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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第三章
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第41話~いつもの日、そして喧嘩~

 ウィンフーさんと鬼ごっこをした翌日、俺はロルと共に館の自室にいた。時刻は朝の八時ごろ、換気のためにと開け放たれた窓からは澄んだ朝の空気と共に遊技場の軽やかな音楽が流れ込んでくる。

 そんな音楽に気に留めることなく、俺は深く革張りの椅子にもたれた。目の前の執務机に置かれているのは未処理の書類と先程までに処理を終えた書類である。

 量はそこまで無いとしても、ずっと文字とにらめっこをしていれば目が疲れてくる。俺は一つ息を吐くと目頭を揉んだ。


「ピィ?」


 ロルの鳴き声にそちらへ視線を向けると、傍でナッツを食べていたロルがこちらを心配そうに見つめていた。食べるのを止め、こちらを丸い瞳で見つめている。あぁ、心配をかけてしまったか。


「何でもないよ、大丈夫」

「ピィ……ピッ」


 ロルの心配を和らげるように笑みを浮かべながらそう言うと、ロルはしばらくこちらの顔を窺った後満足そうに一声鳴いた。何か俺が隠しているのではないか、顔を窺って見ていたのだろう。

 本当に懐いているのだなぁ……頭の上に乗せても何も問題が無かった頃が懐かしい。あれはあれで良かったけれど。おっと、作業作業と……。

 大きく座ったまま伸びをすると、再び書類と向き合う。

 静かな部屋にはロルがナッツを食べる音と、紙をめくる音が響いていた。





 現在の時刻は昼近く、最後の書類を処理し終えてそれを処理済のボックスへと入れる。


「終わったぁ」


 思わず漏れる声とともに肩を揉む。ずっと同じ姿勢で座り続けていたためだろう、椅子にもたれかけようとすると思わず伸びをしてしまった。

 隣には体を丸めて眠っているロルの姿がある。朝の時には食べていたナッツは既に無い、そういえば途中から食べる音が聞こえなかったような気がするな。あの時に食べ終えていたのだろう。

 いつもこちらに向けてくる瞳を閉じて眠るその様子に思わず笑みを浮かべながら、机の上を整理していると書斎の扉が軽くノックされた。その後に外からこちらへ声が投げかけられる。


「ルルアラなのです。失礼してもよろしいのです?」

「あぁ、構わないよ」

「では、失礼するのです」


 声と共に音も無く渋い木の扉が開かれた。扉を開けたルルアラはソーサーやカップ、ティーポットを乗せたワゴンを押して室内へと静かに入ってくる。瞬間、室内には紅茶の匂いが鼻を抜けた。


「お茶をお持ちしたのです。あと、ロルにはナッツを持ってきたのです」

「ありがとうな、ルルアラ。ロル、ルルアラがナッツを持ってきてくれたらしいぞ」

「ピッ?ピピッ!」


 声をかけるとまどろんでいたロルが威勢よく起き上がり視線をルルアラへと向ける。その瞳を見れば喜びが分かるほど、嬉しさが全身からにじみ出ていた。その様子に俺はもちろん、ルルアラも笑みがこぼれてしまう。好きなんだなぁ、ナッツ。

 微笑を浮かべたままルルアラはお茶の準備を始める。そしてロルにと持ってきたナッツを皿へと移した。ロルはまだかまだかと待ち切れないというようにルルアラをじっと見つめている。


「はい、ロル。ナッツなのです」

「ピィッ!」


 差し出されるやいなやロルは大きく一つ鳴き声を上げると、待ってましたとばかりにナッツを摘み始めた。ルルアラはその様子を笑みを浮かべながら見ていたが、小さくポツリと呟いた。


「い、今なら触らせてもらえるのです。ナッツで釣っている今なら……」

「……ルルアラ、今まで触らせてもらえなかったのか」

「き、聞こえていたのです?」


 聞こえてきた呟きに思わず声を漏らすと、ルルアラは口の端を引き攣らせながらこちらへと顔を向けた。動きもぎこちなく言葉も若干震えていることから、先程の言葉に思い当たることがあるのだと分かる。

 そっとロルを刺激しないように立ち上がったルルアラは俺の傍へとやってきて小声で話し始めた。


「さ、触らせてもらえないわけではないのです」

「なら、一言ロルに言って触らせてもらえばいいじゃないか」

「秋人様みたいになでると甘えてくる姿が見たいのです。私が撫でてもあまり嬉しそうではないのです、むしろ仕方が無いという感じなのです……。そこで秋人様が来たら途中でも秋人様に駆け寄るし……」

「な、何だかすまん……」


 最後にはどこか恨めしいといった顔でこちらを見つめるルルアラに思わず謝ってしまう。みんなそうだと思っていた……あぁ、そういえばルルアラ達がロルと共に行動することはあったが頭を撫でたりいつも俺がしているようなことをしてはいなかったような……。


「秋人様がロルを猫かわいがりしているからこっちには……」

「そ、そんなに猫かわいがりしていたか?仕事とか大事なときはきちんとしていて……」

「しているのです……自覚が無いだけなのです……」

「えぇ……」


 ルルアラの言葉に今までの行動を振り返ってみる。……いや、大丈夫のはずだ、猫かわいがりはしていないはずだ、多分。けれど他者から見たのであればそう見えるのだろう。俺との行動を減らして他の人につかせたりしてみるか。

 そんなことを考えていると再び聞こえてくるルルアラの小さな呟き。本当に小さく、近くなければ聞こえない程だ。


「こう言えば、私のロルと一緒に過ごす時間が増えるのです……」

「おい、こら、聞こえているぞ」

「な、何のことなのです?」


 目を泳がせながらしどろもどろに答えるルルアラ。隠す気があるのだろうか、これでは明らかに認めているようなものである。

 それにしてもそれ程までにロルと一緒に過ごしたいというのか。まぁ、別に構わないか。


「とりあえず、これからロルを別行動させたりするよ」

「本当なのです? それならば是非、是非私が一緒に行動したいのです!」

「ルルアラに限らず、な。リリアラ達とも行動させる」

「ピッ?」


 期待の色を浮かべるルルアラと話していると、先程の言葉が聞こえたのかロルが勢いよくこちらへと振り向いた。ショックを受けたような、残念そうな顔である。

 しかしルルアラは嬉しさで気持ちが高揚しているのか、そのことを気にせずロルへと満面の笑みを浮かべて話しかけた。


「ロル、これからは私とも一緒に行動するのですよ。よろしくお願いするのです」

「……ピギャァ」

「も、ものすごく嫌そうな顔なのです。今までこんな顔、されたことないのです……!」


 声をかけられたロルはさながら唾を吐き捨てるような勢いで顔を背けると嫌そうに鳴いた。そのことにルルアラは笑顔を崩してショックを受ける。今にも膝から崩れ落ちそうな勢いで、どれほどロルのことが好きなのか窺い知ることが出来るほどだ。

 それにしても気のせいだろうか、ロルの鳴き声がいつぞやの暴れた時のような鳴き声である。けれど理性を失っているようには見えない。余程嫌なのか、そうなのか。


「ロ、ロル、私と一緒に……せめて前のように……」

「ギィ……」

「本気で威嚇しないでほしいのですよぉ……」


 ロル、とうとうピがつかなくなったな。本気で嫌そうな声である。姿勢を低くし、本気の威嚇態勢だ。一方のルルアラは先程の喜びの色は失せて、どんどん落ち込んでいるのが手に取るように分かった。   あぁ、これは放って置いてはいけないな。


「ロル、そこまでだ。ちょっと度が過ぎるぞ」

「ギィ……ピギャ……」

「落ち着け、手助けが必要なときや人手が足りない時には別行動してもらうときがあるということだからな。そこまでルルアラを威嚇するな、ルルアラだってお前のことが嫌いなのではなく好きなんだから」

「……ピィピ」


 低い声でロルをなだめるように説得すると、渋々といった様子でロルは威嚇を解く。隣で小さくルルアラの安堵のため息が聞こえた。

 けれどルルアラが仲直りだと触ろうとするとプイと顔をそらして拒否の意思をロルは示してくる。どうやら先程のでルルアラの印象がロルの中で悪くなったらしい。あぁ、またルルアラがショックを受けている……。


「ルルアラ、今は諦めてこれから挽回していけ……」

「はい、なのです……」


 ようやく思いついた言葉をかけるもルルアラの顔は晴れない。余程ショックを受けたのが分かるほど、背中にどんよりとした重い空気を背負っていた。そしてとぼとぼと紅茶をカップに注ごうと作業に戻る。

 うん、これ以上かける言葉が見当たらない……そっとしておこう。

 そんなことを考えていると、目の前に紅茶の入ったカップが音も無く置かれる。見なくても分かる、ルルアラは暗いままだ。

 どこか気まずさを感じながら紅茶を一口、口に含む。いつもなら広がる紅茶の風味は今回は消え失せ、ただただ渋みだけが口の中に広がっていった。



 紅茶を飲み終えると、終えた書類の再確認を始める。一応な、ミスなどがあったりしたら洒落にならん。

 机にかじりついて再び書類とにらめっこをしている俺を他所に、ルルアラは何とかロルの機嫌を取ろうと先程から躍起になっていた。遊びの誘いはもちろん、毛並みを整える、ナッツのお代わりを勧めるなどしているのだが、一向にロルは反応しない。むしろ更に反抗しているように見える。


「く、くそう、何故機嫌が取れないのです。ロル、ナッツなのですよ~」

「ピ」


 視界の端でナッツの器を持って勧めるルルアラとそっぽを向くロルの様子が映る。そっぽを向かれてショックを受けたのだろう、とうとうルルアラは膝から崩れ落ちた。

 あぁ、またか、と考えていた時である。普段聞かないロルの鳴き声が耳へと入る。


「ピャピャッ!」

「え、ロル?」


 思わず作業を止めてロルのほうへと顔を向けてしまう。先程聞こえた声は、明らかにルルアラに対して嘲るような、馬鹿にするような響きだった。あ、あんな鳴き声初めて聞いたぞ。

 一方、馬鹿にされたルルアラは悔しげにロルを睨みつける。その顔のまま勢いよく立ち上がると、宣戦布告をするようにロルを指差した。何が始まるのだろうか?


「ロル、さすがに馬鹿にしすぎなのです! 私を下に見ているのです?」

「ピィ」

「な……っ! 頷きやがったのです!」


 ルルアラの言葉にロルは真顔で頷く。そのことにルルアラは顔を少し紅潮させた。あぁ、これは嫌な予感がするなぁ。


「くっ、どっちが上か決めるのです、ロル!」

「ピィピ!」

「お、おい、どっちも落ち着けよ。ロル、さっき注意しただろう? ルルアラもそんな突拍子も無いことを言わないで――」

「秋人様は黙っていてほしいのです!」

「ピィ!」

「えぇ~……」


 言葉が出ない、とはこのことを言うのだろう。どちらもヒートアップしており、こちらの言葉を聞く気がないようだ。何でこうなったんだよ、本当に。

 ロルとルルアラの間に飛び散る火花、もう話し合いで解決できるというような空気ではない。


「とりあえず、部屋で暴れるようなことはしないでくれ。出来ることなら穏便に解決してくれると助かるのだが」

「ピィニョ!」

「あ、無理ですか、そうですか」


 俺の言葉をロルは即座に否定する。どうしろというんだよ、これ。最初はただの小さなすれ違いだと思ったのに、ここまで大きくなるとは。書類作業からではなく、目の前の出来事でどっと疲れを感じて肩が重くなる。もう無視だ、目の前の作業に集中しよう、あと少しだし。

 そんな俺を無視して、ロルとルルアラは話を進めていった。


「これからバトルするのです?」

「ピィッ!」

「ふふん、私の力を見せてあげるのです! さぁ、外に出るのです!」

「ピギャッ!」


 話を進めていたロルとルルアラは窓から外へと飛び出していく。そこは窓であって玄関じゃねぇよ。詳しく聞き取れることが出来なくなったが、何やら言い合っている声が窓から聞こえてきた。

 あぁ……やっと確認が終わった。思わず一息吐いた瞬間、すぐ近くからロルの鳴き声が聞こえてくる。そちらへ視線を向ければ窓枠に鉤爪をかけてこちらをのぞきこんでいた。


「ピィ!」

「ん、何だよ、ロル」

「ピニョピィ、ピニョ!」

「え、何だよ、こら、服を引っ張るな!」


 服の裾に鉤爪を引っ掛けたかと思うと、窓のほうへと引きずるようにして引っ張っていく。思わずその後に続くようにして窓から外へと出た。

 下ではルルアラが気合の入った顔で腕を組み、ロルへと視線をやっている。あぁ、これは戦う気満々だ。

 半ば諦めの気持ちになりながら地面へ降り立つと、ルルアラがこちらに顔を向ける。


「秋人様、審判をやってほしいのです。確か追加書類が無ければ目立った仕事は無いはずなのです」

「いや、そりゃそうだが……」

「では、お願いするのです。……ロル、早速試合なのです!」

「ピィ!」


 言葉の続きを聞くことなくルルアラはロルに呼びかけ、どちらも向かい合う。聞く気無いんだな……。

 呆れる俺を他所にルルアラとロルの空気はより緊張感を増していく。何がきっかけだったのか、葉が落ちる音かそれとも風が吹いた音だったか。張り詰めた緊張感が一点に達し、合図が無いにも関わらずどちらも同時に攻撃を開始した。

 武器無しといえども、ルルアラの徒手格闘は強い。唸りを上げて振るわれる蹴りや突きだが、一方のロルもその速さについていっている。受け流すことは鉤爪であるためだったりと難しいのだろう、飛んだり跳ねたりしてルルアラの攻撃をかわしていた。


「ピィッ!」


 威勢の良い鳴き声と共に姿勢を低くし避けると同時に鉤爪を真横に振るう。その軌道上にあるのはルルアラの横腹だ。

 しかし笑みを見せたのは一方のルルアラである。口の端に笑みを浮かべると同時にハイキックで高々と上げた足をそのまま、かかと落としの要領で足を思い切りロルの体めがけて振り下ろした。。

 これは当たった、そう考えた瞬間である。ロルの体から薄灰色の霧のようなものが包み込んだのだ。止めることが出来ないルルアラの蹴りは霧へと突っ込むが、そこに実体は無くすぐに霧の中から足が出てくる。


「なっ……どこに行ったのです!」

「あれ、そういえば……」


 ルルアラは慌てたようにロルの姿をきょろきょろと探す。それにしてもあの霧、どこかで話を聞いたような……あぁ、そうだ、オブリナント大帝国を出発する日だ!

 確かギルドの冒険者達は霧が出た後に姿を消してって言って……ってことは。


「ピィギャァ!」

「ひょわっ!」


 ルルアラの上空に先程と同じ霧が現れたかと思うとそこから弾丸のようにロルが飛び出してきた。なんとか気づいたルルアラは音が鳴るほど強く地を蹴ってそれを避ける。先程まで彼女がいた場所にはロルが轟音をたてて着地した。


「あ、危ないのです……」

「ピィニョピッ!」


 険しい顔つきになるルルアラとふふんと鼻を鳴らすようにして鳴くロル。挑発に乗ってしまったルルアラは突きや蹴りを繰り出すが、ロルはそれを霧に紛れて移動することで回避していく。霧はどこから現れるか分からない、ルルアラはその対処に顔を歪めた。

 ルルアラが攻撃し、ロルが霧によってそれを回避してカウンターを仕掛ける。そしてそれをルルアラが避ける。広い空間を使って縦横無尽に行われる一進一退の攻防の流れを変えたのはルルアラだった。


「ふん、そこなのです!」

「ピィッ!?」


 霧がルルアラの右手に現れた瞬間、すぐさま彼女はその霧へと回し蹴りを繰り出した。霧から飛び出そうとしたロルは慌てたような鳴き声を上げると何とか避ける。しかし間違いない、先程のルルアラの攻撃はロルの体を掠めた。

 してやったりといった表情を顔に浮かべるルルアラとは対照的に、ロルのルルアラを見る瞳が鋭くなる。霧を使った攻撃を対処されたんだ、ロルも警戒するだろう。

 わずかな硬直時間、しかしロルが霧に紛れて姿を消したことでそれはすぐに途絶えた。ルルアラは余裕のある表情を浮かべたまま、辺りを見回している。次に霧が現れるタイミングにあわせて、攻撃を仕掛けるんだろうな。

 対策を取られたロルは何とか攻撃を仕掛けてみるも、ルルアラは先程の切羽詰った表情はどこへやらとばかりにその攻撃を危なげなく回避していく。そのたびにロルの表情は焦りと苛立ちで歪んでいった。

 あぁ……これは決着がつくのだろうか。見ていて二人の実力は拮抗しているように思える。掠ったとはいえルルアラはロルに攻撃を当てているし、一方のロルもタイミングをずらしたりなどして対策を採り始めた。

 衝撃音を辺りに散らすロルとルルアラの試合、本当にどちらが勝っても負けてもおかしくは無い。はて、どちらが勝つのだろうか。

 そんな風に目の前の試合に集中していたから気づかなかったのだろう。ルルアラとロルの試合に釘付けになっていた俺の肩を二回、誰かが叩いた。


「ちょっと待ってく――」

「秋人様、この時間帯に何をなさっているのでしょうか」

「へ? ……あ」


 声に気づいて後ろを振り返る。冷や汗がたれ、口の端が引き攣るのを感じた。ギギギと音がつきそうなほど強張った首を回して振り向いた先にいたのは、にこやかな笑顔のジェラルドさんである。

 ……顔は(・・)笑っているが、迫力がある。いや、迫力というよりも威圧感だろうか。どちらにせよ、はっきりと分かる。ジェラルドさんは怒っているのだ。

 後ろではジェラルドさんの姿に気づかないほど熱中しているのだろう、ロルとルルアラが戦う音が聞こえてくる。


「秋人様? これはどういう事態でしょうか」

「え、えっとですね」


 ジェラルドさんを前にして冷や汗が止まらない。心臓の音が鼓膜を叩いてるかのごとく大きく聞こえてくる。

 先程まで緩めていた姿勢を正し、俺はジェラルドさんの前で背筋を伸ばして突っ立っていた。一方のジェラルドさんは自然体だが、気のせいだろうか、後ろに般若が見える気がする。初めて主になった俺にスパルタで接客やらを教えていた時を思い出してしまった。


「秋人様! きちんと見ているので……す……」

「ピ?……ピャ……」


 後ろで聞こえたルルアラの声は尻すぼみになっていき、ロルもそれで気づいたようだ。聞こえていた戦闘音は消え、耳に痛いほどの静寂が辺りに満ちる。

 ジェラルドさんはそんな俺達に、にっこりと笑みを浮かべた。


「とりあえず、皆様。そこに座っていただけますかな?」


 その言葉に一つ返事ではいと答えた俺達の声は、誰もが引き攣り震えていた。


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