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第6話その2


「……と、まあそういう訳だから、お互いに秘密ね?」

「……え?」

 アリーシャがいたずらっぽく言うのを聞いて、フェルは目を丸くし頭をずらしてアリーシャを見た。アリーシャも横目でフェルを見ながら片目を瞑ってみせる。

「……アリーシャさん」

 その意味に気づいて、フェルは胸が一杯になった。そのまましゃっくりあげてしまう。

「……あ、ありが……とう、ござ……ま……」

「気にしないで?」

 しゃっくりあげながらお礼を言うフェルに、アリーシャは笑いながら答えて、その背中をさすってやった。

 それに応えるように、フェルはアリーシャを強く抱きしめていった。




 そんなフェルが落ち着くのを待ってから、アリーシャはフェルをシャワーから湯船に誘った。

 ギルドの湯殿はお金さえ払えば冒険者以外、一般の人でも入ることが可能だ。しかしながら時間はまだ昼前。さすがに二人以外に入るモノはいないようだった。

「ふぅ……」

 体を洗い、髪を流して湯船に浸かったアリーシャは軽く息を吐いた。もともとゴルディアス大陸には湯に浸かるという慣習は無く、東夷の果て、武蔵帝国周辺の慣習であったが、ギルド結成後、武蔵帝国側の熱心な要望を入れてギルド施設に湯殿が併設されるようになったのだが、これが疲れを取るのに実に効果的と冒険者等に受け、さらに噂を聞きつけた大衆や貴族にも瞬く間に広まり、市民権を得ていったという経緯があった。

 アリーシャも実家は商家であったが、個人で湯殿を整えるのは莫大な資金がかかるため、冒険者になるまで入ったことがなかったのだが(一般的には冷水のシャワー、あるいは桶に汲んだお湯と手ぬぐいで体を拭くのが一般的だ)、一度利用してからは病みつきだった。特にアリーシャにはある理由から疲れが溜まりやすい部分があり、かなり助かっている。

 その理由とは。

「……アリーシャさん」

「? どうしたのフェル」

 真剣な顔つきのフェルに、アリーシャは首を傾げながら返事をした。

 だが、フェルの視線は一点から動かない。

「……ソレって、浮くんですね……?」

 フェルはソレを指さしながらアリーシャに訊いた。

 アリーシャは一瞬きょとんとしてから苦笑いした。

「……ああ、そうみたいおかげで楽なのよね」

 言いながら、“ソレ”を下からから両腕で抱え上げるように持ち上げた。その迫力に、フェルの眠そうな半開きの目が見開かれた。

「おお……」

 かなり大きい。

 思わず感嘆の声を上げるフェル。

「……と、また大っきくなったかしら? いろいろ困るから増えないで欲しいのだけど……」

 腕にかかる重みにアリーシャが顔をしかめた。

「な、何言ってるんですか! ソレが大っきいことは、女のステータスですよ! 師匠が言ってました! というかアリーシャさん、練習着着ていたときより明らかに大っきいじゃないですかっ!?」

「……あなたの師匠って……。いや、体を動かすときは邪魔だから胸覆いで動かないように締め付けてるのよ。振り回すと結構痛むし。鎧も調整しなきゃいけないから、ほんと要らないんだけど……」

 困ったもんだとアリーシャは苦笑いした。だが、フェルの意見は違うようだ。

「な、なに言ってるんですかもったいない! そんな素晴らしいモノを持っていることを誇るべきです! まるでロルモの実のように大きいのにっ!」

 ロルモとは荒れ地に広がるように密生する植物で、その実は直径が半アルク(約二十五センチメートル)はある丸い実だ。ちなみにその実は皮が頑丈だが、中身は芳醇な水分と独特の甘さが有り、一般的なフルーツとして親しまれている。

「い、いやいくらなんでもロルモの実ほどの大きさなんて……」

 興奮気味のフェルに若干引きつつも、そこまで大きくないと主張しようとして、自らが抱える白い果実に目を落とした。

 たわわなそれは、確かにロルモの実ほどはありそうだった。

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