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第五遊技場の主  作者: ぺたぴとん
第一章
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第0話~プロローグ~

5月16日、主人公の容姿説明をすこし入れました

2016/4/6 全体的に書き直し。内容に大きな変化はありません。

 ジリリとひどく近くで何ともうるさい音が鼓膜を震わせる。

その音が聞こえた瞬間、止めなければという思いと起きなければというひどく億劫な気持ちが胸の中でせめぎあった。


「ん……あ、朝か……」


 ゆっくりと意識が浮上する共に目を開けば、カーテンの隙間から差し込んだ柔らかい朝日が飛び込んでくる。おぉ、おかげで少し眠気がとれた。

 体を起こし、大きく伸びをして俺――神楽嶋秋人かぐらしましゅうとは自室のベッドで目を覚ました。光につられて窓の外を見れば、春が来たのだと告げるように桜の木が薄紅色の花弁を風に乗せて道路へと落としていた。

 視線を枕元へと移せば、目覚まし時計の針が示しているのは午前六時半。あと一時間ほどしたら学校に行かなければならない。

 そう、学校に行かなければ。ここで誘惑に負けて二度寝した暁には遅刻してしまう。


「学校……。飯、作らなきゃ……」


 二度寝の誘惑をどうにか振り切りつつベッドから降り、寝間着から高校の制服へと着替える。カーテンを閉じたままもどうかと思い開ければ、先程よりも多くの日差しが薄暗い室内を照らし出した。

 体を動かし、朝日を浴びれば多少なりとも眠気は消えるもの。先程よりは頭がすっきりとした感覚を覚えながら、8畳ほどの部屋から出た。

 洗面台のある風呂場へと向かって顔を洗いながらぼんやりと考える。最初は一人暮らしなど不安しかなかったのだが、気づけばもう慣れてしまっていたなぁ。

 高校の近くにある1DKのアパートは、一人暮らしならば十分な広さと言えた。

 当初は一人暮らしする予定なんてなかった。寮に入ろうと考えていた。けれどもどうせすぐ埋まるわけがないだろうなんて考えが甘かったのだろう、申し込んだ時にはすでに満杯だった。あの時は一瞬目の前が暗くなったのをはっきりと覚えている。

 

(けどまぁ、もう慣れたしいっか……)


 洗った顔をタオルで拭きつつそんなことを考える。

 少し時間が経てば腹が空腹を訴えてきた。なだめるように腹を撫でつつ冷蔵庫の中を確認する。先日食料は買い足しておいたから大丈夫だろう。でも使うとするなら昨日余った玉ねぎの薄切りを使いたい。


(玉ねぎの薄切りを使うなら……うん、簡単なサンドイッチにしよう、手軽だし)


 冷蔵庫の中身と相談しつつ決めれば、マヨネーズとベーコン、レタス、そして余った薄切りの玉ねぎを取り出した。あぁ、パンも必要だな。

 材料を台所へとそろえれば、ベーコンを焼きつつパンを半分に切る。そしてその片面にマヨネーズを薄く塗った。……お、焼けたかな?

 マヨネーズを薄く塗ったパンに軽く洗い、水気をとったレタス、焼いたベーコン、薄切りの玉ねぎを順に乗せてもう半分のパンで挟む。うん、雑ながらも簡単サンドイッチの完成だ。

 それを数個作って平皿に盛り、牛乳が注がれたコップも携えて部屋へと戻った。

 皿やらをテーブルに置くついでにテレビのリモコンを手に取りポチッとな。お、ニュースしてる。流れるニュースに眠気に関係なく眠そうだといわれる寝ぼけ眼を向け、ぼんやりと見つつもさもさとサンドイッチを頬張った。

 ただぼんやりと、瞼を自分の指で押し上げてみる。パッと手を離せば元へと戻る。うーむ、やはり生まれついてのジト目はこんな簡単に治らないか。

 ……何してんだ、俺は。


(あほらし、そろそろ学校に行くか)


 テレビの左上に書かれている時間を見れば七時十分。もう出てもいい頃合いだ。早くついてしまうだろうが、遅刻するよりか断然いい。

 そう考えながら残りのサンドイッチを口に押し込み、食器をシンクへと持って行って洗う。高校一年から始まった一人暮らしも高二の今になれば家事は不便ではない程度にこなせるようになった。これも一人暮らしの恩恵だな。

 洗い終えて部屋へと戻れば、勉強机の上に置いてある鞄を手に取った。と、同時に少しばかり気分が滅入る。ああ、今日もまた・・・・・あるのだろうか。ない方が良いのだが、まぁ、十中八九あるのだろう。

 諦めにも似た感情がぽつりと沸いてしまった。


「それじゃあ、行きますか」


 気合いを入れるように、滅入った気分を追い払うように太ももをパンと叩く。い、痛い。けれど少しは吹き飛んだ気がする。

 気分が少しばかりましになったうちに行こう。そう考えて玄関へと向かった。

 ローファーに履き替えて扉を開ければ、朝独特の澄んだ空気が肺を満たす。いつも通りで、そしてこれからもいつも通りのはずだ。


 その、はずだったんだ。


次回はプロローグ2です。次でプロローグは終わりにしたい。

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