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ピース  作者: 頭部 冬吾
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プロローグ

 民衆が広場に集まり、目の前の首切り台に好奇の視線を送っていた。ある人は、これから起こることが、どんな結末を生むのか期待している目であり、ある者は、目の前にいながらも目を背けたいという気持ちと必死に戦っている者もいた。いまこの場で公開処刑が行われることは間違いなく、どんな罪状なのか、どんな人間が罪を犯したのかという好奇心に駆られて、広場に人が押しかけて来ている。

 視線を民衆の目線と合わせると、首切り台の下に三人の人影が見える。次々と首切り台の下に首をはめられ、その場に寝かされていた。三人とも何かと目立つ容姿をしていた。

 一人は歳も若く、一五、六歳ぐらいの少女で、とても整った顔立ちをしていた。服装は下から茶色のブーツに、黒いハイソックス。黒いホットパンツに赤いセーターから緑のワイシャツが見えた。髪型は肩にかかるほどのくっせ毛のあるボブカットで、輝くほどの金髪だった。しかし今は、整った顔も不満そうにしかっめ面を浮かべていた。

 そしてその右隣にいるのが、はっきり言って全身真っ黒。長いロングコートにで、なかに着ているヨレヨレのハイネックも黒。ズボンも黒く、おまけに黒い手袋をしている。黒髪で長身。もし自由に動けるのなだとすれば、この場にいる者を人凪に出来るであろう体躯であった。紫に光る眼は狂気に満ちていて、怒っているのだろうか。多分生まれつきなのだろうか。眉間にシワを寄せて、口がへの字である。どうして大人しくそんなところで寝転がっているかが不思議であった。

 そしてその少女の反対隣にいるのが、しっかりとした筋肉な男をつけているが、やや線の細い男だった。黒づくめの男と比べると、背はかなり小柄に見えるが、決して低くはない。こちらは反対に全身真っ白だが、着ているものは白いタンクトップのTシャツで、白っぽいジーパンを履いていた。どうもこの場に一番合った服装であるが、他の二人と並んでいると、なぜかこの男のほうが違和感があった。髪は少女と一緒で金髪でオールバックだった。顔はなぜか始終ニヤニヤ笑っていて、むしろ黒づくめの男より不気味である。

「静粛に! この者たちの罪状を述べる!」

 首切り台よりも少しだけ高い場所にある、椅子に腰をかけ、恰幅の良いひげもじゃもじゃの監修が口を開く。

「この者たちは、国家転覆を謀る男を脱獄させるために、牢に忍び込み、あろうことか牢から逃した。また警護の警備隊に負傷させた罪は重い! よって死刑と処す!」

 民衆は騒ぎ始めた。面白がっているものもいれば、同情しているものもいる。短い短文だけで、どちらが正当なのかもわからない。それでも民衆たちは、そのさまを黙って見ていなければならない。

 そうして、ギロチンが今にも落ちそうな瞬間、民衆は目をつむった。すると鈍い音が広場に響いた。民衆たちは恐る恐る目を開けてみると、それぞれのギロチンは首には達していなかった。少女のギロチンは粉々に粉砕されていて、白い男のギロチンは真っ二つに折れていた。黒ずくめの男のギロチンは、なせが腕で受け止めていて、半分ほど刺さっていたが、切断まではいかなかった。黒ずくめの男以外はどうやったのか見当もつかない。三人は辺りを見ながら、笑みを浮かべて立ち上がり、ギロチン台から飛び降りて逃走。黒ずくめの男だけ、腕から刃をゆっくりととって歩いていた。横で警護していた男たちは、一瞬に呆気にとられながらも、本分を思いだし、三人の捕獲に奔走する。一人だけ歩みの遅い黒づくめの男の腕をとって静止を促したが、腕を振り上げて裏拳が相手の顎に炸裂し、三メートルほど、吹き飛んだ。それから襲いかかる男たちを腕のひと振りでなぎ倒していく。白い男はさっそうとその場を走り抜け、襲いかかる者たちを、手刀で的確に倒していく。そして少女は民衆の上を、まるで飛ぶかのように飛び越えた。襲いかかる相手の顔面を踏みつけながら、飛ぶように広場から離れていく。

 三人ともその表情は嬉々としていて、楽しそうだった。その誰もが絶体絶命と思わせるその状況を、彼らにとっては瑣末なことなのかもしれないと、思い出してみるとそう思うのだ。

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