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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第三章
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閑話~二と四、そして一と三~

 木々が茂っていたりむき出しだったりと様々な山々がそびえたち、近くには川が流れている。遠くに赤く光を放っているのは火山、そして対極の位置に遠く見えるのは雪山だろう。生い茂る森の中、狼の遠吠えが聞こえた。

 山々や木々に囲まれた中に、多くの工房が集落のようにして立ち並んでいる。まだ昼時ということもあって活気があり、工房の煙突からは煙や辺りには鉄を打つ音など色々な音が満たしていた。

 ゲートを行き交う人々の姿も見える、『第四工房』のいつも通りの風景だ。

 建ち並ぶ工房の中で一際大きい、三階建ての工房が集落の中心に建っている。レンガ造りのその工房は今まで経た年月を感じさせるが、どこにもひびが無いところは丈夫さを感じさせていた。巨大な工房の入り口である木製の扉の脇には門兵であるホラビル神聖国の兵士が槍を片手に威圧感を放っている。


「う~む……」


 そんな工房の中、三階にある専用の書斎で大ヶ島エリオットは椅子にもたれながら思案していた。悩んでいる内容はここ最近の仕事の進捗である。予想はしていたが、それ以上に中々はかどらないのだ。


「主だしすぐに教えてくれると思ったのだけれどなぁ……。意外と上手くいかない」


 ぼやくようにして呟く大ヶ島の頭にはこれまで接触を図った『アトレナス』の神々の姿が浮かぶ。笑顔を浮かべて少し煙に巻くような言い方をしたのは確かだが、それでも一般人と主が頼むのは違うと思っていたのだ。

 しかし蓋を開けてみれば中々ことが上手く進まない。これではせっかく神々との会話を可能にする道具を作ったにも関わらず、意味が無くなってしまう。さすがにこれ以上の進捗の停滞は大ヶ島も望んでいない。だからこそこうしてどのように手法を変えようかと考えているのだ。


「『第二図書館』も、まぁ動いているだろうね、道具は渡したし。けれどあの主のことだ、見つかったら緊急会議でも開いて周知することを重要視するだろうし、となると彼らも捗ってはいないか」


 大ヶ島に手伝ってくれと渋々頼んできた人物、前の世界で校長であった岩久良ならば見つかっても内密にするとは考えづらい。理由も頼んできた時に言っていたし、そもそも秘密にしたいならもっと人を選ぶはずなのだ。

 どちらにせよ捗っていないことはあまり良い事態ではない。大ヶ島は頬杖をつくと、もう片方の手でトントンと机を叩く。一定のリズムを持ったそれは誰もいない静かな書斎に響いた。彼の前に置かれた紙にはこれまで上げられた案が走り書きのようにして羅列されている。


「最終案は、このことに対して人を増やすという案があるけれど……」


 言葉に出した案に大ヶ島は苦笑いを浮かべて首を振る。この案をとるということはそれだけこの件に他国を関わらせるということになるのだ。まず第一と第三の主はあり得ない。第一ならまだしも第三は腹の底で何を考えているのか分からない。大ヶ島にとって同族のにおいがするのだ。

 

「けれど早瀬さんじゃあ僕が頼んでも駄目だ。それに早瀬さんはどうにかできても周りが中々厄介だし」


 彼女は理屈云々ではなくどうやら本能でこちらを嫌っているらしい。まぁ、けれど脳筋なところがあるため御すことは出来るだろう。けれど彼女の所属する国は大ヶ島と同じ境遇の人間達がきちんと一兵団としてまとまっているし、上の人間も簡単に騙せるほど阿呆ではない。


「やりづらいかぁ。かといって主のいない国に頼むのは言語道断だ、一級品の剣を与える事態になってしまいかねない」


 大ヶ島は苦笑をしかめ面に変える。果てさてそれならばどうしようか、やはり協力なんて申し出ずに新しい道具なり何なり作ってどうにか情報を引き出そうか。

 思案顔で案を羅列した紙に視線を向けたまま大ヶ島は考える。浮かぶ案のどれもがデメリットが大きいと悩んでいた時、荒々しく書斎の扉をノックする音が聞こえた。

 一体何だろうか、こんなに荒々しくノックして。声には出さずも少しばかり不機嫌になった大ヶ島を他所にノックした本人は荒げた声を上げた。


「ホラビルからの使者でございます! 緊急にお耳に入れたいことが!」

「はぁ……いいよ」

「失礼します!」


 大ヶ島の返事を聞くやいなやすぐさま扉を開けるホラビルの使者。ゆったりとした白を基調とする衣服を身に纏った使者である男性は、扉を閉めると慌てるように大ヶ島の下へと駆け寄った。

 男性の落ち着きの無い行動に大ヶ島が眉を寄せる。不快感もあるが、何よりここまで慌てるとは一体何事だろうかという考えが大半を占めていた。


「主様、『第五遊技場』に行く手がかりを探す案件ですが」

「あぁ、それがどうかしたのかい?」

「先程、ホラビルに魔法学園から連絡がありまして。先程の件に関して、アグレナスの勇者達を関わらせると……」

「勇者達? ……あぁ、天ヶ上さん達のことか」


 そう言って大ヶ島は小さくため息を吐いた。机の前に立つ男性は体を強張らせながら、大ヶ島の次の言葉を待っている。


「なんでまたアグレナスに……」

「あの国は王が第一王女を溺愛しているからかと……」

「知っている。勇者をたらしこめば王女が自然とついてくる。彼女は勇者に異常なほど盲目だからね。そんな彼女を王は溺愛しているから丸め込める、そう考えたのだろうけど。だからって何でアグレナスなのか」

「第二側曰く、第二と第四の主でも駄目なら勇者ならばと。加えて前の世界でも他人から慕われる人柄の彼ならと……もちろん、勇者に全て投げ出すのではなく彼らが必ず付き添うそうですが」

「理由が弱い。本当にそれだけなら僕は正直に真正面からぶつかるよ。それに付き添いとはねぇ、それだけ天ヶ上さんに可能性を見出しているのかなぁ」


 弱々しく告げる男性の言葉を切り捨てるように言う大ヶ島。少し強すぎたと反省したのだろう、しかめ面を申し訳なさそうなものにして男性へと向き直った。


「……ごめんね、強く言い過ぎた」

「いえ、構いません。我々は前の世界の勇者がどのような立場だったのか分からないので、それほどの人物なのかとしか」

「そうだねぇ……彼に近い人ほど盲目になりがちだよ。離れればそれほどの人物でもないと分かる。まぁ、例外はあるけれど」

「そ、そうですか」

「先生にはある程度好感があったんじゃないかな、実際優秀だし。けれど取り巻き、あぁ今は樹沢さんは離れているのか。なら女性陣だね、その女性陣はちょっとというレベルかなぁ。恋は盲目というけれど、あれは酷すぎる」


 言葉を紡ぐ大ヶ島の表情は普段の穏やかなそれとは違い冷たいものである。当時のことを思い出すように視線を空中へと向けながら、それでも言葉を紡いだ。


「まぁ、正義感は強いのだろうけれどね。その正義も今思えば少し歪だったよ」

「そ、そのような人物でしたか……」


 大ヶ島は億劫そうに勇者に対して言葉を吐く。その様子を男性は頬が引き攣りながらも相槌を打った。

 けれど、と大ヶ島は話を続けながら前のめりになる。その顔には何か策が思いついたような、いつもなら浮かべないであろう朗らかさとは正反対な笑みを口の端にたたえていた。


「今回の件、こちらはなるべく目立たないようにしようか」

「へ、急にどうしてです?」

「いや、ね。主ならまだしも今回、天ヶ上さんも参加することになった。問題はその天ヶ上さんさ」

「は、はぁ……」


 要領を得ない大ヶ島の回答に男性はちんぷんかんぷんといった顔つきになる。そんな男性の前で大ヶ島は笑顔を浮かべながら、椅子に深くもたれた。


「君はさ、さっきの話を聞いて天ヶ上さんについてどう思った?」

「……あまり好感は持てない人物、と」

「だろうね、今の僕だってそうだ。そんな人間が神様に頼み込んでもし第五の人間に会ったとする。そうなるとさ、彼の取り巻きみたくなるか嫌悪するかなんだよね」

「まぁ、そうでしょうね」

「今回のことでこちらも協力を、なんて言い出したらその時にこっちまで巻き添えにされそうだ」

「ですが、手伝わないというのも体裁が悪いのでは……」

「それはそうなのだけれどね。上の人は何て言っているの?」


 弱々しく意見する男性に大ヶ島は頷きながらもそう尋ねた。ホラビルにおける上の人、使者の男性は『第四工房』に来る前に言われた言葉をなるべく忠実に再現しようと丁寧に話す。


「最低限、協力はしろ、と」

「最低限、ね。これまでどおりは手伝うけど、それ以上深入りはしない。それなら最低限協力していることにはなるのではないかな?」

「相談して見ないと分かりません」

「そうか、それじゃあそう伝えてくれるかな? 彼らも天ヶ上さんの人となりは知っているだろうし、反対はしないと思うよ。……いや、僕が直接赴いたほうが良いか」

「そうしていただければ」


 考え直すようにして呟く大ヶ島の言葉に男性が頷く。それならば、と大ヶ島は席を立った。まだ日は明るい、今からでも向かえば今日の夜、もしくは明日にでも話し合うことが出来るだろう。


「それじゃあ用意をするから、君は部屋の外で待っていてくれるかい?」

「はい、分かりました」


 そう言って男性は一礼すると、くるりと踵を返して書斎を出て行く。後ろ手に扉を閉めた音が、大ヶ島しかいない部屋に響く。

 さてさて準備だと、書斎の中を見渡した。あちらに持っていかなければいけないものは、とそう思しきものを手に取りアイテムボックスへと入れていく。秋人が『第五遊技場』へ向かった後、FSGの体験者が言ったのだ。ステータスがあるのならばアイテムボックスもあるのではないかと。実際その予測は正解していた。


「便利なものだなぁ、アイテムボックスとは」


 あらかたのものを入れ終えてから大ヶ島はそう呟く。今では以前の世界から来た大ヶ島達にとって半ば常識みたいなものとなったアイテムボックス、その利便性は使い始めて実感できた。

 それにしても、と大ヶ島はアイテムボックスから取り出した外套を羽織ながら真剣な顔つきになる。

 『第二図書館』が何故勇者を引き入れようと考えたのか。引き入れやすいとはいえ、その理由が不透明である。


(裏をかかれるのは御免だし……第二の主は何を考えているのだろうね)


 そんなことを考えつつ外套を着終えた大ヶ島は部屋を出る。ぱたん、と窓から陽が差し込む誰もいない部屋に扉を閉める音が小さく響いた。




     □     □




 オーライト魔法学園、その学園内にある奥へと伸びる廊下は魔法石の灯りでぼんやりと照らされていた。 

 その廊下の最も奥にある重厚な両開きの扉の向こう、シックな造りの書斎には岩久良が深く椅子に腰掛けて本を読んでいた。持っている本は五大祭の頃に見つけた『第五遊技場』についての手がかりが載った本である。


「やはり、交渉に関してはヒントは無いか……」


 小さくぼやいて机の上に本を置く。そして小さくため息を吐きながら目頭を揉んだ。第五の主探しは順調ではない、はっきり言って手詰まりである。

 だからこそつい最近、新しい案を取ったのだが。


「天ヶ上君ならば……」


 深々とため息を吐きながらそう呟く。新しくとった案は先程、第四のいるホラビルへと伝えているのだ。彼らはどう考えただろうか。

 思い浮かべるのはアグレナスにいる勇者へと、第五の主探しへの協力に申し出に行った時のことだ。闘技大会以来である天ヶ上は、今まで通りである。こちらの世界に来て知った彼のままだった。


「樹沢君は随分と成長していたようだが」


 その時に出会った樹沢のことを思い出し、思わず笑みを浮かべる。その微笑は成長する生徒を見る教育者のそれだ。こちらの世界に来て樹沢はどうやら良い方面へと成長したらしい、樹沢と言葉を交わした時間は短かったけれども十分それを感じられた。

 けれど、と岩久良の思考は最初に思い浮かんでいた少年へと移る。仕方ないのだ、勇者としてというよりも天ヶ上という人間が必要だった。

 アグレナスに第五の主が渡りかねない、安易な考えかもしれなくても。


「人に、特に女性に好かれやすい彼ならば……」


 決して人たらしなどとは言わない。それは今違っていても彼が生徒であったためか、良心か、そればっかりは岩久良には分からない。

 これまで接触してきた神の中には女神もいる。天ヶ上なら自身よりも好かれやすいだろう。現に彼が来てそれまで堅物だった学園の女教師、女生徒がころりと彼になびいているのは学園内の噂にもなっている。


「早く『第五遊技場』を、その主を見つけなければ……主が集まる会議も近い」


 それまでに天ヶ上と女神を会わせてどうにかたらしこんでもらわなければ。今日も協力すると彼は申し出ている、そろそろその時間だ。今日彼に合わせる女神は誰にしようか。第五の主には嫌われるかもしれないが、そもそも会わなければ意味がない。

 そんなことを考えながら険しい顔つきのまま岩久良は立ち上がる。天ヶ上の機嫌を損ねてはならない、それで会わないなどと言ってもらっては困るのだ。出迎えなくては。

 その時、扉をノックする音が響いた。


「どうぞ」

「失礼します、岩久良様」


 入ってきたのは体にフィットした服を着る女性であった。横に長く伸びている耳からエルフであることが分かる、肩口ほどで切りそろえられた髪の目元涼やかな人物である。


「エベラ、そろそろ時間か」

「はい、岩久良様。十分後にあいつらが来る予定です」

「あいつらではなく、天ヶ上達なのだが」

「井の中の蛙、群れる蛾という表現であるならば変えますが?」

「いや、今のままでいい」

「そうですか。では、参りましょうか」

「ああ」


 無表情のまま言う女性――エベラに岩久良はため息を吐きながらも彼女の後をついて書斎を出て行った。




     □     □




「第二、第四での怪しい行動があるのですが……聞いていますか、早瀬様」

「むぅ~、そんなこと私に言われても困るじゃん……。あぁ、もう! 闘技場で戦いたい!」

「早瀬様、落ち着いてください……ぬいぐるみで遊んでいないで」

「えぇ~、キシャールが買ってきたんじゃない」

「確かに早瀬様のためにと買ってきましたが……」


 明るいクリーム色でまとめられている落ち着いた雰囲気の部屋で『第一闘技場』の主――早瀬優はホロホルを模したぬいぐるみを抱きながらソファーの上で寝転んでいた。そんな彼女にソファーの傍で呆れた目を向ける男性――キシャールは小さくため息を吐いた。

 少し長い黒髪を後ろで一つにまとめている、気苦労の多そうな男性である。何よりの特徴が頭の横から伸びる角と浅黒い肌、そして額に刻まれている魔族だと示す紋章だ。

 キシャールは疲れの残る視線を手元にある書類へと向ける。そこに書かれているのはつい最近調べた『第二図書館』と『第四工房』の動向だ。彼らが何を考えているのか。どちらにせよ主が二人動いている事態である、小さな規模のものではないだろう。


「謀略が得意になって欲しいというのではありません。せめて彼らが何を企んでいるのかはっきりさせないと……」

「いいじゃない、別に。何を考えていようが」

「そう言うわけにはいきませんよ……」


 キシャールの言葉に早瀬はぬいぐるみをつつきながら答える。どうしたものか、キシャールは情けない顔になりながら再びため息を吐いた。そして頭をぽりぽりとかきながら書類とにらめっこをし始める。

 そんなキシャールをちらりと横目で見た早瀬は、キシャールと正面から向かい合うように座るとにかっと笑みを浮かべた。


「何か起こったとしても、オブリナントと『第一闘技場』は守る、絶対に」

「その心意気は理解していますが、それだけではねぇ……」

「だからその頭脳面はあなたに任せているんじゃない。頼んだわよ、キシャール。力が必要なら私を呼びなさい」

「はぁ……分かりましたよ。いざとなればよろしくお願いしますよ、早瀬様」

「もっちろん!」


 苦笑を浮かべるキシャールの言葉に早瀬は笑みを浮かべたまま大きく一つ頷いた。

 それでは、とキシャールは持っていた書類をぺらぺらと捲ると途中でその手を止める。そこに書かれているのは近頃、『第一闘技場』にいる魔獣の動向がちらほらとおかしいところがあるというものだった。


「この案件は『第一闘技場』も関わりがあるので、協力してくださいよ。早瀬様?」

「ぐぬぬ……言った手前だもんね。分かったわよぉ」


 にやりと笑みを浮かべたキシャールの言葉に唇を尖らせながら答える早瀬。

 窓から闘技場で行われている試合の歓声が部屋に流れ込んでくる中、二人はその案件について話し合いを進めていった。




     □     □




 街に横たわる十字の大通りには様々な種類の店が立ち並び、昼間近の今頃は活気に満ちている。『第三商店街』の有する様々な店を、ゲートから来た人々は楽しげな顔で見たり入っていた。

 そんな『第三商店街』の中心、十字の交わっている部分に『第三商店街』の主が住む館があった。

 三階建て、石造りの建物である。一階は大きな商店となっており、『第三商店街』の中でも選りすぐりのものが置かれていた。

 そんな館の三階に『第三商店街』の主である深山匡子(みやまきょうこ)が書斎兼自室で紅茶を飲んでいた。艶やかな黒髪を一つにまとめており、髪結い紐の赤が映えている。笑う様は上品なのだが、どこか狡賢い印象を受ける笑みだ。

 すぐ傍にはメイド服を着た幼い少女が控えている。赤茶のボブヘアの少女はくりくりとした目を向けている。愛らしい少女だがそれ以上に背中から生えている妖精のような羽が目を引くように陽を受けて透き通っていた。


「さてっと……話なのだけれど、第二と第四が不穏な動きをしているというのは本当なのかしらねぇ?」

「本当みたいですよぉ? 何をしているかまではわかりませんけどねぇ?」

「いえいえ、何か動いていると分かっただけでも上々よ。よくやったわ、ミヨンネ」

「えへへ~」


 幼い少女――ミヨンネは深山に褒められ照れたように笑う。そんな彼女の様子に深山は微笑ましく思いながら、手元の書類に視線を落とした。

 そこに書かれているのはミヨンネの集めた情報である。あの自分と同じように腹の底が黒い第四の主が不穏な動きをしているとミヨンネが調べることができた。隠しても調べられれば察知されてしまうほど、大きな動きを要するものなのだろう。


「今回のことに関して、カリオ魔国から話があるそうですよぉ」

「でしょうねぇ。ミヨンネ、すぐに出かける準備をするわ」

「了解です!」


 ミヨンネは元気良く答えるとあれこれと持っていくものを選び始める。深山は自身もと席を立ちながらにやり、と笑みを浮かべた。


「今回のこと、利益が出ることなら良いのだけれどねぇ」

「どうしました、匡子様?」

「何でもないわ」


 ささやくように言葉を呟く深山に不思議そうな顔を向けるミヨンネ。そんな彼女に深山はそう言いながらも口元の笑みはそのまま、瞳は笑うことなく窓の外を見据えていた。


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