二十一本目 初PVP _リアルチーター、人の心の難儀さを知る_
人の心とはいと難しきものよ・・・
「てめぇはさっさと情報を出せばいいんだよ!当然のことだろうが!!!」
プレイヤーの男が叫ぶ。
うーん・・・
どうしてこうなった?
マルトロスを歩いていた時、突然プレイヤーに呼びかけられた。
どうやら事の発端は橋の上でナイアードと会話していた所を見られたことらしい。
~~~~~~~
遡ること10分前―――
「おい」
「うん?初めまして。どうしたんですか?」
真っ白な鎧を着た男が呼びかけてきた。
「お前さっき水龍神と会話してたよな?どうやったんだ?」
「・・・どうやったとは?」
どうも嫌な感じだなぁ・・・
「出現条件を聞いてんだよ!」
出現条件って・・・
ナイアードに会うための条件?
「いや、知らないですよ?」
「はぁ!?てめぇ、隠そうってんならどうなるか分かってんだろうな?俺はギルド"聖天騎士団"のメンバーのブローXだぞ?」
そういって凄いニヤニヤしてる。
いや、ブローXって・・・
「すいません、知らないです」
「あぁ?舐めてんのか??てめぇだって知ってんだろ?純白の鎧は"聖天騎士団"の証拠だ!!てめぇはさっさと教えりゃいいんだよ!!」
「・・・え?"聖天騎士団"ってなんですか?」
「はぁ!?てめぇにわかかよ!"聖天騎士団"は最前線の攻略ギルドだろうが!!」
首を傾げる。
いやそんなこと言われてもなぁ・・・
「うーん、それで、例え知ってたとしても何で教えなきゃいけないんですか?」
もしかしてこのゲームのルールだったりするのかな?
「はぁ?そんなもん俺たちが攻略組だからだろうが。てめぇがその情報を独占してたら役に立たねぇだろ?それを俺が使ってやるっつってんだよ」
あー・・・そういう人か。
なるほどねぇ・・・
「別に誰がどうしようと自由じゃないんですか?迷惑をかけてるわけでもないですから」
そう言うと、真っ白な鎧の上から出た顔が赤くなった。
完全にキレてるな・・・
そして冒頭に戻る。
「てめぇはさっさと情報を出せばいいんだよ!当然のことだろうが!!!」
「断らせてもらいます」
はっきりと拒否を示すと、今度は殴りかかってきた。
街中でも普通にダメージは通るのかな・・・?
まぁ、例えダメージが無くても殴られてあげる理由はないなぁ。
「ッ!?はぁ!?」
「・・・うーん、これでトップクラスのギルドのメンバーなの?」
顔を逸らして手首をつかんだら驚いて動きが止まっちゃったんだけど・・・
いや、さすがに隙だらけすぎない?
「まぁ、ここは穏便に行きませんか?街中で暴れるのはやめて下さい」
注意されたことに更に怒ったのか、言葉を聞いて一瞬呆けていたブローXさん?が足払いをかけてくる。
視線を相手の顔に合わせたまま、軽く跳躍し躱す。
突き出されたままの腕をくぐるようにして背後に回る。
軽く相手の首を掴んだまま会話を試みる。
「・・・とりあえず、やめてもらえないでしょうか?」
「ぐっ!!」
驚愕に目を見開く男に、僅かな殺意を向ける。
首を放すと、男はそのまま膝を付きかけ、何とか持ちこたえた。
「てっ、てめぇっ!!!」
「?何に怒ってるんですか?」
「よくもこの俺に・・・!おいっ!お前、俺と戦え!!決闘だ!!」
「・・・はい?」
男が空中に指を奔らせる。
どうやらウィンドウを操作してるのかな・・・?
《プレイヤー『ブローX』から決闘の申請が来ています
・敗北条件:自身のHP全損
・勝利条件:相手のHP全損
受けますか?》
〈Yes. or No.〉
・・・ええー
こんなシステムもあるんだ・・・
まぁ、これで大人しくなるならいいのかな?
さっきから周りの人がかなり見てるんだけど、この場所で始まるの?
まぁ、とりあえずYesっと。
「おっ?」
Yesを選択した途端、広場に移動した。
周りの風景を見るにマルトロスだと思うけど・・・普通に人もいるし。
あれ?周りに・・・透明な壁?
もしかして隔離状態?
よく見たら周囲が半径10mくらい?のガラスのような壁に覆われていた。
目の前にカウントダウンが表示される。
5、4、3、2、1、0――
《決闘開始》
・・・あれ?ブローXさんとやらが動かないんだけど。
「おい、てめぇ・・・」
うん?なんかかなり怒ってるような?
「なんで武器を出さねぇ!!」
「え?別にいらないし・・・」
その言葉を聞いてさらにヒートアップ。
あれ?何か駄目なこと言った?
「てめぇの装備で拳闘士なわけねぇだろうがっ!!」
ブローXさんが剣を振り下ろしてくる。
うん?拳闘士・・・?
「僕は拳闘士じゃなくて聖法士だよ」
普通に跳んでそう言うと、さらに怒気が増したような気がする。
あれ?
「てめぇ・・・ぜってぇぶっ殺す!!」
・・・・・・人間って難しいよね
人の心は宇宙よりも分からないことだらけ・・・
やっぱ若干盛りすぎたかも(´・ω・`)