十四本目 ごめん、もう倒しちゃった
(ギルド"紅鎧"にとって)衝撃の事実発覚・・・
なんてね(・ω・)
竜魔法を使い、黒妖でレッサーナーガを斬る。
それをしばらく繰り返していた。
けど、この後さらにナーガの巣に行ったらショートとの約束に間に合わないな・・・
ちょっと夢中になりすぎたかもしれない・・・
急いでエイフォルトに戻り、教会へ向かう。
そういえば、自分から教会に行くのは初めてだけど・・・
お祈りとかした方がいいのかな・・・?
そんなことを考えている内に、教会に辿り着いた。
中に入ってみると、男性が4人、女性が3人・・・
その内の四人は見覚えがあった。
まぁ、昨日イベントの説明を一緒に受けた"紅鎧"のギルドメンバーだからね。
さて、待ってるのはショートだけだと思ったのだけど・・・
「やぁ、こんなに来てるとは思わなかったよ」
「言ってなかったしな。まぁ、丁度いい機会だったからな。こいつらと引き合わせようと思って」
そう言ってきたのは、今回僕が約束していた、ショートだ。
そっかぁ・・・僕も会って見たかったしちょうどいいか。
「とりあえず、自己紹介からだろ。エスティア・フェンリル・リリーの三人は別にいらねぇよな」
「その言い方は何か違う意味に聞こえるからやめたほうがいいよ」
「そうね、その言い方はひっぱたきたくなるわ」
「そうだね、ギルマスはもうちょっと言葉のお勉強してきた方がいいよ!」
「ギルマス、とりあえず小学生からやり直せばいいんじゃねぇか?」
「そこまで!?っていうかフェンリルにそこまで言われるとは・・・」
うーん・・・前の時も思ったけど、これが普通みたいだね。
いやぁ、仲が良さそうで何より。
「さて、とりあえずショートはおいといて、自己紹介させてもらうよ。僕はリューセイ。ショートの友達って設定になってるから、よろしくね」
「設定って言っちゃったよ!!違うだろ!お前はそんな俺をいじるタイプじゃないだろ!?こいつらにあわせなくていいからな!?」
うん、ショートが何か言ってるけどおいておこう。
「出来ればそっちの三人も自己紹介をお願いできるかな?」
「じゃ、まず俺からやらせてもらう。俺はブライアンだ。こいつらには変態とか呼ばれているが、決して変態じゃぁない。ただ、ちょっと人より若い女の子が好きなだけだ」
自分のことをそんな風に評したのは、見た目の整った茶髪の男。
そうかぁ・・・ロリコンかぁ・・・
「そうなの?よろしくね」
「あれ反応それだけ?・・・まぁ変態とか言わないだけマシか・・・」
まぁ、僕自身は特にロリコンに対して思うことはない。
イケメンなのになぁ・・・、と思うくらい。
「それじゃあ、次は俺だな。俺は雷蔵。あんたも刀使ってるみたいだな。インベントリにしまわずに腰に差すのは良い。似合ってるぞ」
刀を気に入っている様子の男は、侍のような格好で黒髪だった。
髪の色を最初に変えれるこのゲームでは、結構珍しい気がするなぁ。
「そう?ありがとう。あんたも、ってことは・・・」
「おう。俺も使ってる。JOBは侍だ。よろしくな」
「あれ?侍?」
そんなJOBあったっけ?
「あ、もしかしてあんた知らねぇのか?ショートも教えてないのか・・・JOBはな、Lv50に到達すると進化するんだよ」
「へぇ・・・知らなかったよ」
JOBが進化・・・言われてみれば、Lvが上がるのにJOBはずっとそのまま、というのも少し不自然かもしれない。元々のJOBの種類もかなり偏っていた気がするし。
「で、俺は剣士から侍になったわけだ。それまでの使用武器や戦闘スタイルみたいな、経験によってJOBの進化先は変化する。あんたがギルマスの言うような奴なら、もしかするとユニークJOBに進化するかもな」
「ユニークJOB・・・?」
「おっと、すまんな。当然それも知らないよな。ユニークJOBってのは、特殊なアイテムを使ったり、特殊な経験をしてきた奴が着けるJOBだ。全く同じ経験をするような奴はいないから、ユニークJOBはほとんどそいつだけの固有JOBと言ってもいいものだ。かなり珍しくて・・・そのJOBに着ければ大体が普通は手に入らないスキルを入手できる」
「へぇ・・・それは着けたらいいなぁ。精一杯変わった経験を積んでおこうかな?」
「まぁ、頑張れ」
うーん、普通にいい人そう。そういえば、敬語を使うのを忘れてたな・・・
雷蔵さんは見た目が30代に見えた。
今度からはちゃんと敬語の方がいいかもしれない・・特に気にした様子はなかったけど。
「次は私だな。私はイレーナだ。よろしく頼む」
「・・・イレーナ?」
僕がそう呟いてしまったのは、何も変な名前だと思ったからじゃない。
僕が疑問に思ったのは、彼女の頭の上に浮かぶ文字をみたからだ。
そこに浮かぶ文字は、間違いなく「イレーア」だった。
「・・・言わないでくれ。キャラクターメイキングの時に名前の入力を間違えてしまったんだ・・・」
僕は少し目を見開く。
イレーナさんはなんというか、しっかり者の「頼りになるお姉さん」という感じだ。
男っぽい口調で、かっこいい美人、という感じの彼女が名前の入力ミスとは・・・
「ふっ、はははっ」
「わっ、笑うなっ!私だって気にしてるんだ!」
「あはは、すいません。意外とかわいいところもあるんだなと思いまして・・・」
「かっ、かわいいって・・・というか、君はさっきまで敬語なんて使ってなかったじゃないか。私にも他のメンバーと同じように接してくれ」
「分かりました。・・・いや、分かったよ。さっきまで敬語を使ってなかったなーと思ってさ。改めようと思ったんだけど・・・そう言われたらしょうがないね。改めてよろしく。イレーアさん?」
「こ、このっ!そんな風に呼ぶなっ!!」
「いやぁ・・・ごめんごめん。イレーナさんは面白いね」
「面白いって・・・よろしく、リューセイ」
「うん、よろしくね」
いやー、イレーナさんは中々面白いなぁ。
かっこいい大人な様に思う見た目と違って、中身は中々かわいらしい人みたいだ。
「おーい、ショート?自己紹介が終わったからそろそろ本題に移ってくれないかな?」
「っと、そうか。分かったぜ!」
未だにフェンリルさん達にいじられていたショートに呼びかける。
ギルドマスターに威厳とかないんだね・・・
いや、もしかしてショートだけ?
「まぁ、あんまり時間かけられねぇからな。簡単に言うと、お前には第三の街マルトロスに来てほしい」
マルトロス・・・
第三の街、か。すぐに行くつもりではあったけど・・・
「一つ聞いていいかな」
「うん?どした?」
「ショート達はどうやって街と街を移動してるのか聞いていい?」
「ああ、そのことから説明しというた方がいいか。まず、俺たちが使ってるのは転移ゲートって呼ばれてるものだ。別に珍しいもんじゃないし、攻略サイトとかに載ってるとは思うけど・・・お前は見てないよな」
「うん。全く見てないね」
「だよなぁ・・・転移ゲートってのは、教会の中だけで使える機能のことだ。実際に門があるわけじゃない」
「なるほどね・・・確かにそれらしいものは見たことないね。でも、どうやって使うの?」
「使い方は簡単だ。ステータスウィンドウを開いてみろ。そしたら、ゲートのアイコンがある」
「――あ、ほんとだね」
ステータスウィンドウを開くと、確かに端の方に門のアイコンがある。
「それを選ぶと、今までお前が行ったことのある街が出てくる」
「・・・そういうことか」
「おう。お前がマルトロスに一度でも入れば、マルトロスに転移できるようになる。ただし、転移先はその街の教会だ」
「へぇ・・・便利だねー」
「結構一般的な機能なんだが・・・まぁ言わないでおこう。このゲームはチュートリアルもないし、たまに知らないやつもいるからな」
・・・そういえば、チュートリアルってなかったね。
自分で探せ、ってことかな?
僕はそっちの方が好きだからいっか。
「で、問題はどうやってマルトロスに行くかなんだが・・・エイフォルトの先のエリアボスのことは知ってるか?」
「ナーガでしょ?」
「おお、知ってたか」
一回倒してるからね。
「そのナーガが問題でな・・・端的に言えば、強いんだ。ルミリエイスのクリムゾンボアとは比べ物にならん。あれも一応レイドボス扱いだけどな。ナーガはそれ以上だからな・・・俺たちの時はアイテムとか装備とかにかなりの資金を使って、精鋭のギルドで連携して討伐した。まぁぶっちゃけ一回全滅したがな。その後も二回、討伐されたんだが・・・それでもマルトロスに来てるプレイヤーは少ない。未だに150人にも届いてねぇ。まぁ、俺たちの知らないところで討伐されてなきゃ分かんねぇが・・・おい?何で目をそらす?」
「・・・何でもないよ」
大丈夫かなコレ・・・
まぁ、問題ない。うん。
「何でもないわけねぇだろ。めちゃくちゃ気になるだろうが・・・まぁいい。要するに、今日、俺たちと一緒に討伐に行こうぜってことだ。さっき言ったギルドで連携して討伐ってのは、俺たちがまだLvが低かった時の話だからな。お前のLvはその時の俺たちより低いが・・・まぁ、何とかなるだろ」
「ねぇギルマスー、いくらなんでも無茶じゃないの?リューセイは聖法士なんでしょ?一回攻撃受けただけで死んじゃうよ?」
「こいつなら問題ねぇよ・・・イベントの説明で転移させられた時の事忘れたか?」
「・・・あぁ、うん、そだね」
「まぁ、足手まといにはならないように頑張るよ。・・・そもそも一人で倒せるし」
「おいちょっと待て。なんか変な言葉が聞こえたんだが?」
「・・・なんのことだろうね」
「誤魔化せるかよ・・・お前、今一人で倒せるって言ってたが・・・あんまりナーガを舐めない方がいいぞ?運営が言ってたんだから、クリムゾンボアを一人で倒したのは事実なんだろうが・・・さすがにナーガはお前のLvじゃキツい」
「うーん・・・えっとね、ショート。聞いてほしいんだけどいいかな?」
「・・・どうしたよ」
若干の覚悟を決め、口を開く。
「ごめん、もう倒しちゃった」
「「「「「・・・・・・」」」」」
うん、皆口開けて固まっちゃったよ。
あの時はそんなモンスターだとは思ってなかったんだよ。
ごめん。
「・・・お前・・・マジか?」
「うん」
「いやでもさすがにあり得な・・・いやちょっと待てよ。お前、よく考えたらその装備って・・・」
「ナーガの素材で作ったやつだね」
「「「「「・・・・・・」」」」」
全員硬直再び。
7人全員がちょっと・・・うん、間抜けな顔になってるね。
「・・・お前なんか失礼なこと考えてたろ」
「いや全然?」
「・・・それはおいておくか。ナーガの素材で作ったってのは・・・マジか?」
「うん。刀には魔石も使ってるから証拠になるかな?」
「魔石ドロップしたの!?」
リリーが突然頓狂な声を挙げて顔を近づけてきた。
他の六人もそれぞれ唖然とした表情をしている。
あれ?魔石って必ずドロップするわけじゃないのかな?
ナーガクラスなら必ず落とすものかと思ったんだけど。
「あっ、ごめん・・・」
「別にいいよ。それより、ナーガは必ず魔石を落とすってわけじゃないの?」
「あ、ああ・・・そもそも魔石は確率でドロップするはずだ。ただ、例外もあるかも、と言われてはいるが・・・」
そう言ってきたのは雷蔵さんだった。
そうだ、ここは敬語でいこう。
「そうなんですか?」
「別に敬語じゃなくていいぞ。年齢なんか気にすんな」
「うん、分かったよ」
普通に必要なかった。
「ところで、例外っていうのは?」
「そもそも、ドロップする条件を運営は明かしていないから、結局はプレイヤーの推測なんだけどな。ナーガの魔石は三度の討伐で一度も確認されていないらしい。だから何か条件があるんじゃないか、と言われてるんだが・・・まぁ単に運が悪い可能性もある。けど、お前がソロ討伐してドロップしたってことは・・・」
「うん?」
「モンスターをソロで討伐した時は、入手できる報酬にボーナスがある。それは運営からの情報だから確かだ。ただ、実際はパーティより手に入りやすい気がする、という程度のものだから分かりにくいけどな。だが、エリアボスとなると・・・要は、ソロ討伐の報酬が魔石かもしれないってことだ」
「なるほど」
「もしそうだとしたら、一体どんなLvと装備で挑めばいいのよ・・・」
「だなぁ。正直手に入る気がしねぇよ」
「普通に運ならいいんだけどねー」
議論が始まった・・・
うん、ところでさ。
「皆は、ナーガを倒すために集まってくれたってことだよね?」
「「「「「あ」」」」」
どうやら気づいたみたいだ。
僕が単独でナーガを討伐できるなら、ここにいる全員で挑む必要がないことに・・・
ショート「ふ、ふざけてやがる・・・」
ブライアソ「俺たちがここに来た意味なくない?」
SHORT「言うんじゃあない!」
(*`Д´)=Э)TДT●)←ヘンタイ
HENTAI「何で俺叩かれたの!?」
SHOUT「変態だからじゃね?」
ロリコン「理不尽!!」