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067話 攻防戦


 俺の目の前では三人の攻防が繰り広げられている。


「一生に一度しかないこのタイミングを奪ったマリアさんには申し訳ないけど、それ相応のお礼をしますね」


 薫の背中から赤いオーラのようなものが出ており、牙をむいた赤い虎が見える。


「マリア。兄さんとの愛の育みを奪ったあなたには制裁を下します」


 由紀の背中からは黒いオーラと共に真っ赤な目をした黒竜が浮かび上がる。



 や、やばい。死人が出る……。

これは俺の本能が悟っている。と、止めなければ。



「わ、私だって! 私だって欲しいんです! ずっと、ずっと待っていたんですよぉぉ!!」


「さ、三人共もちつけ! こ、この場は抑えるんだ!」


 三人が俺の方を向く。


「純一、黙ってて。ベッドの上で大人しく座っていればいいのよ。すぐに終わるわ」


「そうですよ。兄さん。何も怖くありません。ちょっと、マリアとお話をするだけですから……」


 ふ、二人とも完全に目が座っている。俺はこのまま見守るしかないのか!


「純一様! 私が二人に勝ったら、私にもくれますよね! 約束ですよ!」


 マリアは約束もしない事を勝手に話し始じめる。

そして、マリアからも茶色のオーラが出始め、その背中からは亀が見える。


 か、亀? 茶色い亀は陸ガメ?

正直、赤虎や黒竜と比べると迫力に欠けるというか、弱そうと言うか……。


「マ、マリア! 俺はそんな約束しないぞ! いいから三人とも落ち着けって!」


 俺は一人ベッドの上でワタワタしている。


「純一。約束してもいいわよ? 私達にマリアさんは勝てないわ」


「そうですよ、兄さん。マリアの遠吠えなど放っておいでも何も問題ありませんよ?」


 二人とも目が座った状態で俺に話しかける。完全に臨戦態勢だ。

マリアも時同じく、拳を胸の前に構えファイティングポーズをとっている。

そして、人差し指で二人に向かい、ちょいちょいと指招きしている。


 あぁ、終わったな。ここまで来たら止められない。

俺は腹をくくり、三人を見守る事にする。まぁ、女の子同士のけんかなど、早々激しくはならないだろう。

疲れてきたら、そのうちやめるよね?


 初めに動いたのは薫。

瞬間的にマリアの目の前まで移動し、右フックをマリアの(あご)をめがけて炸裂させる。


 おぉぅ、早い! 俺だったらもろにくらうすさまじい速さのフックが繰り出される。

しかし、マリアは左手で払いのけ、勢い余った薫は体制を崩し、よろける。


「薫さん? パワーもあり、早さもそこそこですが、まだまだ甘いですね」


 体勢を崩した薫のボディにマリアのカウンターが入る!


 と、思ったら由紀のフォローがすかさず入った。

由紀は手刀でマリアの首をねらい、マリアの間合いに入る。


 間一髪、マリアは半歩後ろに下がり、由紀の手刀をかいくぐった。


「っち! マリア、避けなくてもいいのよ? 早くダウンしなさい」


 互いに少し距離を取り、睨み合っている。




「薫さんも由紀様も経験が少ないですね? もう少し精進した方が、純一様を守れると思いますが? この私のように!」



 マリアは二人の間合いに瞬時に入り、左右の拳で二人のボディに一発ずつ入れる。

二人とも反射的に避けようとしたが、マリアの方がほんの少し早さがあった。

致命傷とは言えないが、軽くダメージを受けてしまったようだ。


「二対一でこのありさま。二人とも、純一様には不釣り合いですね? そのリング、私がもらいます!」


「そんな事はさせない!」


由紀は身にまとった黒竜をマリアに向け放つ!


「奥義! 黒竜拳!」






 ……。俺は何を見ている? アニメか? ラノベか? VRか?

リアルに黒い竜がマリアめがけて放たれるのが見えてしまう。

これは、きっと俺の心が見せている幻影だな。うん、そうだね、きっと。



「はぁぁぁ!!」


 マリアは片手を顔の前にかざし、黒竜の鼻っ面を掴む。


「だから、甘いんですよ!」


 そして、黒竜を握り潰したと思ったら黒竜が爆散した。


「そ、そんな……」


「由紀ちゃん。手加減しなくてもいいのよね? 本気で行くわよ」


 赤虎のオーラを身にまとった薫が、そのオーラを体に吸い込んでいく。

オーラが一度見えなくなった次の瞬間、薫の頭にトラの耳が生える。

そして、両手には虎の模様をした手袋が装着されている。


「マリアさん、覚悟!」


 薫の両手にはそれぞれ三本のクローが付いている。

と言うか、その虎耳可愛いね。どっから出てきたの? これも幻覚ですか?


 さっきよりも早い動きで薫はマリアの間合いに入り、左右の拳がマリアに襲い掛かる。

マリアも躱すことができないようで、両手で薫の拳を受け止めている。


「好いですね、薫さん。さっきより、全然動けていますよ? でも、足元が留守ですね!」


 マリアは瞬時に薫に足払いをする。

体勢を再度崩した薫。しりもちをついており、動きが一瞬止まる。


「先におやすみなさい。後で起こしてあげますね」


 マリアの拳が、薫に放たれる。


「マリア!」


 黒竜のオーラをまとった由紀が大きな声で叫ぶ。


「由紀様? その技はさっきの通り、私には通用しませんよ?」


「これでもかしら!」


 由紀は手の先からさっきと同じように黒竜を放つ。


 自分自身に。



「この技は、放たれた黒竜のオーラを自分に取り込み、術師のオーラを爆発的に高めるのよ! そして、先に寝るのはあなたよ!」


 は? 術師? もぅ、なにがなんだかわけ分からん。

つか、どっかで見たことのあるシュツですね。あ、某大会で出たあの技のコピーですかね?

しかし、これは何かのデモンストレーションか? それとも、三人で俺を楽しませる余興か?


「っち! なかなか手の込んだことを。でも、さっきより動けてますね? この先が楽しみですよ! でも、ぬるいですね!」


 由紀と攻防しているマリアは、由紀の攻撃を全て交わしている。

この速さの攻撃をなんで避けれるんですか? マリアさん、すごいですね。



「な、何で当たらないの!」


「それは簡単な答えですよ? 動きが単純すぎます。もっと修業してくださいね」


 笑顔で微笑むマリア。そして、マリアの手刀は由紀の首後ろにあっさりとはいる。


「うぐぅ……」


「あら、たったの一撃で終わりですか? なぁにぃ!!」


「マリアさんも修業が足りませんね?」


 マリアの背後に薫が立っている。そして、羽交い絞めにし、マリアの動きを止める。


「早さはそこまで無いかもしれませんが、このホールドには自信がありますよ!」


 なかなか薫のホールドから抜け出せないマリア。


「は、はなせ! 私がもらうんだぁ!」


「由紀ちゃん! 今のうちに! 私ごと葬って!!」


「いいのですか? 私にはその方が都合がいいですけど」


「私は大丈夫。そばに純一がいてくれれば、それで十分……」


「は、はなせぇぇぇ」


「では、遠慮なく! いかせてもらいますね!! おやすみ二人とも……」




 おぃおぃ、そろそろいいんじゃないか? 迫真の演技も十分伝わったし。

何か本気でやり合っているように見えてくるぞ。



「いきます!」


 由紀の右手に今までにないくらいの黒いオーラが集まる。

手刀の形をした右手は殺傷能力が高そうだ。


 マリアと薫に向かって走り出した由紀。

俺には止めることができないのか……。



 うっすらと涙が出てきた。


 さよなら、俺の青春。


 さよなら、俺の告白とその答え。


 いつか、また、きっと……。











――ガチャ



 由紀の攻撃がマリアに触れる数秒前に、前触れなく部屋の扉が開く。

そこにはレイが無表情で立っていた……。


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