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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第一章
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第6話~公開、そして違和感~

新しいキャラ、登場です

 俺とハーレム組とのいざこざがあってから、食堂内での俺の悪口が増えた気がする。同じく召喚された奴らは前からだから、貴族の連中だろ。

 少し居心地が悪くなりながらも朝食を食べ終えたちょうどそのとき、食堂の扉が開き、二名の兵士を引き連れて第一王女、シェルマがやってきた。入り口あたりできょろきょろと何かを探していたかと思うとこちらを見て駆け寄ってきた。正確には、俺ではなく天ヶ上のほうを見ていたが。

 駆け寄ってくる際、こちらをちらりと見ながら顔をしかめる第一王女。そこまで嫌われてますか。俺挨拶ぐらいしかしてないんですけどね。


「こちらにいらっしゃったのですね、勇気様!」

「何かな、シェルマ」


 俺に見せた表情をすぐさま変えて満面の笑みを天ヶ上に向ける第一王女。天ヶ上もそれに微笑みを浮かべて答えた。シェルマと呼ばれた第一王女は、頬をわずかに紅く染めている。これを恋する乙女の表情と言うのだろう。


「そろそろ玉座の間に来るようにと父が仰せです」

「わかった。みんな、そろそろ玉座の間に移動だ」


 天ヶ上は第一王女の言葉にひとつうなずくと、食堂に向けて大声で生徒達を呼び集める。その声を聞いた生徒達はどこか浮かれながら入り口へと集まる。

 昨日、王様が主を探すと言っていたからそのことが楽しみなのだろう。自分に特殊な力が!?とか期待しているに違いない。なにそれ……、自分で考えてて恥ずかしくなってきた。いや、俺は第五遊技場の主だともうわかっているが、もし知らなかったら周りの生徒達みたいに期待していただろう。

 自分に特殊な力が、と期待している俺か……なんだろう、少し恥ずかしい。

 羞恥に襲われながら俺は生徒達と一緒に玉座の間へと向かった。



 昨日と同じく巨大な門扉をくぐり、玉座の間へと入る俺達。王は昨日と同じく玉座に踏ん反りかえっており、傍には白を基本に淵が金の鎧を着た明らかに上の位だとわかる兵士、そして昨日の司祭がいた。兵士は三、四十代くらいだろうか。短く刈り上げている茶色の短髪に切れ長の瞳、口は真一文字に結ばれている。体躯は歴戦の戦士のそれで、胸板も厚く全体的に鍛えられている。

 玉座の間についた後、『アトレナス』を除く五つの世界の説明を受けた。といっても、俺はすでにフロワリーテさんとアトレナスさんに説明を受けているのだが。


「それでは、勇者様方。ステータスを開くとしようか」

「先に主を探すのでは?」


 手を上げながら天ヶ上が質問する。


「主はステータスのユニーク職業と言うところに書いてあるのだ」

「なるほど」


 天ヶ上の言葉に王は答えた。確かに、俺もステータスを見たとき、ユニーク職業に『第五遊技場』の主と書いてあったからな。

 質問が終わったのを見て、第一王女が前に進み出る。


「それではステータス、と唱えてください。そしてユニーク職業を見て、主でしたら教えてください」


 第一王女の言葉を皮切りにあちこちでステータスと唱える声が玉座の間に響く。その後すぐに、きゃあきゃあと騒ぐ女子の声や男子の野太い歓声が響いた。召喚された際にもらった力やFSGでのキャラのステータスを見て興奮しているのだろう。


「見て、私魔法が使えるみたい!<火・水・風属性魔法使用>って書いてあるし!」

「俺は<竜化>ってのだな。ドラゴンになれるのかな~!」

「この、ステータス!まさしくFSGでの俺が使ってたキャラじゃねえか!ん、でもこのスキルはなかったな」

「やった!これで敵が来ても怖くない!にしても、このスキルだけ使えそうにないんだけど」


 召喚された際にもらった力は大小あれど、と言っていた。周りの反応からFSGをしていなかった人には大きな力を、していた人には小さな力とバランスを考えているようだ。FSG経験者のほとんどが前の世界でネタと思われていたスキルや初期からあるスキルが力として与えられたようだった。

 俺もみんなにあわせてステータスを開く。といっても偽装されたステータスだが。

 第一王女は周りの生徒には目もくれずまっすぐに天ヶ上の元へと向かう。


「勇気様、どうでしたか?」

「主ではなかったよ、ごめんね。ただ、ユニーク職業に勇者ってあるんだけど」

「まぁ!勇気様が勇者様だなんて、相応しいですわ!」


 第一王女の言葉に天ヶ上が謝りながらも答えると、嬉しそうな声を上げる第一王女。勇者なんて職業、あったのか……。


「お、勇気もか!俺もだよ!」

「私もよ!」

「ふふ、私も同じね」

「私も、です」


 天ヶ上の言葉を聞きつけたハーレム組の四人が天ヶ上の元へ自分もだと言いながら歩み寄る。勇者は召喚された人、ないしは主だと思っていたのだが違うらしい。今回の召喚は勇者召喚だったから、勇者がいてもおかしくないか。

 ハーレム組に勇者の説明をしている第一王女の話をこっそり聞くと、勇者というのは主とは別で、召喚された人達よりも更に一段上の力を持っているそうだ。喜ばれる理由は、主はそれぞれ力やらに特化している(『第一闘技場の主』だったら力、『第二図書館の主』だったら知識みたいに)のだが、勇者はそれが無くバランスよく強くなれるらしい。そして、第一~第四の世界の主と対等に張り合えるほどになれるそうだ。


「勇者様が五人もいらっしゃるとは、実に嬉しいことだ」

「まったくでございます、王よ」


 王や司祭は嬉しそうに話している。傍にいた兵士もこくりとうなずいた。

 一方の生徒達はこいつらなら当然かという思いと妬みが入り混じった思いでハーレム組を見ていた。


「では、皆様。ステータスの表示を誰もが見えるようにしてください。ステータスの一番下に表示の設定があるはずです」


 第一王女に言われたとおりにステータスの一番下を見る。お、あったあった。「周囲閲覧」と書かれていて、その横にオン・オフがある。

 オンを押してあたりを見回してみると、周りの生徒達の目の前にそれぞれのステータスが表示されているのが見える。自分のステータスもこう見えるのだろう。


「おいおい、神楽嶋。お前のステータス、大丈夫なのかよ。笑えるな、おい!」

「うっわ、本当。日頃の行いのせいなんじゃな~い?」


 後ろから唐突に話しかけてきたのは樹沢と橘。その言葉につられたように周りの生徒の目が俺の偽ステータスへと向けられる。そして、再び始まるささやき声。

 内容は簡単に予想できる。力が弱いものへの嘲笑だ。確かに、俺の偽のステータスはひどいものだと自分でも思うが。ハーレム組への妬みゆえに自分より弱い奴につらく当たって自分は強いと認識したいというのもあるのかもしれない。


「真由の言うとおりだ。前の世界での行いが反映してるんだよ、きっと。改心したほうがいいって一年のころから言ってあげたというのに……」


 天ヶ上が橘の言葉にうんうんとうなずきながら同意する。緋之宮と小峰は何も言わないが、目は明らかに見下げているといわんばかりである。

 王達も似たような表情である。いや、違う。一人だけ、他とは違う表情を浮かべている人がいた。

 白を基調に淵が金で彩られた鎧の兵士である。彼だけは、周囲の反応に呆れをほんのわずかに覗かせていた。


「目つきが悪いだけでなく、ここまで使えないなんて……」


 ぼそりとつぶやく第一王女。誰にも聞こえていないと思っているだろうが、俺には聞こえたからな。天ヶ上への態度とずいぶん違うな、おい。というか、使えないって……。何かに利用するつもりだったのか?というか、俺のジト目は目つきがきついに分類されるのか。


「さて、ここでの用件は終わった。シェルマ」

「はい。それでは皆様方、こちらへといらしてください」


 第一王女は先ほどの表情をくるりと変えて今までのものに戻し、入り口に向かいながら呼びかける。その後を護衛するように先ほどの呆れた表情を浮かべていた兵士がついていく。生徒達はそれにぞろぞろとついていった。

 まるで第一王女が先生のようである。


 こうして、ステータス公開は今までどおりの反応されたという結果で終わった。




 第一王女につれてこられたのは、広い訓練場である。小さな闘技場といった風体だ。観客席はないが。先ほどまで兵士が訓練をしていたのだが、俺達の姿を認めるとすぐに脇へと寄っていった。

 視線はあからさまではないが邪魔しやがって、といったような感じだ。確かに、訓練の途中で邪魔しちゃったしな。すみません。

 心の中で謝っていると、第一王女が一歩歩み出た。


「これから皆さんにはここで魔法を見ていただきます」


 その言葉にざわざわとする生徒達。生の魔法か、それは楽しみだ。あ、でも、今の偽ステータスじゃ俺は魔法が使えないことになってるから、今は使えないのか、残念。


「勇気様、そちらの世界に魔法はあったのでしょうか」

「いや、無かったよ。だからすごく楽しみなんだ」


 はい、そこでキラースマイル。頬を赤くする第一王女。何度目だよ、お前等。天ヶ上の言葉はすべて素敵に聞こえているのだろうか。


「それでは、ガイゼル、お願いします」

「わかりました、王女様」


 第一王女は、傍に控えていたあの白と金の兵士――ガイゼルさんに話しかける。ガイゼルさんは一礼すると、俺達に背を向け右手を前に突き出した。


「炎の玉よ、ファイアボール」


 その瞬間、ガイゼルさんの右手からバレーボールくらいのオレンジ色の炎の玉が現れ、まっすぐ飛んでいき壁とぶつかり、その瞬間轟音が響く。ぶつかったところを見ると、そこだけ、黒くこげていた。

 その様子を見ていた生徒達から歓声が響く。俺も、少し興奮してしまった。


「これが魔法です。今ガイゼルが放ったのはファイアボールといって初級の魔法です。魔法には種類があって基本の四属性の火・水・風・土、めったに見ない闇・光、そして空間の計七種類です。闇・光・空間は持つ人が少ないですが、基本四属性はほとんどの人が持っています。持つ属性は普通の人がゼロから二属性、三属性になると人が少ないです。勇者様方は四~六属性ですね」


 そう言って第一王女は天ヶ上にきらきらとしたまなざしを向ける。すばらしいです、といわんばかりである。アピールが激しい王女様である。

 そんな王女様の様子に天ヶ上は微笑みで答え、それを見ていたハーレム組女子は悔しそうだった。


「この世界ではレベルがあって、最大は二百レベルとなっております。二百レベルでのステータスが皆様の限界ということになります。皆様の中にはすでに二百レベルに達している方もいるようですね、本当にすごいです」


 天ヶ上に対してよりはテンションが下がっているが、感嘆を示す第一王女。これに驚いたのは、先ほどまで訓練を続けていた兵士達である。誰もがこちらを向いて驚きの表情を浮かべている。中には悔しそうに訓練用の剣を握り締めている人もいる。

 二百レベルの生徒はFSGの経験者だろう。俺だってレベルがこっちの世界でもレベル一とかに変わっていなかった。というか、測定不可能になってたが……。


「また、ここ『アトレナス』では魔獣が出ます。ですが、皆様のお力なら大丈夫だと信じております」


 そう締めくくる第一王女。聞いていた生徒達は何の不安もないといわんばかりの顔でうなずきあっている。ハーレム組も笑いながらうなずきあっている。

 その姿を俺はどこかもやもやした気持ちで見つめていた。確かに力はある。しかしどこか納得できないのだ。口で説明をしろといわれてもどういえばいいのかまだわからないが。


 生徒達の表情をガイゼルさんがひっそりと呆れた顔で見ていたことに俺は気づかなかった。

 

新しいキャラです、ガイゼルさん。

次回の更新は6月1日の予定です。

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