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リアルチートは突然に _ゲーム初心者の最強プレーヤー_  作者: Lizard
第三章 蛇帝ニーズヘッグ
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四十五本目 古びた酒場


 彼は知っている。

 どんな時でも必ず現れ、必ず勝利し、必ず助ける。

 そんな英雄(ヒーロー)は、物語の中の存在なのだと。



 彼は知っている。

 大切な人を助けられなかった時の悔しさ。

 悲しみ。

 怒りを。



 彼は知っている。

 自分が決して正義ではないことを。

 そもそも、彼にとって正義も悪も関係ないのだから。


 正義も悪も、判断する人間によって変わる。

 彼にとって、そんな区別は無意味だった。



 助けたいときに助けられない。

 殺すべき敵を、殺せない。

 彼は、そんな自分が嫌だった。


 だからこそ、力を磨き、鍛えた。

 彼にとって、"敵"とは全て等しく『倒すべき存在』なのだ。



 それは……軍隊であっても、国であっても……



 "敵"であれば、刃を向ける。



 感情に任せ、誰かを助ける。

 それが、正しい行為かどうかなど、どうでもよかった。



 気分次第で、誰かを助ける。

 例え、世界を敵に回すとしても。



 何かに怯え、願いを諦めるなど。

 もう、そんなことはしたくなかった。



 当然、そんなことがまかり通るほど、世界は甘くない。



 ―――が、だからこそ。

 だからこそ、彼は己を鍛える。強くする。強くなるのだ。





 何者にも、負けないように

 助けたいときに、助けられるように

 もう――――…失わないように




◇◇◇◇



「――――というわけで、今時間あるかな?」



ニーズヘッグとの激闘を終えたリューセイは、カイルが働くエイフォルトの南門に直行した。

唖然とした表情で動かないショート達の横を通り過ぎて。



「いや説明しろやっ!?」

(――ごもっとも)



ちなみに、先ほどの発言は開口一番の言葉である。



「それじゃ、本題に入ろうか」

「さっきのセリフは何だったんだよ……」

「――?言ってみたかっただけだよ?」

「だろうな!!」



流石に話が進まないので、リューセイは事の経緯を急ぎ足で話した。



「要は話が聞きたいんだけど」

「またざっくりしてんなオイ……どれくらいだ?」

「結構長くなるかも」

「話をするのは別にいいんだがな。見ての通り、今は仕事中なんだよ。今から……一時間半後。またここに来い」

「分かった」



尚、〈ヨルム〉の時間の単位は基本的に現実と変わらない。

リューセイは困ることも無いので特に気にしていないが。





◇◇◇


その後、ワイバーンとの飛行訓練、アークとの戦闘訓練等で時間を潰し、リューセイは再びエイフォルト南門へ戻ってきた。


「仕事の方は、終わったみたいだね」

「おう、終わってるぞ」



カイルの私服は、一言で表すなら一般的な平民の服。

そんな印象だった。

見たところ、生地の素材は麻だろうか。



「そんじゃ、こんなとこで長話するのもなんだからな。ついて来いや」

「―?分かったけど……どこ行くの?」

「ま、それは着いてからのお楽しみだ」



ニヤリと笑うカイルの後について、歩き出した。



◇◇◇


案内された先は、庶民的な雰囲気の酒場だった。

しかし、木造の建物は少し……いや、かなりの年月が経過したことが分かる……要は襤褸(ぼろ)かった。



「……見た目はぼろいが、味はイイんだよ」

「へぇ……いや、これはこれで」



雰囲気があっていいと思うよ、とリューセイが言葉を続ける。

日本で暮らしているリューセイにとって、酒場というのは全く馴染みの無いものだ。

それだけに、古びた外見であってもその雰囲気は新鮮に感じる。

むしろ、古びた見た目が醸し出す雰囲気は、リューセイが好むものだった。






(あれ……?そういえば、僕ってこの世界ではまだ何も食べたことが無いような……)





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