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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第三章
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第54話~群れ、そして到着~

 翌日早朝、部屋の鍵を店主に返した後、宿屋一階の食堂でサンドイッチを頬張っていた。白く薄いパンに挟まれている具はシャキシャキのレタス、焼かれたベーコン、チーズだ。

 食べながらこの後のことを考える。考えながらもそっと伸ばされたロルの鉤爪から俺の分のサンドイッチを守った。


「ピィ……」

「さすがに食いすぎだ。魔力で我慢」

「ピピニョォ……」


 そう釘を刺しておけばロルは渋々と言った様子で魔力を食べる。よし、これで俺のサンドイッチは食べられない、多分。

 ひとまず、朝食を終えた後はシーソイを出て真っ直ぐ街道を進んでホリービアへと向かう予定だ。小休憩は一回か二回ぐらいでいいだろう。

 順調に行けば夕方ぐらいにはホリービアへと辿り着く予定だ。泊まる宿を探したり、街の探索を踏まえれば、何とかはなりそうである。

 そこまで考えればサンドイッチを食べ終えた。料金を支払って宿屋を出れば、あとはこの街を出発するだけとなる。

 街を出る際にギルドの前を通れば、丁度大勢の冒険者達がギルドから出てくるという場面に出くわした。その冒険者の多さからして、明らかに巨大な魔獣を討伐するのだと察することが出来る。

 ……はい、ラーケですね。掲示板には翌日、つまり今日の早朝にギルドへ集合と書かれていた。彼らはこれから先日通った人の気配が無い海へ討伐のために向かうのだろう。

 朝の通りに武器や鎧がぶつかって鳴る金属音を響かせる冒険者達を尻目に街を出れば、ホラビル神聖国の首都であるホリービアへと続く街道をロルと共に歩く。この街道は途中まで海辺を沿うように伸びているが、途中で内陸側に入り込むように海辺を迂回するようにして延びている。

 塩の匂いが鼻をくすぐる中、整備された街道を歩いていく。

 気付けば街道は海の傍からそれていき、海の青が辛うじて見えるほどになった。それさえも森の入れば見ることが出来なくなる。

 少し広いこの森を抜ければ、目的地であり主達による会議が行われるホリービアだ。


「ロル、昼ごろに一度休憩しようか」

「ピニョッ!」


 俺の言葉にロルは威勢よく答える。

 あらゆるものが目新しいのだろう、首を忙しなく動かしては目を輝かせてあちこちへと視線を向けていた。

 その様子を微笑ましく思いながらも周囲を警戒しつつ進んでいれば、陽は高く上って昼が近いことを告げている。もうそんなに時間が経っていたのか、それじゃあそろそろ休まないとなぁ。


「ロル、あそこの切り株あたりで休むか」

「ピ? ピニョォピッ!」

「あと、しばらくは街の外でも俺の傍を離れないこと。分かっているとは思うが、街の外でもここはホラビル神聖国内だからな」

「ピッ!」


 大きく頷きながらロルは鳴くと、体を俺の脚に摺り寄せてくる。いや、嬉しいといえば嬉しいのだが、歩きづらい。

 変な歩き方になっていることを自覚しつつも、先程休憩場所にと指差した切り株まで辿り着く。目を凝らしてみれば、少し奥まったところで水が陽の光を反射していた。おそらく湖だろう。


「湖の近くのほうがいいかもな」

「ピ〜」


 そう言うと、ロルと共に場所を移動する。

 茂みを掻き分けた向こうには綺麗な水の湖が広がり、湖面は陽光を反射して煌いていた。そこまで広いというわけではない湖だが、傍に倒れた木や切り株があるので休むのには最適と言えた。

 切り株の一つに座りナップサックから地図を取り出す。その間、ロルは木の実や薬草を興味本位につついてみたり、まずかったのか時折鳴き声を上げていた。


「変なものだけは食べるなよ」

「ピィ〜……」


 そう呼びかけてから地図に再び視線を落とす。うん、このまま行けば主達の会議にはどうにか間に合うか。ラーケのことで色々とあったから遅れるものと少しひやひやしていたが、この調子なら宿屋探しにも余裕が出来る。

 一安心して次に魔獣がいないかどうか<レーダー>を開く、周りに魔獣はっと……って、ん?


「何だ、これ」


 無意識に声音を低くしながら呟くと、目の前に開いた<レーダー>をじっともう一度見つめる。様子がおかしいと感じたのか、不思議そうな顔でロルが近寄ってきた。

 いや、それよりもだ。今、<レーダー>の設定は魔獣だけにしているはずである。人や薬草などは設定に入れていないはずだ。

 そう、そのはずなのに。


「なんでこんなに反応が多いんだよ」


 赤い点の群れが内陸部に向けて赤い点の群れが移動していたのだ。あまりの多さで点と点の隙間もないほどである。

 魔獣の群れが村や街を襲うという話は何も珍しいことではない。大きな街では兵士やギルドが対応するために何とかなるが、それらの少ない小さな村が魔獣によって滅ぼされたという話だって聞いたことがある。

 この魔獣の群れは近くの都市、ホリービアへと向かっていないのは少々気になるところだが、問題はそこではない。


「よりにもよって、進行方向を邪魔するように行進しやがって……!」


 そう、魔獣の群れはホリービアへと続く街道を横切るように行進していたのだ。帯のように伸びる魔獣の群れはどう見ても俺達がこれからホリービアへと向かう一本道を塞ぐように移動していた。

 ならば他の街道を通ればいいのではないか。そうは思うが正直言ってこのままこの道を突っ切らないと主達の会議に間に合いそうにない。


「突っ切るしかないか……」


 そう呟きながらアイテムボックスにしまっていた《ヴォルカス》を取り出す。《駿影》、《ヴォルカス》ともに調子はいい。


「ロル、街道を魔獣が邪魔している。このままじゃあ会議に間に合わないから突っ切るぞ」

「ピピッ」

「あぁ、頼んだ」


 俺の言葉にロルは任せてくれというように胸をドンと叩きながら鳴いた。その頼もしい返答にこちらも小さく笑みを浮かべつつ言う。

 主達による会議が開かれるまであと二日。

 急ぐためにも進行方向を邪魔する魔獣を討伐することを決め、俺とロルは真っ直ぐ迷うことなく街道を突き進んでいった。



     □     □



「一つ目トロール、ビッグタートルにワイバーンにその他。これまた異種族ばっかりだな」

「ピィ……。ピピッ?」


 群れより少し離れた場所から魔獣を観察しながら呟けば、ロルは何かが引っかかったように首を捻りながら鳴く。

 群れへと視線を固定したまま、俺は再び口を開いた。


「同種族ならば何の疑問も抱かないんだけどな。こうも幅が広いとおかしいって感じるのも当然だよなぁ。ってか、こんなことが前にもあったような」


 ロルに話しかけるようにして言っていれば、ふと頭の片隅に似たことがあったことを思い出す。

 そう、あれはそうだ。五大祭の裏で起こった魔獣襲撃と似ているのだ。あの時にいた魔獣の中に中ランクから高ランクの魔獣はおらず、ゴブリンやウルフといった低ランクの魔獣だった。けれど今回は高ランクの魔獣で群れが構成されている。

 魔獣のランクという違う点があるものの、異種族で構成された魔獣の大規模な群れというのは五大祭のことを思い起こさせた。


「というと、またあの変な奴がいるってことか?」


 半ばうんざりとしたような口調になりながら唇を噛む。

 変な喋り方をした、赤い目の怪しい人物。人の形をしていたものの、足跡やらを見るにどうも人間には思えない。

 一応<レーダー>の設定に入れておくか。そう考えて<レーダー>の設定をいじるもどうやら近くにはいないようである。


「ピピッ」


 設定をいじっていればロルが早くしようといわんばかりに鉤爪を服の裾に引っ掛けてクイクイッと引っ張った。


「ん、そうだな。とっとと進むか。ロルは飛んでいる魔獣を頼む。俺は地上の魔獣を倒すから」

「ピピピニョッ!」


 ロルは威勢よくそう鳴くと、小さく体を震わせた後に翼を大きく広げる。そして羽ばたく音と共に空へと舞い上がった。

 さて、それじゃあ俺も行くか。

 跳び上がったロルを見送った後、落ち着いた足取りで群れへと近づく。いつでも扱えるように≪ヴォルカス≫はベルトのホルスターへと収め、≪駿影≫を抜いた。

 刹那、地を蹴って魔獣の群れへと突っ込む。


「ヴオオォォォォォアアアアアアアアァァァァァッ」


 殺気を放ちながら近づけば、対抗するように一つ目トロールが叫ぶ。そしてさながら足止めのように壁を作ってこちらへと迫ってきた。少しでも他の魔獣をおどこかへ移したいのかもしれない。

 腹の底を振るわせるような地響きは一つ目トロールが歩くたびに起こっている。陽の光に照らされて薄気味悪く光る緑色の体を隠しているのは腰に巻いている布一枚くらいだ。目を開いて大きく口を開けながら、手にしている木製の武骨な棍棒を振り回している。

 その巨体から繰り出される攻撃は確かに脅威だ。しかし慣れればその挙動は遅く感じるものである。

 振り上げた棍棒が振り下ろされるのと同時に地を強く蹴って一つ目トロールの棍棒を持つ腕めがけて跳び上がる。そしてその振り下ろされた腕に着地すると同時に今度は腕を蹴って一つ目トロールの頭めがけて跳び上がった。

 目の前に巨大な一つ目があり、その一つ目はこちらを睨む。視線を外すこともないまま、俺は≪駿影≫を横に薙いだ。


「ギイイヤアアアアアッ」


 森に響き渡る一つ目トロールの絶叫。それを待つことなく、今度は≪ヴォルカス≫を抜いた。

 引き金を一度、振り絞る。刹那、巨大な三つの火の玉が俺を取り囲むようにして現れて三方向へと飛んでいく。それは吸い込まれるようにして先程目を潰したトロールと後ろから攻撃しようとしてきた二匹のトロールに命中した。


「グウォオオオオオオオッ」

「ガアアアアアアアアッ」

「ギガアアアアアアアッ」


 爆発音と共に、先程の一つ目トロールと合わせて合計三体分の悲鳴が響く。

 後ろにいた一つ目トロールの二匹は俺が跳び上がっているのを隙と捉えて攻撃したのだろうが、そうは問屋がおろさない。いくら足場が不安定な空中といえども易々とやられてたまるかってんだ。

 ≪ヴォルカス≫を収めて≪駿影≫を構える。一つ目トロールの弱点は目のため、そこをつぶしてから次々に倒していった。


「グウォオオオオオオオオッ」


 向かってくる一つ目トロールを倒していれば、今度はビッグタートルが雄叫びを上げながらこちらへと突っ込んできた。

 助走してある程度勢いをつけると、弱点である頭や手足を甲羅の内側に引っ込めて滑り込むように突進を繰り出す。それは大きさもあいまって周りの木々をへし折って突き進んでいた。


「よっと」


 それを足で受け止める。そして甲羅の穴へと≪ヴォルカス≫の銃口を向けて電撃系の魔法を放った。

 手足と頭、計五つの穴から紫電が轟音と共に飛び出してくる。さながら雷が傍で落ちたかのようなその轟音の後、穴から煙と共にこんがりと焼けたビッグタートルの本体が出てきた。

 手際よく処理していくのだが、それでも微かに違和感を覚える。


(本当にこいつら『アトレナス』の魔獣か……?)


 ≪駿影≫を一つ目トロールに振るい、マンティコアラへと≪ヴォルカス≫の銃口を向けて魔法を放ちながらそんなことを考える。

 確かにどれもゴブリン等とは比較にならない上位の魔獣達だ。それよりも比べれば確かに強いと感じてもおかしくはないのだが、『アトレナス』におけるビッグタートルや一つ目トロールの強さと比べると強く感じてしまう。


(試してみるか……)


 気のせいならばそれで構わないと半ば考えながら、ビッグタートルに対して解析を試みる。

 そして表示された結果に思わず目を見開いた。


「おいおい、第一の主は何しているんだよ!」


 堪えきれずにそう叫びながら再び≪駿影≫を振るう。八つ当たり気味に攻撃された一つ目トロールは一刀両断され、地響きを立ててその場に崩れ落ちた。

 いや、こうなっても仕方がないのだ。確かにこの目ではっきりと見た。


――――この魔獣達は『アトレナス』の魔獣ではない、『第一闘技場』の魔獣達だ。


 思い起こされるのはアトレナスさんが俺に教えてくれた『第一闘技場』についてのことである。『第一闘技場』に棲む魔獣は『アトレナス』に棲むそれとは強さのレベルが違うのだと彼は言っていた。

 そうであるならばどうして強く感じたのかという疑問は解ける。

 けれどそれではいけない。もっと根本的なところがあり得ず、そして強い違和感を覚えさせるのだ。

 『第一闘技場』の魔獣が大量に『アトレナス』へと来たこと、それがあまりにもおかしい。


「ピィッ!」


 空に甲高く響いた鳴き声に思考を中断してそちらへと視線を向ければ、ホロホルであるロルが空中を縦横無尽に飛び回り、ワイバーンを翻弄しては討伐していた。ワイバーンはロルの素早さに追いつくことが出来ず、ロルの攻撃を一方的に受けている。


「ガアアアアッ!」

「よっと」


 注意が逸れたことを好機と見た一つ目とロールが棍棒を振り上げて突っ込んでくる。それに対して振り下ろされた棍棒を蹴りで砕き、目を潰してから討伐した。

 同じことの繰り返しだが、それにしても数が多い。

 <レーダー>を使って周囲に人がいないことを確認する。よし、いないな。それじゃあ、一気にいくか。


「【バイキング】!」


 そう言って魔法を発動しても何も起こらない。呪文を唱えたにも関わらず魔法が発動出来ていないように見える(・・・・・・)俺を、取り囲む魔獣がニタニタと下卑た笑みを浮かべながら見てきた。

 いや、これで問題はないのだ。

 ほら、だって聞こえ始めた。


「グ?」


 一匹の一つ目トロールが何かに気付いたように視線を外して辺りをきょろきょろと見回す。最初はその一匹だけだったものの、少しずつ異変に気付いた魔獣は増えていっていた。

 おっと、このままじゃあいけない。ついでにと広域にサイレントとハイドの魔法をかける。

 これでよしと頷きながら襲ってくる魔獣を討伐していれば、その異変は少しずつ大きくなり、そして俺達の前に姿を現した。

 海でもないのに空中を行き、その帆は風を捉えようと目一杯広げられている。木造のそれはあまりにも大きく、一つ目トロールなど蟻のように思える程だ。いや、それでは比較にならない。下手をすればこの森を覆わんばかりの巨大さだった。横に備わっている砲門が陽の光に照らされて鈍く光る。

 そして何よりの特徴は、風に揺れて遥か頭上で動くドクロ旗。そう、いわゆる海賊旗である。

 巨大な海賊船が、森の上空に突如として現れたのだ。

 唖然と魔獣達が海賊船を見上げる中、海賊船は砲門が魔獣達へと向けるように空を滑空する。そして鈍い音と共に照準を定めると、瞬間、魔獣達に向けて砲弾を一斉に放ち始めた。

 風に煽られて移動しないようにと降ろされた錨は落下地点である魔獣達を押しつぶしてしまう。

 砲弾の雨にさらされている魔獣達はその身に砲弾を受けて次々とその場に倒れ伏せた。さながら現実のような出来事だが、魔獣の体を貫いた砲弾が地面を抉ることなく霧散する点が今起こっていることは魔法による出来事なのだと物語っている。

 俺を避けて行われる一方的な攻撃に魔獣達は次々に倒れていく。そうして気付けば、先程までいたはずの魔獣の群れは消えていた。

 それに合わせて、海賊船も姿をぼやけさせ消えていく。


「これで終わりっと。このまま魔獣を放っておくわけにもいかないし、手早く済ませるためにも全部アイテムボックスに入れるか」


 消えていく海賊船を見送りながらそう決めれば、道の邪魔になっている魔獣をアイテムぼっくすへと入れる作業を始める。気付けばワイバーンを処理し終えていたロルも手伝ってくれたことで、思いのほか早く終わった。

 そんなことをしていれば時刻は既に夕方に近い。このままゆったりと歩いていれば、ホリービアへと辿り着くのは明日か明後日になってしまう。


「急ぐぞ、ロル!」

「ピ!」


 そう声をかければ、ロルは元気よく答えてくれる。ロルの返事を確認すれば、すぐさまホリービアへと向かう道を急いだ。

 いつも以上に早く進む俺とロル。

 この森さえ抜けることが出来たなら、目的地であるホラビル神聖国の首都、ホリービアは目前だ。




 森に遮られ、海は遠く向こうにある街道をひたすら進んでいく。

 人の気配が少ない街道はこの道が滅多に利用されていないことを表しているのか、それともラーケの影響があるのかは分からない。それでも移動に支障をきたさない点ではありがたかった。

 夕闇の空に一番星が輝き始める。夕暮れの赤は夜色に飲まれかけていた。

 ふと、先程のことを考える。魔獣の襲撃は珍しくない。けど、今回の件だけはおかしい。第一の主であるなら『第一闘技場』の魔獣が『アトレナス』よりも強く、そして危険であることを知っているはずだ。

 ならば第三者となると、あれだけの魔獣を転移するのはかなりの魔力が必要になる。

 ホラビルで起こったことを考えれば仲がよくないカリオ魔国、そしてその国にいる『第三商店街』の主が怪しくなるが、魔力で言うのならばすぐに思いつくのは『第二図書館』の岩久良校長だ。

 けれどそれらしい人影は無かった。いや、岩久良校長だけではない。それらしい主の姿も近くには無かった。


「となると、今回もあの変な奴が絡んでいるのか? でも何も反応は無かったし、一回だけで判断するのもなぁ」


 随分前に考えた一つの推論をもう一度口にしてみる。半ば脳内整理も兼ねたその言葉は森の空気へと溶け込んで消えていく。

 似たような出来事だからと結びつけるのは安易かもしれない。けれど逆に似ているのであればと、少しのつながりでそう考えてしまうのも仕方が無かった。

 とにもかくにも情報が無い。


「あの赤い目の奴か、それともさっき考えていた二人の主のどちらかか」


 どちらにせよ、頭の片隅に留めておくべきだろう。


「本当に予想外のことが起こる」

「ピ?」

「ロルに怒っているわけじゃあないよ。今起こらなくてもと思っただけだから」


 怒られているのかと間違ったロルが不安そうな瞳をこちらへと向けるので、宥めるようにそう言う。そして視線を前へと戻せば、ため息が漏れてしまった。


「あの群れも一体どこに向かおうとしていたのやら……」


 脳裏に先程の群れが過ぎりながら呟き、もう一度ため息を吐く。考えていたことに確証は無いし、ただ深く考えすぎているだけなのかも知れない。

 それでも少しばかり気になるというのも本音だ。

 気付けば森の出口であろう光が前方に見え、少しずつホリービアの街の外観と明かりが姿を現し始めた。頭を覗かせているのは白というには趣が少々変わっている。おそらく神殿か教会などだろう。

 目的地が見えれば自然と足を速めてしまうもので、森の出口へと急ぎ足で向かった。少しずつ森の先に広がる平原が見える。

 そして、森を抜けた。


「おぉ……」

「ピィ……」


 俺とロルの口から思わずため息が零れる。

 白い防壁に囲まれているために街の様子を詳しく知ることは出来ない。けれども防壁よりも高く夜空へとそびえたつ大聖堂は暗がりの中、街の明かりがスポットライトの役割もあるのか実に荘厳だ。

 その光景はまるで一枚絵のようにも見え、見るものを思わず虜にする。

 ホラビル神聖国の首都、ホリービア。この街でいよいよ、俺達の目的でもある主達による会議が開かれるのだ。

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