表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Transparent Dark  作者: 文字塚
漆:殺戮行路
110/160

109.尋問

 下りてすぐ、国樹は充希の元に向かった。


「国樹殿、二人だけ拘束致しました。残りは申し訳ありません、この有様です」


 仕事を終えた充希は抑揚なく報告してきた。まるで夜の散策を済ませてきたように。

 返り血を浴びたアーマーを見て、国樹はしばらくなにも言えなかった。視線に気づいたのか充希が窺うような顔をした。


「どうされました。これらはすぐ落とせます。それより尋問を始めましょう」


 そう言って明るい笑顔を向けてくる。それは少女の笑顔で、わざとそうしているのが伝わった。


「そうだな。けど悪かった、先に謝らなきゃならんことがある」


 真顔で向き合い、国樹はじっと目を見た。


「はて、何事です。後でよろしいかと」

「そうだな……後にするけど、手の内明かせないのはお互い様だよな」


 呟くよう零すと「なるほど」と充希は反応した。


「問題ありません。後ほど詳しく教えていただけると、当方とても嬉しく思います」


 どこまでも穏やかな笑顔を向けられ、国樹は思わず苦笑した。

 男を引きずり、周囲は死体だらけだ。

 それでも彼女はなにも変わりないのだから。



 全て無駄だと悟るのにそう時間はかからなかった。

 誰一人言葉を発しない、反応も見せない。

 麻酔銃で眠らせた連中も、目覚めたという事実しか残らなかった。

 身元も分からず誰も喋らず動かない。

 これ以上我慢する理由もなかろう。

 国樹は簡単な確認作業を済ませ、充希に合図を送る。

 一人ひとり目掛け引き金を引くことに、特に躊躇いはなかった。



 それらが崩れ去る光景を冷たく一瞥していたのは、国樹だけではなかった。振り返るとヨシカも同じ目を向けていた。倫理的観点から止めに入るかもしれない。そう思っていたが彼女はなにも言わなかった。

 グーシーは当然として、ゼスですら興味がなさそうだ。


 国樹は最後のひとり、罵り合った男に近づく。彼は未だ気を失ったままで、唯一の生き残りである。

 弱い麻酔だ、叩き起こすと男は小さく呻きながら目を覚ました。

 時間はかかったが意識をはっきりさせると、周囲を見回し案の定絶句した。

 状況を理解したであろう男に成り行きを説明する。致死性の猛毒ではなくただの麻酔銃であったこと。そして生き残りはたったひとりであること。なぜ、という疑問は尋問のためであること。


 男は観念したらしく地面に腰を下ろし、絶望と後悔が滲む表情で国樹の問いに答え始めた。

 彼は一年前まで上海警察に勤めていたらしい--


 不祥事を起こし懲戒免職処分となり、金を目当てにすぐそこの深センで彼らと合流した。

 懲戒の理由は押収品の窃盗。微罪だが処分を免れず、彼は無職となった。妻と共に逃げるよう上海を離れ、内陸部を転々とした。

 そして妻が身ごもったことをきっかけに、危ない橋を渡る決断を下した。そういう経緯らしい。


「俺のことは記事にもなった。写真は出てないが上海に行きゃ身元は確認出来る。一年前の記事だ、探せばあるだろう。署に出向いて金でも掴ませりゃ、経歴も含めてぺらぺらと話してくれるさ」


 男は投げやりで、自らを蔑み嘲笑っているのだろう。こんなつまらない男を殺さねばならない、お前も気の毒なものだ。男の言葉にはそんな意味合いも含まれているようだ。

 周囲は死体だらけ、死を覚悟するのも当然と言える。


「おいくつですか、年齢を教えて下さい」


 国樹は努めて落ち着いた素振りで話していた。


「三十五だ。お前は」

「二十歳になりました」

「若いな。なんで追われてる」

「それもご存じありませんか」

「強盗だか殺人だか、そう聞いたよ」

「にしては重武装だと不思議に思いませんか。ただの強盗を追うのに七十人以上かき集めた」


 男は一瞬躊躇い、それから苦虫を噛み潰すよう口を開いた。


「まさかこれで足りないとはね。どうやったかは知らんが……女に子連れ。秘密はその箱か? それともそっちの鎧着込んだ奴か」

「こちらの武装をご存じない?」

「妙な箱と銃しか聞いてない。数でどうにかなると思ってたんだろ。お陰でこの様だ」


 ロケットランチャーを知らない……するとオビガルムで襲撃してきた連中、そして死体を片づけた奴らとも関係ない。なるほど、そういうことか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ