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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第一章
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第3話〜城、そして再び〜

大体の世界の説明回です

 視界が白一色からだんだんと色を帯びる。足元には巨大な魔方陣。フロワリーテが言っていた魔方陣とはこのことだろう。あたりを見回してみる。どうやらここは厳かな神殿といったところか。

 誰もが神殿と聞いて頭に思い浮かべる典型的な内装だ。あたりには俺達を囲むように、円陣になっている神官らしき人たち。さらにその外側を囲うように並ぶ鎧を着た兵士が立ち並ぶ。

 そして俺達の目の前、もっと具体的に言うのなら天ヶ上率いる五人組、ってめんどくさい。長い、これからはハーレム組と呼ぼう、そうしよう。そのハーレム組の前に豪奢なドレスを着た少女とその横には明らかにあたりのよりも位が上だとわかる神官(この場合司祭と言うのだろうか)、二人の後ろには二名、白を基調とした鎧の人物がたっていた。

 辺りを観察していると豪奢なドレスを着た少女と、司祭らしき人、そして二名の白い鎧の兵士がこちらへと近づいてきた。


「ようこそアグレナス王国へいらっしゃいました、勇者様方。私はアグレナス王国第一王女、シェルマ=アグレナスと申します」


 優雅に一礼する第一王女。その容姿に俺とハーレムを除く周りのクラスの男子が見惚れる。

 それもそうだろう。金糸のように光を受けて輝く腰ほどまでに長い髪。瞳はエメラルドのような翠色の瞳で肌もきれい。スタイルだってもちろん抜群だ。目の前には絵に描いたようなお姫様が存在した。


「はじめまして、僕の名前は天ヶ上勇気です」

「橘真由です!」

「緋之宮陽菜といいます」

「小峰理沙……です」

「樹沢藤二って言うっす!」


 挨拶を返すハーレム組。それに続いてクラスのみんなが簡単に自己紹介をする。って、次は俺の番か。でも、俺の目つきってこっちでも効いてしまうのだろうか。……少々不安だ。


「どうも、神楽嶋秋人です」


 ペコリと一礼して挨拶をする。ちらりと第一王女の顔を見ると少し顔をしかめさせていた。他三人もである。どうやら俺の目つきはこちらでも有効らしい。……悲しくなってきた。


「それでは皆様、王である父の元へとご案内いたします。」


 そう言って先導する第一王女と司祭。白い鎧の兵士は司祭と第一王女を挟むようにして歩いている。俺達はその後に続いていくのだが、ハーレム組は第一王女と司祭と楽しげに話している。特に天ヶ上と第一王女。……いい加減第一王女ってのはやめたほうがいいだろうか。なんだか名前を忘れかねん。でも初対面だしな~……。


「天ヶ上様は本当にかっこいいですわね。勇者の中の勇者、と言っても過言では無いように思えます」

「いえ、そんなことはありません。僕からすればシェルマ王女のほうがお美しいです」

「そうっすよ、俺もそう思います!」


 にっこりと微笑みを浮かべる天ヶ上と賛同する樹沢。でたよ、天ヶ上のキラースマイル。ほら、第一王女が頬を染めていらっしゃる。周りの女子三人はそれをつまらなさそうに見ている。

 第一王女は立場上あれに似たセリフは何回も言われ、本心かどうかなんて相手を見てわかることだろう。しかし、天ヶ上は本心から言うのだ。だから、あんな反応をしたのだろう。


「天ヶ上様、私のことはシェルマとお呼びください。あとは敬語も……」


 頬を染めて両手を胸の前で組み天ヶ上に言う第一王女。天ヶ上は微笑みながらうなずく。

「わかった、シェルマ。だったら僕のことは勇気と呼んでよ」

「はい、勇気様!」


 第一王女、ハーレム入りのご様子。周りの女子三人はライバルが増えたことに少し苦々しげな表情である。

 天ヶ上、樹沢、第一王女の三人は仲良く談笑している中に三人は無理やり入っていく。勝手にやってろハーレムども。俺に迷惑だけはかけてくれるなよ?あ、でも前の世界と同様ありもしないことで注意とかしてきたらどうしよう。ハーレムには第一王女もいるから、俺確実に不利になるな。……そんなことが無いように上手く立ち回らねば。

 どのように上手く立ち回るか考えていると目的地に着いたようだ。目の前には巨大な扉。その扉を白い鎧の兵士二人が開ける。

 巨大な扉をくぐると広大な空間に出た。扉からまっすぐに王の座る玉座へとつながる赤いカーペット。カーペットの向かって左側には鎧を着た兵士達。白い鎧だから、さっきの二人と同じ所属だろうか。右側には貴族然とした人たち。ま、本物の貴族なのだろう。

 そして数段の段差があり、その先に玉座に座った王様。厳然とした雰囲気に白いひげを蓄えている男性だ。

 俺達はそんな中を突き進み、玉座の前につくと第一王女は一歩前に歩み出る。目の前の司祭は片ひざをつき、頭をたれる。礼儀作法なのだろう……っと俺もやらなければ。


「お父様、勇者様方をお連れしました」

「うむ、ご苦労だった、シェルマ。さて、司祭。予定通り勇者様方を召喚できたのだな」

「はい、ご覧のとおりに。」


 第一王女の呼びかけにひとつうなずいた王は、司祭に話を振る。目の前に俺たちがいるのだからそんなこと聞かなくてもわかるのでは?いや、人数とかあらかじめ決めておいた条件通りに、という意味だろうか。

 王の問い掛けに大仰に答える司祭。それに満足気な顔を浮かべた王はこちらへと顔を向ける。


「ようこそ、アグレナス王国へ。我の名前はアウルフリード=アグレナス。見ての通りこの国の王である」

「初めまして。僕の名前は天ヶ上勇気と申します」


 王の自己紹介に答えた天ヶ上は自己紹介をして一礼する。それに続き俺たちも挨拶をする。もちろん、ここでも俺の目つきの効果は発揮された。その様子は第一王女のときと同じである。説明しなくてもいいだろ?というか、説明しているとへこみそうだ……もう仕方のないことなのだが。俺たちが自己紹介をしている姿を見たあたりの貴族やら兵士やらが何やら小声で話している。


「天ヶ上様という御方はなんと礼儀正しいことでしょう。異世界からのときいて不安に思っていましたが、彼はまさしく勇者といった感じですわ」

「そうですわね、彼の後ろにいる四人の方もなかなか良い方のようですし」

「あの四人にでも取り入れば、王に良い印象を持たれるに違いない」

「それに比べて、あの最後の方。眠そうにして。王の前だというのに失礼な」

「奴ばかりは好きになれませんな」


 天ヶ上は絶賛されている。あ、ちなみに「最後の方」ってのは俺だな、最後に挨拶したし。というか俺はこれが普通なんだよ。いや、ま、そんなこと言いませんけどね。相手貴族だし、召喚されてしょっぱなに厄介ごとを引き起こしたら後がどうなるか……。

 後ろのざわめきを無視して王が話を再開した。


「では、召喚した理由を話してもよいかの?」

「はい」


 王の問いに天ヶ上が答える。


「召喚した理由は、この世界の成り立ちにかかわっておっての。この世界は我々が今いる世界、『アトレナス』を中心にすえ、それを取り囲むように五つの力ある世界が存在するのだ。五角形を想像してくれ。その中心にこの『アトレナス』があると考え、五角形の頂点がその世界と考えてくれればよい。詳しいことは明日話すが、その五つの世界は一つの世界に一人の主をもって成り立っておる。その主がいなければその世界への出入りもできず、中心の『アトレナス』も発展できぬのだ」


 王の説明を聞くに、どうやらこの世界『アトレナス』の力は回りにある五つの世界に依存している。五つの世界の力のほうが『アトレナス』よりも強いのだろう。

 しかし、「FSG」にこんな設定は無かったはずだ。「FSG」では『アトレナス』のみが出てきて、冒険者となりさまざまなフリークエスト、イベントをこなしていくというのが大まかな流れだった。似ているといっても世界観が異なるのだろうか。だったら、どこまで「FSG」に似ているのか、調べてみたほうがいいだろう。

 俺がそんなことを考えている間にも王は憂いを帯びた顔で話を続ける。


「今現在、五つの世界の主は存在しておらん。各国も自分の国にいないものかと探したのだが存在しなかった。と、そこでだ」


 話をさえぎって王は司祭の方を見る。司祭はひとつうなずくと立ち上がり、こちらを向いて話し始めた。


「我等が神からのお告げで五つの世界の主は異世界にいると知ったのです。ちなみにこのことはどの国でも知っています。各国に神殿がありますからな。そして、さっそく古来から伝わる勇者召喚の儀を執り行ったのです」

「ちょっと聞いてもいいかしら」


 手を挙げながら緋之宮が尋ねると王はそちらへと顔を向ける。


「うむ、なんだ」

「どうしてこんなにも人数が多いのかしら。勇者といったら二、三人ぐらいだとおもうのだけど」

「む、それか……」


 王は緋之宮の質問に少し気まずげな表情を浮かべる。何か後ろめたいことがあるのだろう、一体なんだろうか?


「確かに今まで二、三人の勇者様方を召喚してきた。しかし、特定の五人を召喚するのに、ちょうど五人召喚して大丈夫ではないかと思ってな。もしかしたら一人も召喚できないかもしれないし、五人中四人や三人になるかもしれん。それなら人数を多くして少しでも確率を上げたいと思ったのだ。しかし、人数を多くするといっても我がアグレナス王国では四十二人が限度であるから限界の四十二人を召喚することになったのだ」


 ようは数撃ちゃ当たるというものか。その五つの世界の主はいいかもしれないがその他の人たちはただ巻き込まれただけということになる。百人を超える巻き込まれとは、なんとも盛大である。


「事情は分かりました。では、これからこの中の誰がその主なのか探すのですか」

「いや、今日はもう遅い。勇者様方も疲れていらっしゃるだろうし、明日にするとしよう。部屋へと案内し今日は休んでくれ。湯食は使用人に部屋へともっていかせる」


 緋之宮の問いに答える王。俺たちが召喚されたときは朝だったがどうやらこちらでは夜のようだ。玉座の間の窓からはすでに暗くなった空がうかがえる。


「お気遣いいただきありがとうございます」


 天ヶ上が微笑みながら答えると、王と第一王女が笑みを浮かべる。主人公補正でよく見えるのですか、そうですか。……別に拗ねてないからな?本当だぞ?

 こちらですとメイドがやってきて俺達を先導する。俺達は黙ってそれについていく。たしかに異世界召喚とか世界の説明とかされて色々疲れた。身体的にではなく精神的に。長い廊下を歩き、それぞれの部屋へと案内される。こちらの世界の人の部屋はなく、一人一部屋へと割り振られる。

 俺は一番最後に部屋へと通される。部屋はどこぞの金持ち(まぁ、王様だから金持ちであっているのだが)が泊まるような豪華なホテルの一室のようである。風呂、トイレ完備、洗面所?らしきものもある。ただ、少し違うのは蛇口とかがなく、壁など近くに魔法陣が描かれているところだろう。


「休むっていってもな……」


 あらかた見て回った俺はベッドに腰掛けつぶやく。知らない世界ということもあって疲れてはいるが眠る気が起きない。知らない世界という事実から気がまだ張っているんだと思う。


「といっても……寝ないわけにはいかないよな。ますますつらくなる」


 起きていても翌日に疲労がたまるだけだ。そう考え、俺はベッドに横になり目を閉じた。


「――――て――――さい。おき――――」

「おき――――か」


 ん、あれ?俺はいつの間に寝たんだ?というか、誰かが俺に話しかけている?


「誰だ……?」


 起き上がりながら、声のしたほうを見る。そこには見知った顔と知らない顔。




「お久しぶりです、神楽嶋様。といっても先ほどぶり、がふさわしい気もしますね」

「私は初めましてだな、神楽嶋秋人」


 フロワリーテと見知らぬ男性が、月の光を浴びながらそこに立っていた。

やっと異世界です。

フロワリーテは最初は再登場の予定はありませんでした。ですが、変更して再登場となりました。

理由は・・・何でしょうね。あの展開でつなぎやすかったのです、あのおわりが。次回で出てきて、それ以降も出るのかはまだ決めていません。

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