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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第一章
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第18話~魔法、そしてギルド~

 現時刻は朝、俺達はバリエレイアの門付近にある宿屋に泊まっていた。一夜明け、宿のベッドから這い出る。時間は……朝六時か。


 昨夜は街に入ろうと、ハイデラと同じく兵士の検閲を通った。この時もやはり『第五遊技場』の主を探すために時間がかけられる。もちろん偽のステータスでごまかしたのだが。

 検閲を終えて街に入る際、兵士から呼び止められ注意を受けた。注意というのは夜間に街の外をうろうろするなというものである。というのも最近魔獣の動きが例年と異なるそうだ。それに返事をして、街中に入る。

 夜のバリエレイアは行き交う人々の喧騒、店や道端の屋台から漂ってくる料理の匂いや漏れ出る明かりで満ちていた。

 その中を歩いて、この宿に泊まった。夕方辺りであれば人気の宿に泊まれたら泊まろうと思ったのだが、時間も時間であるから適当に門から近い宿で済ませようという話になったのだ。ちなみにこの宿もハイデラの宿と同じく、一階が食堂になっていたので夕食はその食堂でとった。


「おはよう、ございます。秋人様」

「起きたのです?」

「ピー?」

「あぁ、今な」


 かけられた声に眠たげな声で答える。ハイデラのときとは異なり、リリアラとルルアラの二人が先に起きていたようだ。どちらの顔にも眠気が見られないことから、起きて結構経つのだとわかる。二人はハイデラで買った服を早速着ていた。ロルは俺の枕元で今起きたように体を一回震わせ、こちらを見て鳴いた。それに頭をなでることで答えてやる。

 まだ眠気が残っているため、眠気をとるために宿の部屋に備え付けられた洗面台へと向かう。この宿には簡素な洗面台が備え付けられており、蛇口をひねり顔を洗った。

 

 ちなみに城では蛇口がない代わりに魔方陣が近くの壁に刻まれていた。この魔法陣に魔力を注ぎ込めば、蛇口代わりとなるのだ。

 これは貴族や大商人など資産家や特権階級が使用している。これには魔方陣を刻むためにお金が結構かかるためなどの理由があるのだ。

 魔方陣を刻むのは魔法士の一種である錬金術師だ。錬金術師は魔方陣を刻むことによる魔法の付加を得意としている。

 たとえば魔力をこめればファイアーボールを放つことができる魔方陣の刻まれた短剣、ウインドウカッターを放つことのできる魔方陣が刻まれた盾とかな。俺が≪魔銃・ヴォルカス≫に魔方陣を刻めたのはサブに錬金術師があったからである。

 

 蛇口を見てふと、とりとめもないことを考えながら顔を洗い終えた。アイテムボックスからタオルを取り出して拭きながら、自分のベッドへと戻る。


「朝食を食べた後に訓練に街の外へ向かうけど、いいか?」

「はい、かまい、ません」

「私もかまわないのです」

「そうか、ありがとう」


 賛同してくれた二人に礼を述べた。

 では朝食をとろうかと、部屋を出る準備をする。所持品を俺はアイテムボックス、リリアラとルルアラは擬似空間に入れた。

 ロルは肩に……って肩に置いたのに頭の上に移動しやがった、こいつ。これは頭の上で決定だな、ロルの定位置は。

 ロルを頭の上にのせてローブを羽織り部屋を出ると、鍵をかける。今回はこの宿を休暇終了まで利用するため、長期だと泊まる際に伝えて鍵をもらっているのだ。

 鍵をかけたことを確認し、一階へと降りる。一階の食堂には人が結構入っていた。冒険者や仕事前の人々が複数や一人など人数は様々だが、朝食を食べている。食堂内には料理の匂いと、開け放たれた窓から流れ込む澄んだ空気が混ざっていた。

 構造はハイデラの宿と同じなので、カウンターに立つ宿の従業員にメニューを見せてもらって料理を注文する。三人ともキックラビセットである。本当はホロホルセットを頼みたかったのだが、頭の上でロルが悲しげな泣き声をあげたのでやめた。……食べてみたかったんだがな、青い目玉焼き。

 適当に空いている窓から離れた席へと座り、料理がくるまで待つ。

 しばらくして料理が運ばれてきた。オレンジ色のキックラビの肉とサラダ、コンソメスープ、そして黒っぽい色の堅いパンである。

 堅いパンはコンソメスープに浸して食べる。うん、おいしい。パンはそのまま食べるには少し堅すぎるが、スープに浸すことで丁度良くなる。ニンジンや玉ねぎのような野菜が入っているコンソメスープは、味付けがきちんとしてありおいしさが体に染み渡るようだ。

 キックラビの肉はさっぱりとしていてしつこくなく、サラダは……ポテトサラダだな。出来立てなのだろう、ポテトサラダはまだ温かくておいしい。

 食事をとりながら、頭のロルに魔力を餌として与える。あ、そういえば。


「ロルを平然と頭の上に乗せているが、隠したほうがいいか?」

「それは大丈夫なのです。他の魔獣だったら考えた方がいいかもしれないけれど、ホロホルであれば愛玩用として通るのです」

「貴族、平民関わらず、ホロホルを、飼っている人が、多いですから」

「そうか、良かった」


 俺の問いに答える二人。今更ながら、魔獣を連れ回すことに何かしらの規制やらがあるのかと不安になったのだ。ないのなら、良かった。

 安堵してロルに意識をやる。ん……昨日より少し重い?あの一日で成長したのか?後で確認してみるか。

 ロルの成長に気になりながらも朝食を食べ終え、会計を終える。

 部屋の鍵を宿の店員に預け、訓練のために街の外へと向かった。



 


「ここら辺でいいだろう。辺りに人目はないし」


 現在、俺達は訓練のためにバリエレイアの街の外の森にいる。最初に通ってきた森の、道を外れた少し奥辺りだ。

 徐々に強くなる朝の陽ざしが森の木々に降り注ぎ、吹く風に葉が揺れている。人通りのある道からはこの場所は確認できない。

 人が辺りにいないことを示す<レーダー>を横目に見ながら、リリアラとルルアラに話す。


「そういえば、何の訓練を、するのですか?」

「今回は魔法だな」


 リリアラの質問に答えつつ、腰のベルトから≪魔銃・ヴォルカス≫を抜く。救助の際は刀で応戦しようとするも冒険者に魔法士と誤解されたため、武器の交換の手間が惜しいということもありそのままで魔法を放った。

 魔法は≪ヴォルカス≫抜きで放つこともできるのだが、威力の加減や狙いなどの精密さを求めるならあった方がいい。

 他よりも少しばかり大きい木を的にして、≪ヴォルカス≫に魔力を込める。すぐに弱めの威力に設定したファイアーボールが銃口に現れた。引き金を引いてそれを的に向かって放つ。

 ファイアーボールは狙い通り的に当たった。当たった個所は多少黒ずんでいるものの、木は燃えることなくそびえている。うん、制御できているな。それにスキル<無詠唱>もきちんとできる。

 城でも説明されたが魔法には種類があり、火、水、風、土、闇、光、そして空間の七種類だ。火、水、風、土は持っている人が多いが、闇、光は少ない。空間は闇や光よりも持っている人は少ない。

 また持っている種類は一、二種類が多く、種類の数が多いほど持っている人は少なくなる。ちなみに王族などの身分が高い者はまず魔法が使えるらしい。そのため、魔法が使えない人物に対して侮蔑の感情があるのだとか。そういえば俺の偽のステータスを見て第一王女が使えないとか言っていたな。


「あぁ、そうだ。救助のときみたいなことがあっても言いように連絡手段を持っておくか」

「それも、そうですね」

「では秋人様、お願いするのです」

「わかった」


 ルルアラの言葉に一つ頷きながら答え、≪ヴォルカス≫の銃口を二人に向ける。魔法のイメージはできている。

 俺は小さく魔法の名前を呟きながら、引き金をひいた。


「【糸電話】」


 次の瞬間、目の前に顔の大きさぐらいの紙コップが現れる。宙に浮く紙コップの底からは糸が伸びており、その糸は途中で切れていた。ようは糸の切れた糸電話だ。

 この魔法【糸電話】は先ほどの七種類の魔法とは少々異なる。これは『第五遊技場』特有の魔法だ。他にも色々と種類があるのだが、どれも遊具や遊び、娯楽、趣味に関するものが多い。

 【糸電話】は電話代わり、つまり連絡用の魔法だ。糸が切れているが問題は無く、この紙コップを持っている者同士ならどこでも連絡を取ることができる。


「これで大丈夫だろう。それに触れれば体の中に取り込まれる。消えるのは俺が魔法の使用をやめたときだ。連絡したいときは、そう念じれば目の前に出てくるから」


 そう二人に説明すると、二人は納得したようにうなずいた。


「わかり、ました。ありがとう、ございます」

「これではぐれても大丈夫になったのです」


 リリアラとルルアラはそう言うと、目の前の紙コップに触れる。次の瞬間、紙コップはどちらも霧のように消えた。これで念じればいつでも出すことができる。


「魔法の訓練を少しして、あと刀にも慣れておかないとな」

「では、私達も、訓練を、行います」

「それもそうなのです。私達も訓練なのです」


 俺の言葉にリリアラとルルアラがそう返すと、二人とも少し離れた場所へと向かう。近すぎたら危ないからな。さて、俺も続きをするか。

 あ、そういえば。


「ロル、頭の上は危ないからどこかにいろ」

「ピニョ~」


 魔法だけならいいが、刀を使う場合は動くからな。頭の上のロルが落ちたりするかもしれない。

 ロルを心配する俺に、ロルは一声鳴いて近くの的以外の木にとまる。

 木漏れ日の中、しばらくの間各自が訓練を行った。






 現時刻は昼である。一、二時間程度だと思っていたが予想以上に時間がかかってしまった。

 あれから三、四時間して二人がもうそろそろ街に帰ろうと戻ってきた。それでかなり時間が経っていることに気づき、街に戻ってきたのだ。気づけばロルは暇なのか寝ていた。鳴いて教えてくればいいものを……いや、それを言うのは酷か。

 街は昼時ということもあり、朝よりも大勢の人々が道を行きかっている。辺りは喧騒が飛び交い、金物の音や料理の匂いが道に届いていた。

 そんな中、俺達はギルドへと向かっている。なんでも許可証はギルドで発行されるためだとか。

 最初は国が運営している役所とかだと思ったのだが、国が関わる役所よりもどこにでもあるギルドの方が公平に許可証が発行できるという考えだそうだ。ちなみにこれは第一から第四の主が集まって考えたものである。

 訓練の後、三人で許可証があった方が便利だということになりギルドへ行くことになった。

 バリエレイアという街はクモの巣状の形になっており、中央にギルドの建物が建っている。

 街の中央部に近づくほど冒険者の数は多くなり、野太い声や剣などの武器の音が辺りを満たしていた。

 しばらく歩いていると、視界が開ける。街の中央部に到着したのだ。

 街の中央は大きな広場となっている。広場の中央には転移用のゲート。客層として冒険者を狙っているのだろう、武器屋や薬屋などの店が広場を囲うようにして建ち並んでいる。

 そんな中で他店よりも一階分ほど高い建物、ギルドが目立つようにして建っていた。ギルドの付近には多くの冒険者が行き交っている。


「ついたな。それじゃ、ギルドに入るか」

「了解なのです」

「わかり、ました」


 一度立ち止まり、ギルドを見据えて確認しあった俺達はギルドへと向かう。ギルドに近づくほど冒険者達がごった返しており、ぶつからないように常に避けなければならないほどだ。

 中には俺達と同じ目的なのだろう、明らかに冒険者ではない人達がちらほらと見受けられる。

 冒険者の波をかき分けてギルド内に入ると、外に漏れ出ていた喧騒が大音量で耳に届いた。

 ギルド内は入口から右手は酒場、左手にはカウンターがある。カウンターのさらに左手には、上の階への階段があった。

 酒場には冒険者達が酒を片手に大声で笑ったり、会話している。カウンターには冒険者やそうでない人が列を作っていた。並ぶ人の中には魔獣のものであろう皮などの素材を持っている。

 たぶん、許可証が欲しい人達はあそこに並ぶのだろう。カウンターの中で明らかに冒険者ではない人達が並ぶ列を見てそう判断し、そちらへと並ぶ。


「この列でいいんだよな。冒険者以外の人しか並んでいないし」

「多分、大丈夫、かと」


 不安に思う俺に、リリアラはそう返した。まぁ、いざとなれば冒険者にならないと言えばいいか。

 


 暇つぶしにカウンターの向かって右側、仕切りに冒険者になる際の決まり事が書かれている板を読む。冒険者になるには自己申告制、または他の冒険者からの推薦なのか。ただ推薦の場合だと厳重な調査があるようだが。最低でも……三日か。

 読んでいると、俺達の前の人が脇へと退けた。ようやく俺達の番が来たのだ。

 カウンターは受付ごとに板の仕切りで区切られており、俺達の目の前のカウンターにはギルド職員の女性が微笑みを浮かべていた。肩ほどの茶髪に抜群のスタイル、そして小さな顔立ちと美人だ。だが浮かべている笑顔は明らかな作り笑いである。まぁ、接客に笑顔は必要だしな。


「微笑みがぎこちないのです。まだまだなのです」

「不愛想、じゃないだけ、いいよ」

「……二人とも、従業員の態度の批評はやめなさい。聞こえてないからいいんだが」


 リリアラとルルアラの小声に困ったように言う。これぐらいの小声なら目の前の女性には聞こえていないだろう……たぶん。

 小さく息をつきながら目の前の女性に意識を戻した。


「何かおっしゃいましたか?」


 微笑みを浮かべたままの女性は小首を傾げながらこちらに尋ねてきたので、いいえと返しておく。あぁ、用事を済ませないと。


「俺達、許可証の発行をお願いしたいのですが……」

「わかりました」


 女性は俺の言葉に一つ頷くと、カウンターの下から水晶玉を取り出した。ただの水晶玉のように見えるのだが、何だろうか。

 女性は水晶玉に手を置き、こちらを向いた。


「では、この水晶玉に手を置いてください。この水晶玉は盗賊など犯罪者ではないか調べるものです。そうであるなら赤に光りますので、その時は許可証は発行せず然るべき対処をします。よろしいですか?」

「わかりました」


 一つ頷いて見せると、女性は俺達の前に水晶玉を置いた。

 ところでこれはステータスを写してしまったりしないだろうか。……念のために<完全隠蔽>を俺達三人にかけておくか。

 三人のステータスに悟られないように<完全隠蔽>をかけた後、順番に水晶玉へと触れていく。もちろん、誰も赤い光を放つことはなかった。

 女性はそれを確認すると、先ほどの水晶玉を戻して別の水晶玉を取り出してくる。水晶玉の中には霞のようなものがあり、おぼろげに光を放っていた。光は赤、紫、青、緑の順に発光している。


「皆様は大丈夫だと分かりましたので、許可証を発行します。発行は無料で行われますが、発行するのはすべてですか?」

「はい」


 女性の問いにそう答える。許可証の発行は当初有料という話だったが、主の話し合いで無料の方が良いと決まったそうだ。賛否両論だったそうだが。

 すこし思考がそれている間に、女性は俺の答えに一つ頷いて様々な色の光を放つ水晶玉に片手をかざした。すると、霞のような光がはっきりとした輝きを持つ。四色全てが混ざり合う様子は汚くなく、神秘的な様相を呈していた。

 女性は水晶玉へと向けていた視線を、こちらへ戻す。


「では、一人ずつこの水晶玉に触れてください。そうすれば許可証が発行されますので。許可証はステータスの一番下に表示されますので、あとでご確認ください。もし、きちんと発行されていなければ、もう一度こちらに来てくだされば行いますので」

「はい、わかりました」


 女性の言葉に一つ頷いて、俺達三人は一人ずつ水晶玉へと触れていく。触れた瞬間、水晶玉が一瞬強く輝きすぐさま元に戻る。それが許可証が発行された合図だ。

 二人が水晶玉に触れている間にステータスの一番下の部分を確認してみる。……おぉ、確かにあるな。許可証の横に剣、本、お金、金槌のエンブレムが四つ程ついている。

 おそらく剣は『第一闘技場』、本は『第二図書館』、お金は『第三商店街』、金槌は『第四工房』を表すのだろう。ひとまず、許可証はきちんと発行されているな。

 確認を終えると、二人もどうやら作業を終えて発行されているかどうか確認しているようなので終えるまで待つ。確認はそこまで時間がかからないからな。

 確認を終えた二人は、こちらを向く。


「きちんと、発行、されています」

「私も大丈夫なのです」

「俺のほうも大丈夫だった」


 二人の言葉にそう返すと、カウンターの女性に大丈夫だった旨を告げる。女性はそのことに微笑みを浮かべたまま、一つ頷いた。


「それは良かったです」

「では、失礼します」


 女性の言葉にそう返して、列から外れる。俺達の後ろにいた人が、すぐさまカウンターの前へと向かった。

 



 無事許可証ももらったし、これでゆっくりできるな。三人で今後の予定を話し合う。時々頭上で忘れるなと言うように、ロルが鳴いた。

 話し合いながらギルドを出ようとした俺達に後ろから誰かが話しかけてくる。


「なぁ、もしかしてあの時加勢してくれた魔法士か?」


 声のした方を向くと、俺が助けた冒険者三人がそこに親し気な笑みを顔に浮かべて立っていた。


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