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第6話その3


「……ハア。大きい大きいとは思っていたけど、まさかロルモの実と変わらないくらいになっていたなんて……」

「そこで落ち込む理由がわかりません……」

 自身の丸い象徴を確認したアリーシャが肩を落とす様を見て、フェルが唇をとがらせる。

「……そうは言ってもねえ。必要だとは思えないのよね……」

 フェルの様子に嘆息するアリーシャだが、フェルの方は呆れたような顔になった。

「何言ってるんですか?! アリーシャさん! それがおっきいのは女性として喜ぶべき事ですよ?!」

「けどねえ。重いし、肩凝るし、剣を振るのに邪魔だし……」

 力説するフェルだが、アリーシャの反応ははかばかしくない。

「それに男はみんな、おっきいそれが好きだって師匠が言ってました!」

「……」

 力強く言うフェルに、アリーシャはうろん気になった。そんな彼女の反応を気にすることは無く、フェルは続ける。

「それにきっとアッシュさんもおっきなそれが好きですよ?」

「え? アッシュが?」

 思わぬ方向から攻められて、アリーシャは驚いた。その反応に、フェルの目が笑う。

「そうですよ。アッシュさんだって男です。アリーシャさんのおっきなそれを目の当たりにすれば、きっと喜びます! 男なんてそんなものだと師匠が言ってました!」

 その言い方もどうかとは思う。しかし、アリーシャは半分聞き流しながら自分のおっきなそれを見下ろした。

「……アッシュが」

 アリーシャの色づきの増した頬が少しだけ弛んだ。ちょっと妄想のスイッチが入ったようだ。

 そんな他愛もない話をしながら、アリーシャとフェルは湯に浸かっていた。長湯になったのは致し方のないことではある。

「……ふう、そろそろのぼせちゃうわね。フェル、上がりましょうか」

 言いながら立ち上がるアリーシャ。

 水滴が、アリーシャの双山を麓まで駆け降り、白い肌の平原を走ってなだらかな起伏を目にしながら、湯に濡れそぼって倒れた金色の茂みへとたどり着く。


 頭の上にまとめていた濡れた金髪を押さえていた手ぬぐいを外すと、長い金髪が溢れ出てきた。

 と、アリーシャはフェルの返事がないことに気づいた。

「……フェル?」

 訝しげに思い、黒髪の少女を見下ろしながら腰を屈めてフェルの様子を見ようとした。湯当たりを起こしているかもしれないからだ。

「大丈夫?」

 髪が湯に浸かってしまったが、気にすることなくアリーシャはフェルの肩に触れた。彼女がぴくりと反応する。

「……アリーシャさん」

 少し、硬い声音。

 アリーシャはその気配を感じて表情を引き締めた。

「……どうしたの? フェル」

 心配しつつも、頭は別のことも考えている。そんな複雑な表情で、アリーシャはフェルに声をかけた。

 しかし、フェルはうつむいたまま肩を震わせるだけだ。

 と、水面に滴が落ちた。

「……フェル、泣いているの?」

 アリーシャはフェルの様子にそう尋ねた。フェルがゆっくりと顔を上げる。

 その黒目がちの瞳は涙で一杯になっていた。そして小さくつぶやく。「ごめんなさい」と。

「……どうして謝るの?」

 アリーシャは優しい声音で訊ねた。それにフェルが答える。

「……わたしは、嘘をついているのです。アリーシャさんもアッシュさんも、良い人です。そんな人たちに嘘をついてしまうなんて……」

 溢れる涙を止められず、フェルは再び謝った。おそらく彼女は敬虔なアルスゼオス信徒として過ごしてきたのであろう。かの光の神は嘘を悪徳として嫌う。その熱心な信徒はわずかな嘘すら嫌う。

 そんな彼女をアリーシャは優しく抱き寄せた。いまのフェルの涙を見て、アリーシャは疑いを掛けるようなことはしたくなかった。いかに彼女の行動に疑いを持って観察していたとしてもだ。

 アリーシャに抱きしめられ、フェルはただ涙を流し続けた。

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