「娑婆へ」
〝コンコン〟
「please please me!」
今度はそう来たか。
次の日小鬼は試験で、俺はやることもなく、陰陽師の件で悶々としていたので、この世界の只一人の〝知人〟ジョンレノンに話しを聞いてもらいに来たのだ。
「オー!陰陽師の事ならヨーコに聞いたことあるよ。陰陽師は人を助けるのが仕事ね。ポストマン?いや、ポリスマンみたいにね。」
「でも、俺に務まるかどうか自信がなくって…。俺、危険を察知する能力と雷を落とす能力しか無いんですよ…。」
「オーマイガ!僕なんかギター弾いて歌うだけだよ!」
「じゃあ能力交換します?」
「………。嫌、交換しない。」
…………だよね。
その後、俺たちはギターを弾いて歌ったりお茶を飲んだりして愉快な時間を過ごしたが、ジョンがまた毛沢東に嫌がらせの悪戯をしに行こうと言い出したので、丁重にご辞退申し上げて宿舎に戻った。
「何?もう試験終わったの?」
小鬼は困り笑い。
「結果は?」
「結果は後日ネットで発表となります。」
牛頭が説明してくれたが、中々地獄も進んでる。
「お帰りになる前に閻魔様が個人的にお会いしたいとの事です。」
「え、なに?個人的にって…、俺…?」
女王の執務室には歴代の大王の肖像画が飾られているのだが、その一人一人が鬼の様な形相で応接ソファーに座る俺を睨みつけていた。
「あなたに陰陽師の能力の一つを渡したいのよ。」
「ジョンみたいにギター弾いて歌う能力の方がいいんですが…。」
ダメ元で聞いてみた。
「却下!」
…………だよね。
「未来を変える力よ。物事には原因と結果があって、それが因果律と言うもの。原因をトコトン遡ればビッグバンに突き当たる。この世の事象一つ一つの結果をすべて予想して計算すれば未来は確定的に見えてくる道理だけど、そんな膨大な計算は神にも無理だわ。だから身の回りのほんの小さな世界の事象のほんの少し先の予想なら計算出来る能力。少しでも未来が見えれば原因となる事象に手を加える事もできるでしょ。」
「チョットよく分かんないっす。」
「う〜ん、じゃあこうしましょう。あなたが仮に1980年12月8日、ニューヨークのダコタハウス前でマークチャップマンに出会ったとする。ジョンレノンのファン同士声をかけて握手をした瞬間にあなたの脳裏に彼がジョンを射殺する映像がうかぶ…。さぁ、どうする?」
「そうですね…、何かするでしょうね。チャップマンを殺す?」
「殺すのはダメよ。人を殺せばあなたの人生が壊れてしまうわ。でもあなたがなんらかのアクションを起こせば未来は変わる。」
「なるほど、わかったような気がします。」
「では、そなたに能力を授けよう。服を脱いでソファーに横になりなさい。」
「えっ、どういう事です…?」
「能力を授ける為にあなたと〝まぐわう〟のよ!」
青天の霹靂 part 3!
「急に言われても…、心の準備が…。」
「そう言うと思って体操着とブルマー用意してきたわ!」
なんでもお見通しの閻魔女王…。
娑婆への帰り、また牛頭の舟で三途の河を渡っていると、舳先の小鬼がまた指を刺した。近づくとあの〝ポチまろ〟だった。
「ぷはーっ!あれ、皆さんまたお会いしましたね! なんか手違いがあったから帰ってよろし、なんて言われたんすけど、だったら豪華クルーザーでお送りしますぐらいあったってバチは当たらないっすよね!」
「まぁまぁポチまろさん、今回も送って行きますから。」
牛頭が宥める。
俺は、あの世へ行く途中ですれ違ったろくちゃんの事を考えていた。ちょい先の未来がわかる能力がもう少し早くこの手にあったら、ろくちゃんの未来も変えられたかもしれない。まぁでも、ろくちゃんの未来はすでに医者が見ていたにも拘らず、変えられなかったんだからなぁ…。
♪ In the town where I was born
Lived a man who sailed to sea ♪
(yellow submarine. word by Lennon / McCartney)
ボンヤリとろくちゃんの事を考えながら、俺は無意識に歌を口ずさんでいた。
ヤバイヤバイ、この歌はやばい歌だった! 気をつけよう…。




