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Transparent Dark  作者: 文字塚
参:蜘蛛の糸
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48/160

47.天空の中4

 簡潔に説明し、国樹の解釈もほんの少し混ぜる。当然、こちらの素性は詳しく明かせない。

 ザドキエは何度も頷いて、


「そんなことが上で……」


 零し、それから、


「仲を取り持ちたいです」


 と提案してきた。不可能だ、あの女の警戒心はリミットを超えている。


「タガロ、下で話すっていうのはどう?」


 一理ある。頭を冷やせば……可能性もなくはない。だがどうする、こっちはフラッシュバン投げつけたんだぞ? でなきゃとっくに降りて来てる。


「ひとつだけ方法がある」

「ホントですか! 聞かせて下さい!」


 子供のものか天使的なものか、ザドキエは純粋で汚れない目を向けてくるが、


「二重スパイだ」

「お断りします」


 破談した。


「つまり、こっちに来たり戻ったりみたいな?」

「それしかないだろ。次いつ会えるんだ。ある程度決めごとすれば、事実上二重スパイだ。こっちにとってもだけどな」


 それぐらいしか方法が浮かばない。それと、たぶんまただが、時間がやばい。嫌な予感がする……。


「そんな、やですお別れは……ゼスさんだってそうでしょう?」


 水を向けられたゼスは「うん?」とひと思案してから、応じた。


「そう……でもないかな?」

「へ? なんでぇぇぇ! なんでですか!?」


 確かに、なんでそんな塩対応なんだ。「酷いです!」とザドキエは悲痛の声を上げるが、この寸劇を毎日見せられるのはさすがに苦痛か。二重スパイ案はなしだな。

 膝を突き、国樹はザドキエに言い聞かせる。


「たぶんもう会うこともないだろう」

「何度も言わないで下さい、心が割れます……」


 そんな落ち込まれても、と思うが、


「ただし、そっちがこちらを見つける分には、自由だ。自分で決めるといい」


 そんな国樹の言葉で、少しだけ静寂が訪れた。そうして、


「タガロ……ありがとう」


 なぜかゼスがお礼言うので、苦笑してしまう。ザドキエはしばし呆然としていたが、理解出来たか、しようと努力している。


 なにかを決意するのは、常に自分自身でなければならない。


「その時は声かけろよ。他愛ない会話は人間関係の基本だ。お互い近況を報告し合うといい。それはあれだ、な、ゼス?」


 国樹の意図を拾い上げ、


「ああ! 天使でも同じさ!」


 ゼスは胸を張る。

 心を決めたのか、ザドキエは眩しそうにそれを見つめていた。

 両手を組み合わせ、まるで、天界のカリスマ少年モデルを崇めるかのように――。



 別れの時は、唐突に訪れる。

 背後から妙な音が聴こえ、続いて人影が現れる。


「いるな貴様!」


 遠くから響く声は、案の定アナスタシアだ。


「解放しろと言ったはずだ!」


 そしてこちらに向かい、駆けて来る。


「尋問するなとは言われてねーんだけどなあ」


 独り言ち、それからザドキエを確かめる。恐らくこれが、最後の会話になるだろう。


「アナスタシアは帝石や魔石を使いこなせるんだよな?」


 正直、別に答えは期待していなかった。


「えっと……」


 と躊躇う姿も、もうさすがに気の毒だ。

 最後だしハグでもしてやれ、とゼスに促すと、


「お別れだね。別れだけが人生なんて言うけどさ、僕らはそうでもないよ、きっと」


 軽く引き寄せ、優しく諭すよう囁いている。

 ゼス、お前その年で色男みたいな真似しやがって。まったく、成長した日にゃどうなってしまうのか。

 ザドキエは、悲哀に満ちた表情でゼスを強く抱きしめ、国樹の手を握った。それから、ひとつ頷いている。

 視線だけで「ありがとう」と伝え、


「くそが! 宇宙人が来やがったぞゼス!」

「最悪の気分だよタガロ! なんなのあいつ!」


 二人して声を張り、駆けだす。

 ゼスは振り返らなかった。

 国樹が背後を窺うと、バレないよう小さく手を振る少女の姿が目に留まった。

 後で教えてやらないと。

 そう思い、国樹は階下、螺旋階段の入口へと速度を上げた。

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