女剣聖(処女)、実はそろそろ斬られたい
ちょっとダンスィ!案件です
女性読者様に自信持ってお勧めは出来ねぇ!
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「ここで働かせて下さい!」
高級浴場の経営者に一人の少女がそう訴えていた。
「ここで働きたいんです!」
少女の名前はセイン。二人がいるオリエンタルで豪華な面談室には場違いな、田舎娘っぽい服装をしている。どうやら彼女はお上りさんらしい。
「私、やる気も体力もあります。村では鍬を振るい、獣を追って野を駆ける生活をしていたんです」
そうアピールするセインだったが、経営者ジブリールの返事はつれないものだった。
「いや……逆にきくけどさ、なんでウチで働こうとするの?君なら他にも働き口はあるでしょ、借金だってないみたいだし」
ジブリールがそう言うのには訳がある。ここは高級浴場だが一般的な浴場ではないのだ。
個室で入浴介助と接客を行う……という『名目』で経営している『特殊浴場』、所謂一つの『高級風俗店』、うっふんなお店であった。
「だって稼げるし、そこそこイメケンな金持ちと結婚できる可能性が一番高いのもここなんですもん」
「まあ、それを否定はしないけどさ……」
これは事実だ。どんな職業も上澄みは尊敬されるものだ。この国では、『高級娼婦』もそれなりに高い社会的ステータスを持っていた。
そして不要な確執や跡目争いを避けるため、裕福な商人や貴族の次男やら三男坊の結婚相手としてこの店から身請けされていく女性も一定数いた。
店は儲かり、長兄は磐石に家を継ぎ、次男三男は美人で床上手な嫁をゲット、身請けされた女性だって若さに陰りが見られる前に引退し玉の輿生活が出来るようになる。
四方よし、誰も不幸にならない。
「けど、君は嫌じゃないの?後で後悔しない?その……男性のアレコレを処理するの。いや、仕事に貴賎はないしそれで儲けさせて貰ってる僕が言うのもなんだけどさ、借金で仕方なく、嫌々やってるって娘が多いからね」
「成程、そこを心配して下さっていたのですね。大丈夫です!我が子のオムツを変えられない男性がいるみたいに、その辺は女性の中でも個人差が大きい所だと思うのですよ」
自らの胸を叩くセイン。
ドン、と力強い音がする。
女性にしては背が高く、その胸は絶壁であった。
「私は虫も触れるし、男のぽこちんも平気なタイプです!」
ね、娼婦適性あるでしょとドヤるセイン。
「うーん……ナシで」
「なんでですか!?」
というか、普通こう言うお店ってキャストが増えた方が嬉しいものなんじゃないんですかと食い下がる。
「言い辛いんだけど、キミの場合、手とか顔がウチ向きじゃないというか……」
「嘘!?」
目を見開くセイン。
「村では、素敵な手だとか美形だって評判だったのに……あ、胡桃!胡桃だって素手で割れますよ!」
「いやそれ多分『マメだらけの働き者の手』とか『女性劇団の男役』的な賞賛だからさ。というか、胡桃を素手で割れるってなんだよ」
ゴリラかな?むしろ、仕事中にうっかり握り潰さないか心配になるよ。
「そこを何とか!何とかなりませんか」
「うーん……あ、そうだ」
そこでジブリールは名案を閃いた。
「それなら君、一回女騎士になりな」
「え、女騎士!?嫌ですよ」
だって女騎士って国に忠誠を誓って剣を捧げるお仕事でしょ?私がなりたいのは、どっちかというと剣を捧げられる方なのに……
「ぽこちん触るのも害獣駆除からの解体作業もバッチこいな私ですが、戦争と人殺しだけは無理です」
「ぽこちんから一回離れて!」
ジブリールが説明するには、こう言うことだった。
今この国と隣国との関係は非常に安定していて近年戦争が起こる可能性は非常に低い。だから普段、女騎士の仕事と言えば精々が辺境調査や低級魔獣の駆除程度、そしてーー
「二年勤めれば在団証明書を書いて貰える?」
「ああ、元女騎士というのは色んな仕事で需要があるんだ。例えば体力と根性と戦闘力のあるメイドが欲しい金持ちは多いだろう?」
で、ここからが大事なんだけど……とジブリールは指を立てる。
「多分、『元女騎士』の娼婦がいたら人気が出る。たとえ手がマメだらけで、顔がイケメン系で、胸が絶壁でもだ」
「なんで?あと、今私ディスられてます?」
事情が飲み込めないセインにジブリールは説明する。男というのは、元◯◯といういう肩書に堪らなくそそられる生き物なのだと。
「うわ、男ってサイテー」
「返す言葉もない」
過去には初めから高級娼婦になるつもりで、まず受付嬢や劇団員を半年ほど続けた娘もいたと言う。
「……で、どうする?ちなみに、元女騎士なら多分月給はこれくらいで」
「うわ!こんなに貰えるんですか!?」
こうして、セインはこの翌日入隊試験にパスし晴れて女騎士となった。
なお、この時ジブリールは
まあ、2年も女騎士をやればその間に頭も冷えて、そのまま公務員として堅実に生きていくかもしれないけどね。
でも、娼婦もうまい具合に身請けされる人ばかりじゃないし、あの子にとってもそっちの方が幸せかもしれない。
なんて事も同時に考えていた。彼は基本的に、法令を遵守するし、何よりお人よしなのである。
***
さて、それからおよそ二年後
「まだ、セインをここで働かせないでくれ!」
高級浴場の経営者に一人の女騎士団長がそう訴えていた。
「え、流石にそれは……勿論、私も騎士を続けた方がいいんじゃないかと内心は思っていますが、約束も職業選択の自由もありますし……」
「彼女には素晴らしい騎士の才能があるんだ!そして……ぶっちゃけ騎士団に人手が足りないんです!お願いします!」
そういうと女騎士は、跪いて頭を下げた。東洋より伝来したナンバーワンお願いスタイルである。
女騎士団長の言い分はこうだった。
一年程前に虫型の魔物が大量に湧く魔力災害が起こり女騎士は暫くの間キツイ、汚い、危険の不快な3K職場になった。
しかし、公務員ゆえに給料はあがらずやってらんねーと退職者が続出。新人だが非常に高い戦闘力があり「らんらんらら……」と鼻歌混じりに仕事をこなす程心身共にタフなセインは人手不足の現在、代えがきかない存在だという。
「なのに、アイツもうすぐやめる気満々なんだ!あと、私もそろそろ彼氏と結婚して家庭に入りたいのに『騎士団長の後任が決まるまでは絶対辞めるな』と上層部から凄いプレッシャーが……」
もう魔力災害自体は終わって、残るは湧き出た魔物のあとしまつだけだし、来年には新採用者も入るし、セインが入隊二年の条件を満たせばすぐ女騎士団長にできるから……と懇願される。
「なあ、あの子はまだ若いだろ。私はもう32歳なんだよ。クリスマスケーキどころかニューイヤーも終わりそうなんだ!婚活で作った彼氏もこれ以上は待てないと言っている。」
「おおう、シビア……」
「ぶっちゃけ、私が寿退職したらセインもいつ辞めてもいいから!よく分からんが、娼婦だって元女騎士より元騎士団長の方が箔がつくんじゃないか?」
それはまあ、そうかもしれない。
騎士団長も一年半勤めれば履歴書に書けるということをセインに説明、受諾を得たことで彼女はもう暫く、騎士団長として働くことが決まった。
***
さて、それからさらに二年後
「何で働かせてくれないんですか!?約束を破る気!?」
「いや、君はもう騎士団長じゃないから……」
セインとジブリールはそんな問答をしていた。
というのも、少し前にお忍びでこの国の王がやってきてこんな密談があったからである。
「セイン団長をここで働かせないでくれ」
「こ、国王様!?それは勿論、私も彼女は女騎士団長を続けた方がいいんじゃないかと内心は思っていますが……」
「半年前、ワイバーンの大群が王都を襲ってきたじゃろ?あの時も大活躍し、男も参加する国際剣術大会でも二連覇を達成した彼女には近日『剣聖』の称号を送る事が決まった」
「凄いですね?!」
剣聖、それは竜をも上回る人智を超えた戦闘力をもった英雄にのみ与えられる称号だ。この世界には生まれつき異常に強い大天才がいて、セインはそれに該当するらしい。
もちろん皆から尊敬、崇拝……そして『畏怖』の対象にもなるし、国防の要や戦争抑止力にもなる。
「ぶっちゃけ、君の強さは有名になりすぎたんだよ。一般人にとっては人の皮を被ったドラゴンみたいなもんだから……」
「……ぽこちんも縮み上がってしまうと」
ガックリと肩を落とすセイン。
約束を反故する形となり、流石に申し訳ないと思ったジブリールはこの日セインに高い酒を奢る事に決めた。
そして二時間後、セインのやけ酒に相伴したジブリールはすっかり酔っ払っていた。
「でもさ〜高級娼婦よりお給料もいいし、貴族からの縁談も来るんじゃないかな?結果オーライという事にならない?」
「そ、そうですかね!?そうかも!」
「そうそう、きっと大丈夫だよ。君の旦那となる人が羨ましいくらいさ!」
「言いましたね。なら、もし24までに結婚出来なければジブリールさんが貰って下さい」
「ははは、いいとも!」
「言質とりましたよ」
結局その後、貴族からいい感じの縁談はこなかった女剣聖。
実はそろそろ斬られたくなってきたセインにジブリールが己の剣を捧げるのは、この三年後の事である。
本日、長編小説の投稿を始めました。
完結まで毎日投稿します。
監獄ダイエットwith異世界ラブコメディです。
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