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057話 胸の苦しみ


 スマートフォンのアプリを起動し、部屋の様子をうかがいながら、パソコンの電源を入れる。

今、兄さんの部屋ではきっと予想通りの事が起きているはず。


 私が入れたコーヒーをたっぷりと飲んだ薫さん。

さて、どこまで頑張れるかしら……。


 机にスマートフォンを置き観察を始める。

残念ながら音声までは拾えない。今後、改良しなければ。


 パソコンが起動し、作成中のプログラムの続きをする。

そこまでパソコンに詳しくなかったが、ここ数年で比較的スキルは身に着いたと思う。


 これも兄さんの為。兄さんが快適な生活を送るために必要な事。

きっと兄さんは喜んでくれるはず。


 でも、一つ気になる事は、私が薫さんと仲良くしなかればならない事。

恐らくこの先、兄さんは薫さん以外の女性とも仲良くなるはず、その時もきっと同じことを言うだろう。


『仲良くしてほしい』と。


 兄さんの願いであれば私はその通りにする。

兄さんの事を慕っている女性は、兄さんと付き合うことになる。

きっと将来、その方と婚約し結婚するだろう。皆家族になるだろう。



 私は兄さんを幸せにしなければならない。

兄さんの幸せが最優先。その中でも、私はやらなければならない事がある。


 虫の選別をしなければならない。

兄さんに言い寄って来る害虫は駆除しなければ……。


 兄さんが気づく事無く、兄さんが幸せになるように、私が努力しなければならない。

なんと兄想いの妹なんでしょう。自分でも素晴らしいと思う。

害虫は自らフェーフドアウトしてもらいましょう。その方が兄さんも私も幸せになれます。


 パソコンの画面を見ながらキーを叩く。

あと少しで完成する。兄さんの為に作っているソフト。



 ワタシダケ ガ ニイサン ノ リカイシャ



 ふと、スマートフォンの画面に目を向ける。

そろそろかな? 薫さんが兄さんに覆いかぶさっている。


 きっと兄さんはこの状況から逃げる事を選択するはず。

そして、薫さんは嫌がる兄さんを無理やり……。


 フフフ。薫さんも何の疑いもなく私のおいしく入れたコーヒーを飲むなんて。

間抜けすぎて、大声で笑いたい位です。


 兄さんが『助けてー』と叫んだ時、私はナイトとして兄さんを助けに行きます。

そして、ナイトは悪獣を懲らしめ、姫と幸せになります。


 まだ、もう少しでその時がきます。兄さん、今は我慢してくださいね。

きっと私が助けに行きますよ。



 フタリ ノ シアワセ ノ タメニ









――ギシッ


 ベッドのきしむ音がする。

少し熱っぽくなった薫をお姫様抱っこし、ベッドに寝せる。

妙に色っぽく、瞳が潤んでいる薫はその体をベッドに寝せ、俺を見ている。


「純一。ごめんね……」


「そんな事はないさ。床よりベッドの方が落ち着くだろ?」


 薫をベッドに寝せ、その横に俺は腰を下ろす。

 

 さっきの様子といい、薫はぐったりしている。

熱でもあるかと思い、手のひらを薫のおでこにあてる。



「ひぃぁぁぅ!」


 急に薫が叫ぶ。ただ、おでこに触っただけなのに。


「か、薫。そんな急に大声出すなよ。びっくりするじゃないか」


 薫は俺の手を両手で握り、そのまま自分の首へと移動させる。

首を触ると少し熱っぽい。髪が手にかかり、手の甲が少しくすぐったい。

女の子の首は思ってた以上に細いし、柔らかい。そして、髪もさらっとしている。

俺のボサっとした髪とは大違いだな。


 薫は俺の方を見ながら、話しかけてくる。

その潤んだ瞳は非常に戦闘能力が高い。




「お願い、胸が苦しいの。さすって……」




 ……。





 …………。





 ………………。




「すまん。うまく聞き取れなかった。もう一度言ってもらっていいか?」


 俺は耳が悪くなったようだ。薫に胸を揉めと言われた気がした。

確かに苦しいかもしれないが、恋人でもない俺がうら若き乙女の胸をモミモミしていいわけがない。


 だがしかし! だがしかしだ! 据え膳ほにゃらら と名言があるように、腹が減ったらご飯を食べる。それと同じことだ。


 だがしかしだ! ここでちょっとエッチな男だと薫に烙印を押されたくはない。

あくまで紳士的に対応し、懐の大きさを見せなければならない。


 なぜかって?


 俺は男でもあるが、紳士でもありたい。


 この世界に大和魂を復活させる。余の為人の為、何より自分の為に。

女性を大切に思う気持ち。家族を大切に思う気持ち。今の世の中から消えてしまった人を思いやる心。


 俺が脳内処理をしていると、薫が握っていた俺の手は薫のお腹の上に移動している。

いつの間に。と言うか、薫ってこんなに細かったのか? 思っていた以上に細い。



「純一……。お願い、胸をさすって……。熱くて、苦しいの……。お、お願い、早く……」



 イエッサー! 二等兵は素直に上官の指示に従うであります、

上官のご命令とあれば、致し方なし。これも人助け。

余の為、人の為、薫の為。


 幸い、薫は俺の事を慕っているようだし、俺も薫の事は良いと思う。

良いって、あれだ、あれだよ。お付き合いしてもいいかなぁーとか。

初めての彼女って、どう接していいかわからないじゃん。

でも、薫だったら付き合いやすいかなーとか。




「薫……。い、いいのか?」



 無言でうなずく薫。

薫は目を閉じ、肩から力を抜く。覚悟を決めたようだ。

薫は俺の手を離し、シャツのボタンを上から一つ、また一つと外していく。


 俺も覚悟を決めなければならないな……。





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