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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第一章
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第1話~プロローグ2~

 高校につくと早速視線を感じる。こちらをちらちらと見ながらひそひそ話し声。


「うわ、神楽嶋じゃん……」

「本当に目つき悪いよね」

「あいつ、妙な噂があんだけどさ……」

「え、本当か?近づきたくねぇ~」


 一体どんなうわさなんだか。どうせ根も葉もない噂に決まっている。

 高校一年のころは根拠もない噂にずいぶんと振り回された。まだ一年だから教師だって俺の人となりを知らない。故に誤解が生まれやすい。一年生はとにかく教師から誤解されないように勤めてきた。クラブはこのジト目のせいで入れなかった。入ろうとしたら周りの部員から入るなよオーラがひしひしと漂ってきた。あの中で入部決意できるほど俺の精神は強くない。笑われてもかまわん。しかし、学業は常に上位を維持してきた。教師の頼みごとだってすべて引き受けた。おかげである程度は教師からの信頼はあると思う。たぶん。きっと。むしろ無かったら泣くぞ……。どよ~んとした空気を背負いながら泣くぞ。

 少しばかりの不安を抱きながら自分の教室に入る。ここでも同じ。俺が入った瞬間ひそひそ話がはじまる。気にしたって意味がないので意識の外へと追いやる。

 自分の席につき、暇つぶしにと持ってきた本でも読もうと俺が本をかばんから取り出し読み始めると再び教室がざわめく。しかし、今回は俺が原因じゃない。ちらりと騒ぎの大本へと視線を移した。


「みんな、おっはよー!」

「真由は朝から元気ね。見習いたいわ」

「ほ、本当ですね」

「あはは、でも真由には元気な姿が似合うよ」

「だよな~」


 しゃべった順から橘真由(たちばな まゆ)緋之宮陽菜(ひのみや はるな)小峰理沙(こみね りさ)、天ヶ上勇気(てんがじょう ゆうき)樹沢藤二(きさわ とうじ)の五人である。橘は天ヶ上の言葉に頬を赤らめている。おーおー、わかりやすい反応だな。

 

 橘真由は少し赤っぽい髪をツインテにしている。髪の色は地毛なんだそうだ。身長は百六十ぐらいでプロポーションも整っている。大きくつぶらな目に小さめな鼻とまさしくアイドルのような「かわいい」を体現した美少女である。明るく勝気な性格の持ち主で友達だって多い。そして、さっきの反応の通り天ヶ上に思いを寄せている。学年は二年で同級生だ。

 

 二人目、緋之宮陽菜は艶やかな黒髪を背中の中ほどまで伸ばしている。身長は百六十五ぐらいで、スラリとした体型のこれまた美少女である。少し切れ長の目に整った容姿で橘とは異なり和服の似合いそうなお嬢様といったところか。ちなみにこの人は三年つまりは先輩である。天ヶ上とは家が隣同士で小さいころから付き合いがあったそうで今でも一緒に登校しているそうだ。このあとすぐ自分の教室へ向かうのか廊下にたち、橘の様子に苦笑している。そんな姿もさまになるのだが。

 

 三人目、小峰理沙は少し茶色っぽい(これまた地毛だそうだ)髪が肩ぐらいの長さにきっている。身長は百五十と小柄。言い表すならリス、といった小動物系の美少女である。整った容姿に垂れ目ということもあってさらにその印象を強くさせている。ちなみに彼女は一年生だ。彼女が二年の先輩の教室にまで足を延ばしているのは天ヶ上と少しでも長くいたいという恋心のなせる業である。彼女の雰囲気もあいまって同級生はほほえましいという感じで見ている。

 

 四人目、樹沢藤二はツンツンとした髪に整った容姿、熱血で気さくな人間である。まさしくスポーツマンといったところで、五人の仲では百九十近くと高身長、程よく筋肉もついている。天ヶ上とは小さいころの仲らしい。頭を使うよりも体を動かしていたほうが好きらしく、サッカー部に入っている。天ヶ上に並んで多くの女子生徒からモテるイケメンだ。

 

 そして最後、ハーレムの中心、天ヶ上勇気。一言で言うならこれぞ主人公といったところだろう。容姿端麗、成績優秀、スポーツ万能、正義感も強く全学年(二年だけでなく一年、三年までも)、全教師から信頼されているというなんだこのイケメンはというやつである。告白だって入学当初から何度も、バレンタインなんてチョコの山が恒例、それで男子生徒から嫉妬されてるならまだしも男子生徒でさえ彼のことを認めている。百八十近い身長にさらさらの黒髪、すっと通る鼻、優しげな瞳とどこぞの王子か勇者なのかという容姿である。


「それじゃ、私はそろそろ自分の教室に戻るわね」

「あ、もうそんな時間……じゃあ、私ももどりますね」


 そういいながら緋之宮と小峰が自分の教室へと戻っていく。その姿を天ヶ上と橘、樹沢は笑顔で見送ると自分の席へと向かおうとする。そこで視線があってしまった。

 あ、やばと俺は視線をそらす。……わざと過ぎたか?でも本を立てかけていたしばれてないよな?しかし二人は何なのかこちらへと近づいてくる。やべ、見てたのがばれていたのか?


「神楽嶋君、うわさ聞いたよ。だめじゃないか、弱いものいじめとか」

「そうだよ!そんなことしちゃだめじゃん!」


 天ヶ上が責めるような目で言う。続いて橘が耳元で大声を上げる。あぁ、うるさい。耳元で怒鳴らんでも聞こえる。キーキー響いて耳が痛くなるだろ。というか、それ嘘だから。何の根拠でそれを本当と言うんだか。

 それが身振りにでも出ていたのか、さらに二人の顔が険しくなる。


「なんだよ、にらみやがって」


 樹沢が切れそうな口調でしゃべる。いや、これがデフォだから。にらんでないから。もう二年なんだからわかってくんねーかな。……期待しても無駄か。

 俺のうわさを助長させているのがある意味この三人とそして去っていった二人なのだ。天ヶ上は思い込みが激しく、俺の目つきだけから悪い印象を抱いている。さらにそこへ正義感も合わさって俺イコール悪と信じきってしまっている。残る四人も同じだ。

 さらに「あの五人が信じているんだからきっと噂は真実なのだろう」と周りのやつらまでもが思い込みを激しくしてしまう。こっちはいい迷惑だ。

 一年のころ何回か違うと五人に訂正したが一向に聞き入れてもらえなかった。思い込みが激しすぎるだろ。


(もう、いいけどさ……とりあえず適当に流しておくか)


 無視してもいいのだが後でさらにうるさくなると去年学んだんだ、俺は。


「聞いているのかい?」

「えぇ」

「僕がいっていたこともわかるよね?反省しなよ、ちゃんと」

「去年からずっと!どうして改めないの!」

「お前、弱いものいじめとか卑怯なんだよ」


 傍で再び騒がしくなる三人。いい加減終わってくれないだろうか。周りの目も厳しくなる。噂を流したのは誰なのやらか。どうせ面白半分で流したんだろうがな。

 そんなことを考えていると予鈴が鳴った。三人は「反省しろよ」と告げて自分の席へと戻る。ほかの生徒も自分の席へと向かう。

 ようやく開放された……。本当にナイスタイミングだな予鈴。

 予鈴に感謝していた俺は黒板へと目を向ける。

 

 その瞬間視界が真っ白に染まった。

 

あ、あと1話でプロローグを終わらせる・・・!

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