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Little Boogie man & Me 小鬼と俺の黄泉奇譚  作者: クリステル


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魔の山の大賢者


「パトリオットアロー!」


骨子ちゃんが放った矢は急降下で向かってくるワイバーンの数と同じだけ分岐して迎撃する。遠距離攻撃で骨子ちゃんに並べる者はうちのチームには居なかった。俺達の仕事は落ちたワイバーンにとどめを刺して素材と魔石の回収するだけだ。

渓谷を渡ると今まで敵意を見せず攻撃してこなかったワイバーンが豹変した。ここから先は縄張り内と言うことだろう。


「おおー、可愛いゴーレムだな!」

せっかく手に入れた土魔法のゴーレム錬成を精査するべく、昨夜の反省も込めて自爆しない普通のゴーレムを俺は作っていた。

うん、大きさは子供サイズ。トコトコ器用に俺の隣を歩いてワイバーンの素材改修を手伝ってくれている。


「セシルさん、この世界の〝魔法〟って何なんですかね?」


俺がこっちに飛ばされるキッカケの転生案件ではチート選択に〝属性選択〟があって俺が選んだわけではないが〝水魔法〟が選択されて初歩の水魔法が使えるようになっていた。まあ雷系は最初から持っていたとして、こうして土魔法まで生えてきた事を考えるに、属性って何?魔法って何?魔力って?と基本的な疑問に突き当たる。


「魔法か…。いちよう〝女神様〟に与えられた特別なチカラというのが一般的な認識なのだがな…。」

「何だか歯切れ悪いですね。」

「他の世界の神様は知らないがこの世界の〝女神様〟はどこか抜けているというか…、人間味があるというか…な。」

同意を求めたくもなるか。


「セシルさんは風魔法で天候操作までできますよね。」

「そうだな…、コレはもう〝大魔法使い〟の領域だな…。」

少し照れてるセシルさん。

「セシルさんレベルの魔法使いは他にもいますか?」

「いや、それこそ物語りの中でしか聞いたことがないな。だがそれもこれもエンマ殿に鍛えられたからこそだぞ!」

うん、結構スパルタなパワーレベリングだったかな?


「でも、そんなセシルさんでもウォーターボールは使えない?」

「え…、ウォーターボールか?考えた事もなかったが…。」

「じゃあちょっと試してみましょうか。魔法はイメージがカギだと言われてますからね。」

「お、おう…。」

「では、初めに俺がお手本をみせますね。空気中の水分が魔力に吸い寄せられて集まってくるイメージです。」


手のひらに意識を集中させて魔力を練り込んで水分を集める…。


「ウォーターボール!」

〝パシャー!〟

「ではセシルさん、どうぞ。」

「お、おう…、では。」


セシルさん、腰を落として両手をお腹の辺りに…、あれ、このポーズは○メハメ波? お手本がそうだった?

目を閉じて集中するセシルさん。


「ハッー!」

〝パシャー!〟

「キャイ〜ン!」

「出来た!」

「あ、フェンリルに当たった!まだいたのかアイツ。」


「セシルさん、やはり属性の固定概念が可能性の蓋をしていたようですね。」

「なるほど、そういう事もあるのか!」

「では、ファイアーボールいってみましょうか!」

「え、エンマ殿。欲しがりだなぁ!」


「ファイアーボール!」

〝ボファー!〟

「キャイ〜ン!」

「フェンリルワザとか?チョロチョロしてると危ないぞ!」

「エンマ殿!こんなに多属性の魔法を使えては〝大賢者〟も夢ではないな!」

「うん、『大賢者セシルの大冒険!』いいじゃないですか!」

「そ、そうか?わ、私が賢者様かぁ?」

うんうん、褒めて伸ばすのが一番だ!

「ほら、そこのフェンリル!こっちにおいで、飴ちゃんあげよう!」

ん?セシルさんのスキルに〝大阪のオバチャン〟生えてる?


「我に人の食い物を寄越せ!さすれば人の守護者たらん!」

まさか、グリフォンまで人に餌付けされてる?


「ほらほら、そこのグリフォンも並んで、ほら飴ちゃんあげるから!」


子供達と一緒に飴ちゃんの列に並ぶグリフォン!うーんシュールだなぁ。

魔の山ってそういう感じ?


因みに、俺とセシルさんの魔法のやり取りを見ていた子供達も軽々と属性の壁を超えてしまってファイアーボールやらウォーターボールやらを打ち出し、我がチーム大賢者だらけだ!

で、自分の賢者株が相対的に下がったセシルさんと何故か属性の壁を超えられない勇者のろくちゃんが落ち込む事になった。


「で…、ろくちゃん。アレは何?」

巨大な岩がゴロゴロと転がっている風景と同化して200mくらい近づくまで気づかなかったのだが、どう見てもドラゴンのような物体が目の前にうずくまっていた。

うん、でかい!

いや、ベヒモスよりは小さいか?


「そういや前回もいたな。」

「生きてるの?」

「多分寝ているんだと思う。前回は何事もなく通り過ぎたからな。」

「今回も行けると?」

「まあ大丈夫だろう。」


とりあえず俺とろくちゃんでドラゴンの前に哨戒に立って子供達をやり過ごす事にした。


「これは大賢者殿!」

突然ドラゴンが野太い声で話しかけてきた。


「何?」

「ニャニ?」

「何ですか?」

「何だ?」


さっき大賢者となったジョンとニアリーと骨子ちゃんとセシルさんが何故か当然のように返事をする。


「コレは…、可愛らしい大賢者様達じゃな!我は驚いたぞ!」

「可愛らしいなんて照れるな…。」

「照れるニャ…。」

「照れます〜。」

ジョン以外の大賢者が照れる。


「それはともかく、貴様は何だ?」

「俺は勇者、ロクロー・ブルースマンだ!」

「うん、以前も通ったから知っておる。その隣の貴様じゃ!」

お、俺?


「エンマ殿は我らの師匠だ!」

「そうニャ!」

ドラゴンに喰ってかかる大賢者様達。ドラゴンなんか怖くないって?


「閻魔…、という事は鬼龍院様の御眷属か?」


あれ?ここでもハナちゃんのネームバリューが?


「妻は今産後なので俺が閻魔代行なんですが、事故で異世界に飛ばされ中です。ドラゴンさんは異世界転生魔法使えたりはしませんか?」

「転生魔法か…、悪いが我には使えんな。」

「そうですか…。」

ドラゴンが魔法?うん、イメージ無いな。聞いた俺がアホだった。


「ところでこの先は魔族の住む領域だが、そなたらは問題など起こさんだろうな?」

「おう、20年ぶりに魔王に会いに来ただけだからよ!」

「それならば良いが…。」

「えーと、ドラゴンさんは魔族の守護者的な方なんですか?」

「ギオンだ。」

「え?」

「我が名は〝ギオン〟と申す。我は誰の守護でも無いが、あえて言えば〝調和の守護者〟だな。調和を妄りに乱す者は誰であろうと許すわけにはいかん。」

「なるほど、心に深く刻みましょう。」

「その言や良し。ところでそこのグリフォンとフェンリルは何をしておる?」

「ギュエ!」

「フエ!」

ギオンさんの一睨みに消え入りそうに小さくなる哀れな神獣2匹。

そのまま回れ右して魔の森の方角へコソコソと消えていった。


「人の食い物を寄越せと付き纏われて困ってました。ありがとうございます。」

「されば大賢者セシルよりギオン殿にお礼の飴ちゃんをあげよう!お口を大きく開けるがよい!」

「お、おう…、こうか?」

「それ!」

「ガリッ…。お、おう!コレは甘露!

我に人の飴ちゃんをもっとよこすが良い!さすれば人の守護者たらん!」

オイオイ、調和の守護は?


急に威厳が値崩れしたギオン様に早々に別れをつげて俺達はさらに歩く。


しばらく進むと村らしいものが見えてきた。村の入り口に立つ2本の柱。魔物から村を護る防護壁も生垣すら無いオープンな村だ。ここまで来ると魔物の脅威は無いのか?


「こんにちは旅のおかた。」

俺達を警戒するでもなく魔族の村人が大らかに声をかけてくる。

魔族と言っても少し肌の色が濃くて角があったり無かったり、背格好も俺達と大して違わない。そもそも魔族とはなんぞ?

「こんにちは、この村には宿屋とか有りますか?」

そろそろ日が暮れようという時間だ。

今夜はこの村で泊まれるか、狐御殿に帰るか決めたいところだ。

「あいにく旅人も滅多にないからこの村に宿屋は無いなあ。この先の街になら何軒か宿があるよ。」

親切に情報を提供してくれた村人に礼を言って俺達は村を出た。


「20年前俺達が騎士団を引き連れてここいらを通った時には村も街ももぬけの殻だったぜ。多分どっかに避難してたんだろうなあ…。」


さっきの村では敵意のようなものは一切感じられなかったが、俺達はよそ者、異分子だ。何が起こるかわからない場所で警戒しながら寝るのでは疲れも取れないだろうから、街道沿いの藪の中にカラーコーンを立てて俺達は一旦領都に戻った。


「エンマ様、お帰りなさいませ。王都のサーモス様からお手紙が届いてます。」

狐御殿のお留守番シゲコさんにテスラー送信機オクレルーンで届いたサーモスさんからの手紙を渡された。

曰く、


『王陛下と王太子との間で緊張感が高まっています。王陛下は怪しげな者達と王城に引き篭もり、ほとんどの臣下と民衆は王太子を支持して王太子の住居である東宮に集結中。衝突は時間の問題かもしれません。』


俺は無言でセシルさんにサーモスさんの報告を手渡す。


「なんと…、王都がそんな事になっているとは…。」

「セシルさんはこんな時どうしますか?」

「私は…、二度三度王陛下と王太子にはお目通りを得ているが、立場としては領主の長女でしかないのでな…。私が王都に行って何か出来る事も無いだろう。」

「ならよ、次の街から魔王城までは目と鼻の先だからよ。明日にはサクッと魔王に会って帰ってきてから考えようぜ!」

うん、ろくちゃんらしい問題の先送り術。持って生まれたスキルだな。


その後、シゲコさんの蕎麦を皆んなに振る舞ってその夜は解散となった。


「あ、虎治郎くん。今の蕎麦の代金は俺がまとめて払うから。君そういうのキッチリしたいでしょ。」

「あ、はい。ありがとうございます。では、今後もそのようにお願いします。で、こちら3店舗の収支まとめましたのでご確認下さい。」

虎治郎くんに渡されたソコソコ分厚い紙束。

「え、もう?仕事早いねー!そういえば温泉街は今日が初日だったねー。」

ジョージ君達がんばってるかな?


「え、こんなに売上が?」

「はい、此処と王都のお店の噂が先行していたようでして、開店前から行列が出来ていたとジョージさんから報告がありました。つきましては王都の貴族街の近くにも高級志向の店舗を出店するのはどうでしょうか?」

「お、おう。攻める気満々だね!

あ、でも今はちょっと王都の治安に問題があるみたいなんだ。近々に俺も王都に行くと思うからその時は虎治郎くんも一緒に行こうか。」


「では、明日早朝にここで待ち合わせましょう。」


前世を含めても王様には会った事ないけど、この国本当どうなってんだろう…。


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