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085話 戦いの始まり


 ツンデレラ城の門を抜け、俺は薫を追いかける。

シャドーに渡された革ベルトを腰に巻き、左右に刺さっているトンファーを左右の手で握る。

いつもより力が入る……。緊張しているのか?


 しばらく走ると、中庭のような明るい庭園に出た。

外はうす暗くなっているが、ここはライトアップされ、昼間のように明るい。

遠くに螺旋階段が見える。


「薫!」


 階段を上がっていく二人の姿が見えた。


「どうして来るのよ! 私はだいじょう――」


 大声で俺に叫んできた薫は、貴族女に口をふさがれ、その声をかき消された。

思った以上に階段をかけ上げっていく二人は早い。

俺は二人を見ながら、見失わないように走り続けた。


 庭園を抜け、螺旋階段を駆け上がり、フロアを移動する。

一階は庭園、二階はパーティールームのようだ。

大きな鏡や中世を思わせる装飾品、甲冑まで飾ってある。


 二人は確かにここに入っていたはず。

ゆっくりと奥にある扉に向かって歩き始める。



――カシャン

――カシャン


 何のだ?

さっきまで聞こえなかった何か、金属のすれるような音が耳に入って来る。

嫌な予感がし、俺は急いで距離を取り、音の鳴る方へ目線を向ける。



 甲冑が動いている。

そして、その手にはロングソードが握られており、あからさまに俺を狙っている。


 いつもなら腰が引けてしまうが、今日はそうならない。

俺には向かうべきところがあるからだ。ここで時間を食う訳にはいかない。


「おい。俺に何か用事でもあるのか?」


 無言で俺に近寄ってくる甲冑。

そして、剣を頭上高く掲げ、そのままの状態で俺に向かって走り寄ってきた。


「無言は敵とみなすぞ?」


 勢いよく振り下ろされた剣は床に突き刺さっている。

おいおい、これ本気だよ。

そんなに早くないから避けられたけど、そのまま当たったら絶対に病院送りだよ。


 そんな事を考えながら、俺は左右に握ったトンファーを力いっぱい甲冑の頭部をめがけ、打撃を加える。

左右交互に打撃を与える。甲冑の兜も同じように左右に揺れる。

しばらくすると、甲冑は膝をつき、そのまま倒れ込んでしまった。


 よし、これでしばらくは足止めできるだろう。

再び二人を追いかけるため、扉をくぐりぬける。





――早く、もっと早く!


 俺は息が切れながらも、最上階に続く階段をかけ上げっていく。

懐には薫の落していったシューズ。

左右の手にはトンファー。少し動きずらいが、甲冑の件もあり手放すことができない。

早く、早く行かなければ……。


 最上階に着き、俺は大扉を両手で空ける。

目に映ったのはまるでファンタジーの世界。


 王宮の王様と謁見するような部屋だ。

装飾品も立派で、ついつい目が行ってしまう。


 そして、奥には一つのベッドがあり、誰かが寝ている。

薄い白のレースがベッドを覆っており、ここからではどうなっているのか判別が難しい。


「薫!」


 俺は一人大声で叫び、ベッドに近づいていく。

一歩、二歩、三歩……。


 不意に視線を感じ、とっさに一歩下がった。

すると、目の前を何かが横切って行った。


「ほぅ。これを避けるとは、なかなかやるね」


 右手にあった大きな柱の陰から貴族女が出てきて、ゆっくりと歩きながら俺の目の前に現れた。

その手にはボウガンのようなものを握っており、俺の目の前を通り過ぎた何かを発射したようにも感じる。


「薫はどこだ!」


「やつか? ほら、お前の目の前にいるだろ?」


 貴族女の指さす方向にはベッドが。

やっぱりベッドに寝ていたのは薫だったのか!


 俺は貴族女を無視し、ベッドをめがけ走り始めた。



――グホゥッ


 俺の横腹に痛みが走る。


「私を無視しないでほしいなぁ」


 とろんとした目、頬を紅潮させ半笑いで俺に声をかけてきた貴族女。

背中に悪寒が走る。嫌な感じだ。でも、この感じ、以前にも感じた気がする。

どちらによ、これは危険信号だ。


 俺は貴族女から目を離さず距離を取る。


「なぜこんなことを?」


「何故って? 笑わせないでほしい。ここは夢と希望の国さ。私の夢を叶えても好いだろ?」


「夢って……」



 しばらく沈黙の後、貴族女が高笑いしながら話し始める。


「男! デート! イチャイチャしながら、手を握って! そして! 私の目の前で倒れ込むのさぁぁ!」


 笑いながら俺に向かって来る貴族女。危険だ。

本意ではないが、一戦交わるしかないのか。

左右に握ったトンファーを握り直し、俺も貴族女に向かって走り始めた。


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