表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第二章
35/104

第33話~終了、そして祝い~

 通路の修理を終えた頃にはモニターのある広場へ戻るのに丁度良い時間となっていた。近くで売られていたフランクフルト、そしてちょっとしたものを買い、食いながらロルと共に急いで広場へと向かう。もうね、腹に何か入れておかないときついんだよ……。

 モニターのある広場に近づくほどに熱狂的な歓声と武器がぶつかり合う音が聞こえてくる。暫く歩いて視界が開け広場に出たと思った瞬間、今まで聞こえていた歓声と熱気が直接伝わって来た。

 モニターに映し出された選手二人へと四方八方から声援が送られている。飲み物や食べ物を片手に応援する客、興奮して身を乗り出しながら大きな声を張り上げている客もいた。

 先程とは違い声を遮るものが無いため直接伝わって来る声援は鼓膜を震わせ、思わず顔をしかめてしまうほどである。まぁ、盛況なら構わないんだが。


「今大会の優勝者、リリアラ選手に優勝賞品が贈られました!」


 従業員数名が待機している場所へ近づくと同時に、フラグ頭の男性がマイク越しに声をそう張り上げた。ってリリアラが優勝だと?

 思わずモニターを見上げてみると確かにリリアラが優勝者として賞品を受け取っていた。というか二位のところにいるのはルルアラじゃないか!

 リリアラとルルアラ、双子揃ってワンツーフィニッシュとは……。優勝できるだろうとは思っていたが実際にこう目の前でその結果を見ると感嘆してしまう。いや、二人ともすごい。

 そんなことを考えている間にも二位のルルアラも賞品を受け取る。モニターを見るに優勝賞品が商売袋のようである。とりあえず目的は達成したわけだ。

 ちらりと商売袋の持ち主である商売の神を見ると、ほっと安堵していた。

 それにしても決勝はリリアラとルルアラの対決だったのだろう。そう考えると見てみたかったな、その試合。くそう、修理さえなければ見れたのに。

 悔しく思っているとフラグ頭の男性がマイクを持ってこちらへと向かってくる。おっと、俺の番だな次は。

 マイクをフラグ頭の男性から渡されて、入れ替わるように先程彼がいた場所へと出る。周囲の観客は試合が終わってある程度落ち着いているものの、まだ余韻があるのか興奮冷めやらないといった客もいる。

 いつも通りに営業スマイルを浮かべて、周囲の観客を見渡すように最後の締めを始めた。


「皆さん、楽しんでいただけたでしょうか? 本日の『第一闘技場』主催闘技大会はこれにて閉幕でございます! 見てくださった皆様、ありがとうございました!」


 そう言うと拍手をする客、満足そうな顔で帰る仕度を始める客と様々である。まだまだ締めは続く。


「『第五遊技場』主催の催し物は五大祭最後の日に行われます! 皆様、是非いらっしゃってください! それでは皆様、ここで失礼いたします。お帰りの際は忘れ物が無いよう、お気を付けください」


 そう言い切って一礼すると再び拍手が向けられた。まだ慣れていないんだよな、これ。

 その考えは心に留め、笑顔を浮かべたまま元いた場所へと戻る。周囲の観客は最後の締めを聞き終えて、それぞれ一人やら集団やらで帰っていった。

 モニターでの『第一闘技場』主催闘技大会の実況は成功である。実況を担当したフラグ頭の男性に労いの言葉をかけ、後片付けを手伝う。まぁ、機材はそこまで無いからいいのだが。あとは商売の神に商売袋を返すだけである。

 ひとまず、目の前の片づけに集中するか。



 片づけを終え、時刻は閉園時間となっている。すでに辺りには従業員しかおらず、客の姿は見当たらない。昼間の騒がしさとは打って変わって、暗く静かな遊技場が目の前に広がっていた。

 暗くて静かだと、これまた一種の不気味さを感じるよな、遊技場って。慣れればそれほどでもないんだが。

 片づけの間、リリアラとルルアラの姿を見ることは無かった。持ち主に返さないということは無いと思うので返しているのか、それとも賞品をもらった後に何かしらあったのだろうか。

 気にはなるものの仕事を放っておくわけにはいかないため片づけに集中していた。


「ロル、もうそろそろ時間だ。リリアラとルルアラの二人を探そうか」

「ピニョ!」


 同じように片づけを手伝っていたロルにそう声をかけると、ロルは大きく頷きながら一声鳴いた。

 客のいない寂しい通りをロルと共にリリアラとルルアラを探しながら歩く。周りにあるアトラクションや店はまだ灯りが灯っているいるものの、開いているわけではなく店じまいをしていた。すでに店じまいを終えたものは灯りも灯っていない。

 リリアラとルルアラは<レーダー>で見る限りどうやら遊技場内にいないらしい。ならば外に出るか。

 次々に灯りが消えていくのを見ながら、客がいないのを確認しながら歩いていると入場門前へとたどり着いた。ロルに少し待っているように言って、閉ざされた入場門へと向う。

 ポケットから鍵束を取り出して、そのうちの一つを鍵穴に差し込み回すと小さな金属音と共に鍵がかかった。これでよし、と。

 ロルの元へと戻り、脇にある従業員専用の扉から外に出る。おっと、そういえば忘れていた。


「ちょっと待ってくれるか、ロル」

「ピ?」


 足を止めてポケットから二つの髪飾りを取り出す。フランクフルトを買う際に買っておいたものだ。

 下でロルが不思議そうな顔でこちらを見ているのをよそに、アイテムボックスから細工用の道具を取り出して<錬金>を使って髪飾りに細工を施す。魔法陣を刻むぐらいならすぐにできる。

 リリアラとルルアラには行く前に武器を送ったのだが、優勝したのだからお祝いを上げるのもいいだろう。……女性に武器、と言うのが今思うとなんだかなぁと思ったのもあるが。

 花弁が五枚の白い花を模した髪飾りは、細工を施すと色が白から青へと変わった。これでよしと。髪飾りをアイテムボックスに戻すと、ロルに待ってくれていた礼を述べる。


「秋人、様!」


 歩き出そうとすると後ろから聞き馴染みのある声をかけられた。声のした方向へ振り向くと、そこにはリリアラとルルアラの姿がある。どうやら戻ってきていたらしい。

 返事をするように手を振ると、二人は同じく手を振りながらこちらへと駆け寄ってきた。プレゼントは今……いや、家についてからでいいか。


「ただいま、戻り、ました」

「ただいま戻ったのです」

「二人ともお帰り。あ、商売袋は?」


 俺の問いに二人は心配しなくても良いといった笑みを浮かべる。


「すでに返してあるのです」

「そうか、それなら良かった」


 目的は商売袋を取り戻すことだからな、持ち主に返すことが出来たのならそれで良い。

 大会優勝を誉めると二人は嬉しそうにその時の出来事を話す。と言ってもほとんどがお互いが対戦した決勝の話なのだが。他の参加者について聞いてみてもあまり印象は残らなかったという。……さいですか。

 歩きながら二人に挟まれるようにして大会の話を聞いていたのだが、ふと思い出したようにルルアラが「あ」と声を上げた。


「どうした、ルルアラ?」

「そういえば大会に勇者がいたのです」

「勇者!?」


 思わず大きな声を上げてしまう。いや、だって勇者だろ?俺が知っている勇者はあのハーレム組だ。他の国で勇者が出たのなら分からないが、その言葉を聞いて思いつくのはあまり会いたくない彼らの顔である。

 俺は顔が少し引きつるのを感じながら、二人に尋ねた。


「勇者ってもしかして天ヶ上だとかそういうやつか?」

「確か、そんな、名前でした。男性一人に、勇者やその他の女性が数名。身分の高い女性も、いましたね」


 リリアラの返答で確信する、勇者は天ヶ上だ。加えてハーレムメンバーもいたらしい。もしかして第一王女もいたりしたのか?

 しかし勇者と言うには樹沢が足りない。いつも五人組だったので彼もいるのではと思ったのだがいなかったのか、珍しいな。

 妙に二人が黙っているので気なってちらりと横目に様子を伺うとどちらも少しばかり顔をしかめさせていた。どうやら勇者の話題はあまり面白くないものらしい。それならばあまり触れないほうがいいだろう。

 それからは勇者の話題を避けて、二人の闘技大会の話を聞いた。決勝は良い試合が出来たらしく、とても満足そうである。何と言うか決勝での話をしている二人は良いライバル同士という感じがするな。身近であることも加えて、互いの実力が近いというのも関係しているのだろうか。

 それからは二人の話に相槌を打ちながら、リリアラ、ルルアラ、そしてロルと共に仮の家へと戻っていった。




「お戻りになられましたか、秋人様。おや、リリアラとルルアラも戻ったのですな」

「ただいま戻ったのです」

「ただいま、戻り、ました」


 仮の家の玄関前まで来ると、ドアを開けたジェラルドさんとばったり会った。どうやらそろそろ帰って来るだろうと玄関前に出たらしい。

 ジェラルドさんに駆け寄り二人が帰りの挨拶をすると、孫を見るような微笑みを浮かべてジェラルドさんは二人の頭を撫でた。


「疲れたでしょうから、二人は部屋で休んでいなさい。夕飯が出来たら呼ぶからの」

「はい、なのです」

「わかり、ました」


 撫でていた手を下ろしてジェラルドさんがそう言うと二人は頷いて開けられたドアをくぐり部屋へと戻っていった。途中、料理のおいしそうな匂いに足を止めかけるも、疲れていたのかすぐに部屋へと足を運ぶ。

 その様子を見ていたジェラルドさんは視線をこちらへと移した。何だろうか。


「秋人様、今回二人は仕事とはいえ優勝、準優勝しましたな」

「そうですね。一応、お祝いの品を買ったのですが」


 そう言いながらアイテムボックスから二つの花の髪飾りを取り出す。しまった、この流れなら先程渡しておけば良かった。それを見たジェラルドさんはさらに笑みを深くした。


「丁度良かったです。我々も二人にお祝いにと料理や贈り物を用意していたのですよ」

「え、でも、そんな予定はしていませんでしたよね」

「えぇ、しかし誰もがそう考えていたようですよ。オルブフはプレゼント、リアナは豪勢料理と用意しています。私も少々プレゼントを」


 ジェラルドさんの言葉にへぇ、と思わず声が出てしまう。俺だけじゃなかったんだな、優勝祝いを二人に贈ろうと考えたのは。

 全員が二人の結果を祝おうと考えていたことに驚きながらも、どこか胸の内では感動している。二人がそれほど周りから慕われているという証である。

 髪飾りをアイテムボックス戻し、二人を夕飯だと呼んでリビングに入った時に祝いの言葉と共に渡そうと決めながらジェラルドさんと一緒にドアをくぐり中に入る。中は外とは打って変わって暖かく、冷えた体にその暖かさが染みとおる。

 台所から匂ってきた料理はいつもとはどこか違っていて、リリアラとルルアラの二人が一瞬足を止めたのも分かる。なんというか、誕生日やら誰かを祝う際に作る料理というのはいつもとは違った感じがするよな。匂いも、加えてキッチンの様子も。

 リビングに入ると、台所で忙しなく料理を作っているリアナとそれを手伝うオルブフの姿があった。それなら俺も手伝うか。

 俺とジェラルドさんも加わって、祝いの料理作りは進んだ。ちなみにロルは二人がこちらへと来ないようにリビングから各部屋へと向かう通路で見張り中である。





 暫くの間料理を作り、ようやく完成した。呼びに行くのは俺らしい。オルブフは料理ができ次第プレゼントの品を取りに行った。

 女子部屋の前に立ち、簡素な木製のドアを二回ノックする。


「リリアラ、ルルアラ、料理が出来たぞ」


 そう呼びかけると中から「はい」と二人の声がしたかと思うと、ドアが静かに開けられた。ドアを開けたのはリリアラ、その後ろにルルアラがいる。


「今、行き、ます」

「もうお腹ぺこぺこなのです」


 リリアラが出た後に部屋から出たルルアラがそう言うと、リリアラも少し笑みをルルアラに向けながら「そうだね」と賛同する。まぁ、いつもより豪勢であるがゆえに少し時間がかかってしまったかもしれないが、その分満足できる料理にはなっていると思う。ここで言うわけにはいかないが。

 余程腹が減ったのか、二人は先にリビングへと向かう。後を追うようにして俺もリビングへと向かった。

 リビングへと入った二人は足を止める。目の前のテーブルには少し黄色っぽいポテトサラダもどきはもちろん、鳥型魔獣の丸焼き、オレンジっぽいコーンスープ、そしてリリアラとルルアラの席には白い生クリームを使ったケーキなどが並べられていた。祝いの際によく見られる料理の数々はどれもがおいしそうである。

 驚く二人を避け、リリアラとルルアラを迎えるようにして立っている皆の元へと向かう。リアナはこの料理が祝いであるため手には何も持っていないが、後ろへと回されたオルブフとジェラルドさんの手にはどちらも二人へ贈る綺麗に包装されたプレゼントがあった。 

 

「えっと、これは、一体……」

「何なのです?」


 いまだ戸惑う二人の小さな声は戸惑いが強い。説明を求めるように右往左往する二人の視線が自然と俺の方へと向けられる。


「これは二人のお祝いのために皆で用意したんだよ」


 笑顔でそう言うとぽかんと呆気にとられた顔をする二人。しかしそれは長くは続かず、口元が緩み始める。

 緩んだ口元を引き締めようとしても中々できていない二人の顔は、嬉しいような恥ずかしいようなといった風だ。照れているのだろう、少し顔が赤い。

 その時、横から肘でつつかれる。つつかれた方向を見るとオルブフが笑みを浮かべながら合図を送ってきた。ジェラルドさんやリアナも見てみると、同じように笑みを浮かべている。

 俺は再び視線をリリアラとルルアラに向けて、笑みを浮かべた。


「優勝、準優勝おめでとう、二人共」


 俺の言葉に続くようにジェラルドさんやオルブフ、リアナが口々に祝いの言葉を贈る。ロルも祝う様に明るく鳴いた。そしてそれぞれラッピングしたプレゼントを二人に贈った。俺もアイテムボックスから料理を終えた後にラッピングした花の髪飾りを贈る。

 プレゼントを贈り終えたら食事だ。今日は二人が主役なので並んで座り、二人が座ったのを確認して俺達が座る。

 そこからはいつもよりはちょっと豪勢な食事の光景だ。リリアラとルルアラの皿に食事を盛ったり、二人の闘技大会の話を聞いたりなどして終始盛り上がる。

 作った料理はおいしいのだが、誰かを祝う為に作られた料理と言うのはそれだけでも特別に感じた。


 夜に繰り広げられる祝いの席、灯りに照らされた主役であるリリアラとルルアラの顔には恥ずかしいけれどそれ以上に嬉しいといった表情を浮かべている。それを見ただけで、このお祝いをやって良かったと実感した。周りもそう思っているのか、微笑みを浮かべて祝いの料理をおいしそうに食べる二人を見守っていた。


 五大祭二日目は、リリアラとルルアラの楽しそうな笑顔と共に夜は更けていく。仮の家の中は心温まる、そんな空気で満ちていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ