大蛇(ナーガ)を降し湖の町(マルトロス)に到達した愛梨も、彰太が焦る原因である。

 この間にもあいつらが強くなって……と彰太が焦燥する中、そこでふと思い出したように龍成が口を開いた。


「そういえば……彰太は『種族進化』のこと知ってるの?」

「……おい、何だそりゃ」


 詰め寄る彰太。

 怪訝な様子の愛梨。

 それぞれの様子から、その言葉がプレイヤー間に広まっていないことを理解した龍成は、言葉を続けた。


「100Lv到達で出来るんだけど――」


 ガシッ、と。

 彰太が龍成の肩を掴んだ。

 そして熟練刑事(ベテランデカ)の如く問い詰める。


「おい……成ったんだな?100Lvに!」

「うん、成ったけど……?」

「この野郎!どこでレベル上げやがった!?吐きやがれ!!」


 彰太の声が教室に響き渡る。

 なんだなんだ、と怪訝な目を向けるのは周囲の数名。

 教室には食堂で昼食を摂っているものを除き、龍成達も含めて十人もいなかった。


「いや、〔ニーズヘッグ〕との一戦で上がっただけだよ?」

「ウソォ!?俺今日ログインしたらニーズヘッグ狩ってくる!」


 それが出来るなら龍成が撃退することも無かっただろう。

 彰太が騒ぎ、愛梨が諫める。

 最近定番となったその様子を眺めていると、龍成の脳裏に疑問が浮上する。


(そういえば……あの時の〔蛇帝(ニーズヘッグ)〕が分身、分体なら……それが死んだ場合はどうなる?いや……そもそもあいつは死んでないか。それなら……あの時の分身(ニーズヘッグ)は――)



 ――どこにいった、と。

 龍成が思考していた時。

 〈ヨルム〉では、世界を揺るがす事態が発生しようとしていた。


 ◇◇◇


【『ヨルムの情報(インフォメーション)スレ』、略して『ヨルムインフォ』の231】


1:ヨルムの情報であれば何でもOK!

 世界情勢でも、アイテムでも!

 ≫次スレは600で!


   ~~~~~~~


337:すいません、NPCに聞いても教えてくれないんですが……

  ヨルムの国事情とかってどうなってるんですかね?


338:あー

  NPCな。プレイヤーの印象が最悪だからなぁ……

  まぁ初期のあの事件があれば、しゃあない


339:ワイが説明しちゃる

  あれはそう……BFOが発売されてから二週間も経ってない頃だった……


340:回想入るの?ww


341:説明はよ


342:了

  まぁ初期にね。

  問題起こしたプレイヤーがいたわけですよハイ


343:急に雑になったww


344:真面目に言うと……『PKA』なんて呼ばれてる事件なんだがね


345:真面目かどうかはさておきPKA?


346:『プレイヤーが キルられた 事件《Accident》』

  略して『PKA』


347:プレイヤーが、って……初期の町でですか?


348:正確に言えばキルったのはプレイヤーの方だったんだけど……

  NPCキラーが多発しおったんだよ。


349:うぇっ


350:まだ最初の頃で……調子乗ったプレイヤーがね

  最悪なことに数十人単位で街中で騒動起こしよったんだよ


351:それなら確かにプレイヤーが嫌われるのも分かりますけど……

  何でプレイヤーが殺された、って事件になってるんですか?


352:まぁその事件はすぐに収束したんだけどね

  恐ろしいことにそのせいで店にプレイヤー、『冒険者』が出禁になったりもして……


353:本題セイッ!


354:うっさいわw

  で、その事件を解決したのがやね……一人のNPCなんやけど。


355:……一人?


356:一人やで


357:どうやってですか?


358:当然プレイヤーは殺しても死なんし……

  そのNPC……今は『冒険者殺し』なんて呼ばれとるけど。

  たった一人で……数十人……下手すりゃ100人以上のプレイヤー全員を()()しおったんや


359:……マジですか


360:マジデス

  さらに恐ろしいことに……そのNPC見た目は凄い鍛えてるオッサンって感じやったんやけど……

  何とびっくり服装が普通の衛兵、そこらの兵士と変わらんかったわけよ


361:普通の?


362:普通の

  ワイは実際にはみとらんけどね


363:あれはやばかったぞ……

  まじで瞬殺。

  頭に拳骨一発で沈められてたもん


364:見た人かw


365:拳骨って……素手だったんですか……


366:うん

  目で追えない速度で動いてたりね

  プレイヤーは死なないけど、正規の牢屋に入れられると『自害』も出来なくなるって話だし

  リログしても位置は変わらない


367:やばいよなぁ


368:まぁ実際にNPC側に死亡者が出なかったからいいものの……軽傷重傷は結構あったみたいだし。

  あれのせいでプレイヤーのイメージサイアクだからね


369:全員捕まったんだっけ、あの事件


370:いや……分からん

  全員同じギルドだったみたいだし……Lv上がって「ヒャッハー!」したかったんだろうけど……

  もしかしたら他にもメンバーがいたりして?


371:不吉なこと言うなし

  まぁPKなら他にもいるけど


372:大変だ!大変だ!大変ダーーッ!!


372:変態ダー


373:噂をすれば……?


374:誰が変態やねん


375:お前や


376:ああん?


377:やんのかコラ


378:漫才やめぇや

  どったの?


379:隣国が……隣国が攻めてきたらしいんです!


380:な、なんやってーー!!!


381:戦争イベの予感|∀・)チラッ


382:エ……でも俺ら空間の壁抜けれなくね?


383:ア


384:ア


385:アッ


386:えっ、その隣国とやらが空間の壁のこと知ってたらハメゴロシやん


387:実際モンスターにはめごろされた話はあったけど……

  対人戦でそれはヤバくね?


388:いや待て慌てるな愚民ども

  まずどこ情報?


389:衛兵や

  マルトロスの兵士NPCが騒いどったんで盗み聞きした


390:おぬしも悪よのう


391:お代官様こそ……フフフ


392:いやアホか

  つーか隣国って……


393:ああ……二つ、あるよな?どっちだ?


394:え……二つ?


395:うむ。

  俺らの国……リヴィア王国がある大陸は、三つの国が三つ巴状態になってるんや


396:え、えぇーーーー!?

  (最初に国事情を聞こうとしたら何故か事件の話になって聞けなかったことが聞けた!!)


397:あ


398:あ


399:あ……


400:スマン(;・∀・)





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