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第7話その1


「お前等なにやってんだ?」

 不意に力強い声が鍛錬場に響き、アッシュはそちらを見た。その入り口からか、ひとりの青年が顔をのぞかせていた。

 一メルクを越えるであろう身長に鍛え上げられた巌の如き肉体。その背には皮膜状の黒い翼を畳み、腰の辺りからは青い鱗に覆われた、半メルクほどの長さと一抱えはある太さの尻尾をゆらりと揺らし、硬質そうな赤い髪を逆立て、両側頭部からは角を生やした頭を傾げつつ、黄金の瞳を彼らに向ける。

 たがしかし、その顔はアッシュと変わらぬ年頃の少年のものだ。

「ガリュート! 戻っていたのか!」

 アッシュが嬉しそうに声を上げると、ガリュートは人好きのする笑顔を見せて笑った。

「よおアッシュ。久しぶりだな」

 笑いながら鍛錬場に入ってきた彼を見上げ、ユイファはぽかんとなった。

「……ドラグーン族か」

 そんなユイファの隣でタカツナがつぶやいた。


 ドラグーン族。

 烈火の女神エフレアの祝福を受けて生まれ出た種族であり、見ての通り竜種の特徴と特性を備える種族だ。戦うことを種族的に好み、強いものに敬意を払う。その戦闘能力は七大神が生み出した七つの人間種族中最高と言われる。


 そんな種族の少年なのであろう、ガリュートと呼ばれた彼は、アッシュと挨拶を交わしていた。

「鍛錬か? アッシュ。俺も混ぜろよ」

「はは、構わないけど二人に紹介させてくれよ」

 ガリュートに応じながら笑うアッシュは、タカツナらに振り向いた。

「武蔵の侍、タカツナと、今度うちのチームに入ることになるユイファだ」

「武蔵帝国元士族、タカツナ・ビトウだ」

「ナヴァルの森のユイファリア・レナーテです」

 アッシュに紹介され、タカツナとユイファが名乗る。それを聞いてガリュートが破顔した。

「おう、俺はガナル山、青鱗のガリュート・レグ・グラステンだ。よろしくな」

 その名を聞いてユイファが目を丸くした。

「ガナル山の青鱗というと、七英雄バルガス様の?」

「なんだ、ジジイのことを知ってんのか?」

 ユイファに訊かれ、今度はガリュートが目を丸くした。

「七英雄は有名ですから。“神弓”マルタ様にもお話を伺いましたし」

 ガリュートの様子にユイファが苦笑した。

 そんな二人の様子にアッシュは驚きを隠せない。

「七英雄って百年以上前の英雄ですよね?」

「ああ、女王エルサ・ラ・エルサ一世の元に集まった六人の男女とエルサ自身を入れて七英雄という。ロード種の獣魔を初めて討伐した英雄達だ」

 アッシュの問いにタカツナが答え、アッシュはうなずいた。

「……そして、リーダーだったエルサ女王はロード種の呪いを受けて死亡。国もほかのロード種達が率いる獣魔の群によって滅ぼされた」

 この大陸に住む者達なら知らぬ者は無い逸話だ。獣魔を倒せることを示し、かつその恐ろしさをしらしめる話として。

 ちなみにエルサ金貨の名前は、この逸話の主役であるエルサ女王を忘れないために造られた金貨だ。

「……まあ、エルフもドラグーンも寿命が俺たちとは違いすぎるからな」

 タカツナが苦笑する。

 人間の平均寿命が六十歳なのに対し、ドラグーンは百五十歳。エルフには老衰はないが事故死や病死などのおかげで二百歳くらいが平均寿命となっている。

 百年前の話なら当時から存命している者達もまだまだ多いのだ。

「まあ当時の話が聞けるっていうのはなかなか貴重ですけどね」

 そう言ってアッシュも苦笑した。

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