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054話 薫の姿は


 俺はとっさに目を閉じる。

薫がどんな状態なのか想像してしまうと、見てはいけないと思ったからだ。


「俺は見てないぞ! 何も見てないからなっ!」


 そう叫ぶと同時に薫が俺の両肩を掴み、揺さぶってくる。


「何でよ! 見なさいよ! ほら、目を開けなさい!! 恥かかせる気なの!」


 叫ぶ薫。必死に目を閉じる俺は、抵抗しようにも見えないのでどう抵抗していいかわからない。

薫に両肩を鷲掴みされながら、どんどん後退している。

激しく揺さぶられ、頭もガックンガックンする。


 おおぅ、あ、頭が揺れる……。少し気持ち悪いかも。


 後退しながら、俺は何かにぶつかり、そこに座り込む。

この感触はベッドだ。俺はそのままベッドに押し倒され、薫にマウントポジションを取られる。

両腕を押さえられ、身動きが取れない。


「どうして見ないの。どうして純一は私を見てくれないの……」


 さっきよりも声のトーンが低い。泣いているのか?


「いや、だって、見ちゃまずいだろ。良く考えてみろ、俺達は交際してないし、そんな関係じゃないだろ?」


「だったらどうして! 私は純一に見てほしいの。お願い、少しでいいから見てよ……」


 俺は薫に言われ、ほんの少しだけ目を開ける。

薄目にして薫の顔を見る。すごく悲しそうな表情だ。

もし、スポポポーンだったら、それはそれでオーケーですよね。

見てほしいって、本人が言うのであれば、問題なしですよね?




――ドクン




 心臓の音が聞こえる気がした。

心拍数が上がる。ここまでドキドキしてしまうと、薫に気付かれるのではないかと心配してしまうくらいドキドキしている自分がいる。





  俺はゆっくりと目線を下に、薫の胸元を見る。







 あれ? 制服? 見たことが無い制服を着ている。

そのまま目線をさらに下にすると、プリーツになったスカート。

そして、さらに目線を下げると薫の太ももが目に入ってくる。

なんだ、スポポポーン ではないのか。


 安心したような、残念なような……。



「新しい制服か?」


 俺はちょっと低いトーンで薫に話しかける。


「そうよ。今日もらってきたでしょ。初めは純一に見てほしかったんだよね。親に見せる前に」


 そうですかー。ですよねー。

分かってましたよ。もちろん、制服だって知っていましたよ。


 俺は拳を強く握りしめながら、起き上がる。

俺の目の前に薫の顔が。ち、近いな……。


「なかなか似合っているじゃないか」


 薫はちょっと恥ずかしそうに、微笑んでいる。


「そ、そう。ぁりがと……」


 気を良くしたのか、薫は立ち上がりベッドから降りる。

そして、ちょっと離れたところで、くるりとまわり、スカートの裾を両手で軽く持ち上げ、俺に会釈する。


「一緒の高校だね。まだこの制服に馴れないけど、純一と一緒の学校で私は良かったよ」


 なんだ。随分素直で可愛らしい話し方だな。制服効果なのか?


「そうだな。一緒の学校だと俺もいろいろと助かるよ」


 俺もベッドから降り、薫の隣に立つ。


「薫。俺と一緒に、ずっと一緒にいたいと思うか?」


 少し真面目な顔で薫に聞いてみる。

現状、高校に入るまでに何人かと交際している方が良いと判断していた。


 交際している女性が一人もない場合、俺が高校で危険な目に合う可能性が高い。

一人、出来れば二、三人と交際していた方が安全だと思う。


 しかし、俺のそばにいる女性で、信用できる人間が少ない。

その中でも薫は信用できると思うし、きっと俺の味方になってくれるはず。


 妥協ではない。俺には薫が必要だ。


「……どういう意味? 今までそんな事聞いてきたこともないし、今さらって感じなんだけど?」


 少し怒り気味な口調で俺に返答してくる薫。

何故なのか? 俺には昔の事は分からない。でも、薫と昔の純一と何かあったのだろう。 


「そのままの意味だ。俺には薫が必要だ。将来を考えた上で、こ、こう、こうさー、こ、こ、こうーさーー」


 い、言えない! どもる! は、恥ずかしい!

いや、ここまできたら言えるだろ! 言え! 言うんだ!

俺は男だ! 今まで何人に告白してきたんだ! 連敗だけど。

今回は今までとはちがうぜ! 高確率で勝てる! 勝てる勝負なのに、言えない!


「純一? どうしたの? 黄砂が何かあるの?」


 ……。違います! 黄砂ではないです! 交際です!

が、頑張れ俺! 絶好のチャンスじゃないか!!



「薫!」


「は、はい!」


 俺と薫は互いに見つめ合い、時が止まる。




「薫。俺と真剣にこうさ――」





―― コンコン



『兄さん! ただ今戻りました! 妹の由紀が帰ってきましたよー!』



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