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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第一章
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第19話~冒険者、そして終了~

 目の前には大剣を担ぐ男性、剣を腰にさげた女性、そして杖を持つ魔法士が立っていた。


「確か……グレイウルフの群れに襲われていた冒険者達ですか?」


 念のためにと俺の確かめるような声に、冒険者三人は肯定をうなずきで示した。

 ここで話すのはなんだからと、酒場の空席である四角テーブルに座る。俺の両脇にはリリアラとルルアラ、正面に三人組の冒険者という席順だ。

 『アトレナス』では成人は十八歳である。ギルドの酒場は冒険者になる年齢層が幅広いため入室制限はないが、十八歳未満の客に対しては飲酒などを行わせないようにしているのだ。だから俺もこうして席に座ることができるんだがな。

 席に座った冒険者達はさすがにこの時間から酒は飲まないのか、席にやってきた店員にお茶を頼んだ。俺もそれにするか。俺達三人も、冒険者達が頼んだのと同じお茶を頼む。


「改めて、先日は加勢してくれてありがとう。加えて素材も俺達がもらってしまって……」


 大剣を傍に置いた男性が、俺達に一礼をする。彼は加勢の際に、了承を得ようと最初に話かけた冒険者である。

 短く刈り込まれた茶髪の男性だ。冒険者らしい太い腕などの鍛えられた肉体は大剣を振るうのにふさわしいものだろう。人より鋭い焦げ茶の目には、感謝と申し訳なさが渦巻いていた。


「私からも、ありがとう」

「ありがとうございます」


 茶髪の男性に続いて、剣を机に立てかけた女性と杖を持つ男性が笑顔を浮かべて一礼する。

 女性は長く明るい茶髪を頭の高い位置で一括りにしている。いわばポニーテールだ。髪と同じ色の目はたれ目で優しそうな印象を受けた。対照的に身体は冒険者をしているだけあって引き締まっている。

 魔法士の男性はくすんだ金髪だ。青い瞳にはこちらへの感謝の念がこもっている。魔法士という職業柄だろう、大剣の男性と比べて線が細いように思う。


「いえいえ、助けることができてよかったですよ」


 感謝の言葉を述べた二人にそう返した。こうも感謝の意を示されると、少々照れ臭くなるな。あ、リリアラとルルアラを紹介しないとな。先程から誰だろうという視線が、目の前の冒険者から二人に向けられている。

 リリアラとルルアラを冒険者に紹介した。気のせいか周りの人達もこちらへと意識を向けている。まぁ、二人共美人だしな。

 その視線は無視して、目の前の冒険者達と話に花を咲かせる。


「あの後は魔獣に襲われることなく、護衛依頼をこなすことができた。……依頼主はホロホルに未練があるようだったが」


 大剣使いの冒険者の話に俺は苦笑を浮かべた。


「あはは、そうでしたか……。でもこうして無事依頼達成できたようでしたので良かったです」


 ここまで嬉しそうにしてくれるなら、俺も助けて良かったと純粋に思えるな。


「あ、そうだわ。」

「なんです?」


 女性剣士が突然声を上げた。一体何だろうか。


「彼らはホロホルのこと最初よりは執念が無いけど商機としてまだ狙っているから、注意してね。頭の上にいるそれ、ホロホルでしょ?」


 そう言った女性の視線は俺の頭上、ロルに向けられている。確かに女性剣士の言う通りロルはホロホルだ。

 しかし、まだホロホルを狙っているのか。まぁ、愛玩用としても扱われるし、宿の料理にも卵が使われていたことから食用としても需要はあるのだろう。

 人が所有しているホロホルには手を出さないとは思いたいが……対策を考えておくか。

 新しく考えるべきことができたことに少し嘆息すると、魔法士の男性が話しかけてきた。


「ところで君、魔法士なんだよね?」

「え?え、あ、はい」


 男性の言葉に少しばかり戸惑ってしまう。魔法は扱えるから魔法士でもあるが、刀を扱うから剣士、そして魔法陣を扱うから錬金術師と他にもあるがはっきりと定まっていない。

 ……まぁ、嘘ではないよな。魔法は扱えるから魔法士、うん、嘘はついてない。

 俺が戸惑ったように答えたのを、少々詰め寄って尋ねてしまったと思ったのだろうか。魔法士の男性はすまないと謝ってきた。彼には罪は無いので、気にしないように言っておく。


「それで、なんなら冒険者になってみたらいいんじゃないかな?」

「冒険者、ですか?」


 再び切り出した魔法士の男性に、疑問の声を上げる。なぜ冒険者になるよう薦められるのだろうか。気のせいか両脇に座るリリアラとルルアラが、魔法士の男性の言葉を聞いて少しばかり纏う空気を張り詰めさせたように感じる。傍にいなければ感じ取れないほどの、些細な変化だが。

 疑問に思う俺を残して、目の前では大剣使いの男性と女性剣士が肯定するように頷きあっていた。いや、当人を置いてけぼりにするなよ。


「あの、なんで冒険者を薦めるんですか?」


 俺の問いに魔法士の男性の意識が仲間の冒険者達からこちらへと戻される。


「あぁ、理由かい?それは初歩的な魔法を使っていたからまだ魔法士に成り立てだろうけど、戦い方も堂に入っていたし成長次第では強くなると思ってね」

「私達は前衛だし剣を使うから詳しくは分からないけど、成長すれば強くなるだろうとは思ったわ」

「あぁ、俺もだ」


 魔法士の言葉に女性剣士、大剣使いの男性が賛同の意を示した。どうやら加勢した時の戦いでそう見られたらしい。……別に魔法士に成り立てではないんだが。

 しかし、冒険者か。魔獣の素材を買い取ってもらう際、冒険者だと通常より融通がきくらしいが……。

 目の前の冒険者達にそれとなく聞いてみると、確かに融通がきくそうだ。しかし、冒険者になるなら守らなければならない規則があるとか。ま、一種の組織だからあって当然だよな。

 大まかなギルドの規則を聞いてみたのだが……うん、やはり無理だ。

 というのもギルドの規則には定期的に依頼を受けなければいけないということ、そして緊急時の際はギルドの指示に従わなければならないというものがあるのだ。

 次の休暇がいつになるか分からないし、主となる契約の際、『第五遊技場』を何より優先すると契約しているので無理だな。

 俺は答えを待っている男性の方へと視線を向けた。


「すいません。お気持ちは嬉しいのですが、遠慮させていただきます」

「え、なんでだい?仕事、もう就いているとか?」

「えぇ、まぁ」


 『第五遊技場』の主という仕事にな。


「冒険者として活動できる時間はとれないのかい?」

「はい」

「そうか……それは残念だ」

「すみません。気持ちだけ受け取っておきます」


 魔法士の男性は問答の末、残念そうな顔を浮かべる。申し訳ない気持ちがわいてしまうが……やはり無理なものは無理だ。

 心なしかリリアラとルルアラが俺の返答を聞いて安堵したような雰囲気を感じとる。もしかしたら俺が主をやめてしまうのではと危惧したのだろう。余計な心配をさせてしまったな。

 魔法士の男性と同様、他二人の冒険者も残念そうである。


「そうか……まぁ、仕方ないな」

「む~、残念ねぇ」


 大剣使いの男性は声に残念さをにじませているものの、仕方がないと苦笑を浮かべた。女性剣士はうつむきながら呟く。

 俺は彼らにも申し訳ないといった表情を浮かべて、先ほど魔法士に言ったようにすみませんと謝った。本人達には悪気はなかったようだし……。

 女性剣士は少しばかり重くなった空気を変えようと、話題を変えた。


「そういえばあなたのホロホル、いつから飼いはじめたの?」

「ちょうど皆さんと会った日ですよ。森の中で、卵が目の前で孵りまして」


 女性剣士の言葉にそう答えながら、頭の上のロルを優しくなでる。ロルは気持ちよさそうな鳴き声を上げた。

 一方、冒険者達は驚きの表情を浮かべている。一体何だろうか。


「ということは昨日拾ったということよね。その時はもっとサイズが小さかったでしょう?」

「そうですね」

「でも、今はかなり大きい……一日でホロホルってここまで成長するものだったかしら」


 どういうことだ?女性の呟きにも似た言葉に疑問を持つ。確かにロルの成長を感じたときはあったが、こういうものだと納得していたのだが……。

 確かめようと頭上のロルを手のひらの上へと移動させる。

 ……確かに大きくなっている。昨日は片手で支えられたのに、今では両手でやっと収まるほどの大きさだ。重さも大きさと比例して最初よりも重くなっている。

 成長していることは分かるが、それならば今は飛んだりするのだろうか。

 俺がロルをじっと見つめながらそんなことを考えていると、ロルが一回体を震わせた。次の瞬間、ロルは唐突にまだ産毛の抜けきっていない羽を広げた。


「ぬおっ?」

「ピニョピ~」

「飛んだ……?」


 目の前の光景に口を呆けたようにして俺はつぶやく。

 ロルは俺の手のひらの上から羽を羽ばたかせて飛んだかと思うと、俺の頭上へと戻っていった。飛び方は安定しており、着地の際も頭から誤って転げ落ちるなど失敗もない。


「本当に成長早いわよ……。飛ぶのはいいけど、その大きさとか。良い餌でもあげているのでしょうね」

「あはは……」


 にこやかな笑みの女性剣士に少し引きつった笑いをこぼしてしまう。やっているのは魔力なんだが……これは良い餌と言えるだろうか、よく分からん。

 しばらく、俺達は冒険者達と机を囲んで談笑した。





 冒険者達との談笑を楽しんだ後、彼らと別れる。現在俺達は、ギルドを出て屋台の並ぶ道を歩いていた。先程の冒険者との話から、念のためにロルにはハイドをかけてある。

 あの後、冒険者達は自身の冒険譚を話してくれた。彼らは冒険者になって一年目で、実力で言うなら中堅に近いほどだとか。今回は十匹ぐらいなら何とかなったらしいが、当初いたグレイウルフは二十は軽く超えて下手したら三十匹以上だったかもしれないそうだ。それは手間取るな。

 冒険者に成り立ての笑い話や強い魔獣に偶然出会い苦戦した話と色々と話をしてくれる。実体験であるが故に聞いていて飽きることはなかった。

 話の中には勇者や生徒達、そして主が出てくることもある。すべてが最近の話だが。話の中身はすべて彼らの群を抜いた力がほとんどだ。成長の速度がすさまじいとか、百を超える魔獣の群れを少数で倒したとか。残る少数は、彼らを抱える国の動きだ。

 何ともきな臭い動きをしている国もあるようだし……何も起こらないといいのだがな。


「秋人、様」


 歩きながらぼんやりと考えていた俺に、傍を歩いていたリリアラが話しかけてくる。


「ん?どうした?」

「秋人様は、冒険者に、なりたい、ですか?」


 視線をリリアラに向けると、リリアラは少しばかり不安の色を浮かべた瞳をこちらに向けて問うた。


「まぁ、冒険者っていうのは一種のロマンがあるしな。でも俺は契約したし、何より今の仕事が楽しい。他の職業に就いてみたいと思わないほどにな。だから辞める気はないよ」


 冒険者とのやり取りでやはり心配をかけたようだ。不安そうな色がにじんでいたリリアラの目は、俺の言葉を聞いてその色を消した。


「それは良かったのです。少し心配してしまったのです」

「私も、少し、だけ……」

「心配かけて悪かった、二人とも」


 安堵が含まれた声色のルルアラとリリアラに言う。二人はにこやかな笑みを浮かべて大丈夫だと返事をしてくれた。

 頭上のロルは気にしていないのか何も鳴かない……。いや、これは寝ているな。

 不安が取れて嬉し気な笑みを浮かべている二人を微笑ましく思いながら宿屋への帰路につく。

 冒険者と話し込んでいたため、時刻はすでに夕方近くとなっている。少し夕暮れじみてきた空の中、俺達の歩く道は人々の喧騒と屋台から漂う料理の匂いで満ちて、賑わっていた。




 現時刻は朝、翌日である。宿で朝食をとった後、俺は訓練、リリアラとルルアラは買い物と別れることになった。連絡をとりたいときは【糸電話】があるしな。ちなみにロルはハイドをかけた状態で俺の頭の上にいる。

 昨日はあの後、屋台で物珍しい食べ物を買っては食べて宿屋へと戻った。

 個人的にはマジックカステラがおいしかったな。マジックカステラというのは、赤や青といった色とりどりのピンポン玉のようなカステラである。マジックと名前についているのは、魔法の種類を色で表しているためだとか。火は赤、水は青みたいにな。

 リリアラとルルアラは棒付きのキャンディが気に入ったらしい。キャンディは棒に近いところは赤、左側は緑、右は青などとカラフルで色によって味が変わるようだ。


「思考がそれてるな。集中……」


 昨日の出来事を思い出してそれた思考を、小さく頭を振って元に戻す。今回の訓練は、≪魔銃・ヴォルカス≫を使わずに≪駿影≫で魔法を扱うことに慣れるというものだ。

 やはり≪ヴォルカス≫を使った方が精度は良いが、訓練のおかげである程度の魔法なら威力の調整などできるようになった。初歩的な魔法なら大丈夫だったんだが、これで中級の魔法も大丈夫だろう。さすがに上級となると、≪魔銃・ヴォルカス≫を使わなければならない。


「ファイアーボール」


 先ほどから初歩的な魔法を放っている。本当は≪魔銃・ヴォルカス≫を使っての訓練もしたいのだが……。


(さっきから<レーダー>に反応があるな、いつまでいるつもりだ。人であることは確かみたいだし)


 <レーダー>には俺の背後二メートル先に赤い点が二つ。五分前から反応があった。人であることは<察知>で分かるんだが……。

 たまたま近くを通った冒険者か一般人、もしくは盗賊の類。リリアラとルルアラはない。彼女達なら分かる。

 ただ冒険者か一般人というのは考えづらいんだよな。もしそうならなんでこっちの様子をうかがうようにしているのか。用がないならすぐに立ち去るなりするはずなのだ。 

 ん?赤い点がこちらに向けて近づく。隠れるのはやめたか。

 杖の状態である≪駿影≫にいつでも魔法が撃てるように魔力を込める。同時に後ろから声をかけられた。


「おう、目つきの悪い坊ちゃん。こんなところで一人とは、不用心だなぁ」


 背後の茂みをかき分けて出てきたのは、明らかにガラが悪そうな二人組の男。下品な笑みを浮かべている彼らは腰に剣をさげている。一人は禿頭、もう一人は長髪である。

 見るからに冒険者ではなさそうだ。念のために<全対象解析可能>を使ってみると、案の定盗賊であることが分かる。

 ≪駿影≫を持ったまま、盗賊達と向き合った。


「何か御用でも?」

「いやな、街中でお前がホロホルを連れているのを見かけてな。そいつが欲しかったんだが……今は連れていないのかい?」


 俺の問いに禿頭の男が下卑た笑みを浮かべながら話す。さりげなくこちらに近づきつつ退路を塞ごうとしている辺り、逃がす気が無いのは確かだ。しかしホロホルか……もしかしたら。


「なぜホロホルですか?」

「えらーいお人がな、ホロホルが必要なんだよ。俺達だって直々の頼み事だから失敗させたくないわけだ。だから大人しくホロホルをくれねぇかなぁ?」


 軽薄な口ぶりの長髪の男はそう言うと催促するように手を出した。偉いお人というのはおそらくレア商会だろう、昨日の冒険者の話にもそれらしいことが出ていた。

 俺が怯えて動けないと勘違いしたのか、二人の男は下賤な笑みを顔に浮かべてこちらへと近づいてくる。

 さて、雇い主であろう人も予測できたし盗賊は兵士に突き出すとするか。


「とっととホロホルを出して――――」

「せいっ」


 禿頭の男性が急かすように右手で肩を掴もうとしてくる。その手をわずかに左に体を傾けることで避け、振り向きざまに≪駿影≫でみぞおちを打った。


「ぐっ」


 痛みに耐えかねた禿頭の男は、思わず腹を抱えるような動作をとる。長髪の男は目の前の出来事に一瞬呆気にとられた顔をするが、すぐさま怒りの表情を顔に浮かべて腰にさげた剣を抜いてこちらに斬りかかってきた。


「スリープっと」


 禿頭の男にスリープの魔法をかけて眠らせると、音をたててその場に倒れる。長髪の男は禿頭の男を避けつつ、剣を振りかぶった。


「ふん」


 右に一歩ほど移動して、長髪の男の手を≪駿影≫で強打する。長髪の男は痛みに顔をしかめて、剣を取り落した。


「スリープ」

「くそっ」


 スリープの魔法をかけると長髪の男は悪態を小さくつきながら、禿頭の男と同じくその場に倒れた。

 耳をすましてみると、微かに聞こえる寝息が二つ。<全対象解析可能>で睡眠状態であることも確認した。魔法はきちんと効いたようだ。<レーダー>には新手の反応もないことから、もう大丈夫だろう。


「ロル、狙われるとはお前も大変だな」

「ピヨピニョ~……」


 静かに寝息をたてる盗賊二人を前に小さくつぶやく。ロルは頭の上で賛同するかのように鳴いた。

 さてと、大の男二人をどうやって兵士のところまで運ぼうか……。


 結局、盗賊二人は引きずって兵士のところへと突き出した。引きずっても起きないとは、スリープの魔法が結構強くかかっていたのかもな。

 ステータスに盗賊と表記されていたこともあり、兵士達はすぐさま盗賊を引き取ってくれた。引き取る際に、感謝のお礼とお金をもらう。まさかお金を稼ぐことになるとは……。

 


         □  □



 時刻は昼。今は『アトレナス』に来てから二週間、つまり休暇も終わりである。

 盗賊を兵士に突き出して以降は、店巡りとなった。バリエレイアは広いため、様々な店があった。まぁ、さすがに治安の悪いところには自ら進んで行くことはなかったが。

 今、宿を引き払った俺達は、街の中央のゲートの前へと来ている。これから『第五遊技場』へと戻るのだ。


「休暇、楽しかったのです」

「私も。秋人様は、どう、でしたか」

「あぁ、俺も楽しかった。ロルの成長もあったし、飽きることはなかったな」

「確かにホロホルとしては成長が著しかったのです」

「秋人様の、魔力を、餌と、していましたから」


 話しの通り、あれからロルの成長が著しかった。本来、ホロホルは綿のように丸っこい形の両手サイズの鳥型魔獣だ。

 しかし現在、頭上のロルは鳩である。綿のように柔らかい羽毛を持った鳩である。色は薄い灰色だ。もうホロホルなのかと疑問に思う成長である。

 日ごとに変化するロルは見ていて本当に飽きなかった……。

 あの後、二人組の盗賊と似たような輩に絡まれることもあったが、全て適当にあしらった。ほとんどが盗賊だったので、とりあえず眠らせて兵士に突き出した。


「んじゃ、行くか」

「了解なのです」

「わかり、ました」


 ロル絡みのことから思考を戻して、二人に言う。二人は満足気な顔でうなずいた。本当に休暇を楽しめたのだろう。

 周りには冒険者や商人など様々な人々がひしめき合っている。ギルドに向かう人もいれば、店に向かう人、そしてゲートを潜り別の世界へと向かう人もいる。

 その中を俺達はゲートをくぐった。瞬間、目の前が真っ白に染まる。


 少々苛立ちを覚える人もいたが、結果的に楽しい休暇となった。リリアラとルルアラも楽しめたようだし。

 初休暇、無事終了である。 

 


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