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013話 俺に妹が!


 再び走り出す車。周りを見ると住宅街になっていた。

一軒家が立ち並び、道路もきれいに舗装され、街路樹と街灯もきれいに並んでいる。


 

 フロントガラスを見ると、綺麗な住宅街の中にひときわ目立つやや豪華な一軒家が目に入る。

綺麗な庭に大きな門。こんな家に住む奴はきっとろくでもない!


 俺は一人暮らしで築三十年のワンケーアパートに三年もいたんだぞ!

実家だって普通の一軒家だ! こんな豪邸! どんな奴が住んでるんだ! ぷんぷん。


 車がその家の前に止まり、レイさんがリモコンを取り出す。

『ピッ』っと音が鳴り、門が開く。


「純一さん、着きましたよ」


 え? 俺の知っている実家じゃないぞ?

この家が、俺の家なのか? まじですかー。

さっきまでこの家に対して突っ込みを入れている。

俺はどうやらろくでもない人らしい……。


 家を見ながらボーっとしていると、母さんが声をかけてきた。


「純一さん? もしかして家の記憶もないのかしら?」


「は、はい。まったく……」


「そう……」


 母さんは少し悲しそうな顔で俺を見つめてくる。

そして、そっと抱き着き俺に話しかけてくる。


「きっと、家で一緒に生活をすれば記憶も戻るわ。一緒に、頑張りましょう」


「純一様。私も一緒に頑張りますよ!」


 母さんもレイさんも優しい。さっきまでの母さんとは大違いだ。

今回は抱き着かれても、はぁはぁもふんふんもクンカクンカもない。

親として、愛情を感じる抱きしめられ方だ。


「母さん、レイさん……。ありがとう、僕も頑張りますね」


 車は車庫に入っていき、三人で玄関に向かう。

荷物はレイさんが持ち、俺と母さんは手ぶらだ。


 玄関の扉を開け、中に入る。




「おかえりなさい、お母さん」


「あら、由紀。いたのね。出かけていると思ったわ」



 目の前に背が小さい女の子がいる。

やや青味がかかったショートカットの髪。

目はくりっと大きく、パッチリしている。

中学生位だろうか? 白のワンピースが良く似合っている。

はっきり言って、すごくかわいいです。はい。


 おしとやかそうで、清楚な感じがする。

この子は誰だろう?


「母さん? この子は?」


「え? 兄さん、私がわからないの?」


「へ? 兄さん? 俺が?」




 しばらく沈黙の時間が流れる……。





「由紀。良く聞いてね。純一さんは記憶が無いらしいの。記憶喪失と判断されたわ……」


「そう、なの? 兄さん、本当に私がわからないの?」


 半泣きになりながら俺にすり寄ってくる女の子。

すまん、マジわからんです。そもそも俺は一人っ子!

兄も弟も姉も妹もいない! 俺はいつから兄になったんだ?


「ごめんな。本当にわからないんだ……」


 涙を流す少女。俺は女の子を生れて初めて泣かせてしまった。


「兄さんのバカ―!」


 少女は泣きながら階段をかけ上がって行った。


「ご、ごめんな!」


 とりあえず謝っておこう。

後で、あの子の部屋に行って、きちんと話せばきっとわかってくれる!

と、思う……。


「さ、純一さん、とりあえずリビングに」


「私は荷物を整理したら伺いますね」


 レイさんは荷物を持ち、キッチンへ。

俺は母さんと一緒にリビングに移動する。


 おぉ、この家広いな! ホールもでかいし、リビングもキッチンもきれいで大きい!

天井にはプロペラが回っているし、テレビもでっかい。

一体どうやったらこんな家に住めるんだろうか?

いや、実際に住んでいるようだが、俺にはまったくわからない。

この家の収支もわからんしな……。


「コーヒーでいいかしら?」


「はい、何でも大丈夫ですよ」


「じゃぁ、今から淹れるのでこれで顔を洗って」


 母さんは化粧落とし、タオルなど一式俺に渡す。

やっと化粧が取れる。あ、洗面所はどこだ?


「ありがとう、洗面所はどこに?」


「そう、そうだったわね。洗面所は向こうよ」


 指さす方に俺は歩いて行く。

初めての家、初めての母さん。そして、初めての妹。

俺はこの先どう生活をしていくのだろうか……。





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