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Little Boogie man & Me 小鬼と俺の黄泉奇譚  作者: クリステル


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青天の霹靂パート9


奴隷商か…。


そういう概念がない近代社会から転生した身としては違和感しかないなぁ…。

まぁ、俺達も所詮は企業の奴隷だったりお金の奴隷だったり生活の奴隷だったりするか。本当に自由な奴なんていないのかも知れないなぁ…。

なんて哲学的な事をぼんやりと考えながら歩いていたら着きました。


〝ドレイン奴隷商会〟


もう、ネーミングがね!韻を踏んじゃってるし!


店に入って事情を説明すると応接室に案内されて会頭登場!

うん、ドレインさん、普通のカッチリした人だった。


「これはニアリーさん!皆さんに良くしてもらってますか?」


へ?ニアリー奴隷だったの?


「セシルニャンも皆んなも良くしてくれるニャン!」

「そうですか、それは良かったですね。あ、これは失礼しました。私はこの商会の会頭を務めております〝ドレイン〟と申します。どうかお見知り置き下さい。」

「俺はエンマでコイツは息子のジョンと従魔の骨子ちゃんです。ニアリーとも今は同じパーティーで活動してます。」

「なるほどエンマ様のお噂を最近良く聞いておりましたのでお会い出来る機会を心待ちにしておりました。本日はその機会を得て大変嬉しく思います。」

どんな噂かは聞かないぞ!うん、絶対に聞かない!

「で〝元勇者様〟がここに居るって聞いて来たんだが…。」

「ロクロー・ブルースマンですね。今こちらに連れて参ります。」


お待ち下さい、というとドレイン氏は応接室から出ていった。


「ニアリー…。」

「ニャンだ、エンマーニャン?」

「お前も苦労して来たんだなぁ!」

俺が慈しみを込めて頭を撫で撫でしてやると、

「止めろニャ!獣人なんてそんなもんニャ!今は楽しいからいいのニャ!」

止めろと言いながら満更でもなさそうなので更にガシガシしてやると、隣の骨子ちゃんも頭を俺の方に突き出してきた。

〝うー、うー、〟

ヨシヨシ、皆んな良い子だ!

あれ?ジョンもか?

うん、腕が一本足りないや。


〝ガチャリ〟


「おー、こんなとこで何やってんだよー?」


「ろくちゃん?」


なんと、ドレイン氏の後から応接室に入って来たのはかつての友人で酒の飲み過ぎで肝臓をやられて死んだあの〝ろくちゃん〟だった!


「ろくちゃんが〝ロクロー・ブルースマン〟なの?」

「そうだけど…。」

青天の霹靂パート9


「え、新転生法の適応対象者って事?」

「あー、なんかエロい閻魔の姉ちゃんがそんな事いってたな。実は俺いじめられっ子だったんだよ。」


ヒトの妻を〝エロい姉ちゃん〟なんて呼ぶなー!

まぁろくちゃんが勇者様だったらそのクズっぷりも納得だよ。生前から酒と博打が大好きだったからなぁ…。


「取り敢えず俺はろくちゃんを買取に来たんだよ。俺の金じゃないから後で本人にお礼言ってね。」

「おう、助かるぜ!借金奴隷って意外と不便でよー!」


そりゃそうだろう。


取り敢えずドレイン氏にお金を払って契約成立。

はぁ…。なんか溜め息がでるわ…。


で、店を出るのに商品である奴隷が陳列された小部屋の前を通り過ぎようとした時に、


「とうちゃん…。」


ジョンに呼び止められた。


「どうした、ジョン?」

「この子、買いたい…。ダメ?」

ジョンが指したのは両手が肘から欠損した獣人…狐系? だった。

「ジョンはどうしてこの子を買いたいんだ?」

ジョンは俺の耳元でゴニョゴニョゴニョ…。


「マジか?」


「こちらの商品は冒険者でしたが魔物に腕を喰われて働けなくなり、自ら奴隷となった狐人です。労働力としての価値も低いので銀貨3枚と大変お安くなっております。」

「うん、分かった。この子も買い取ろう!」


ドレイン氏によると異世界アルアルの奴隷紋とか隷属の首輪とかはこの世界にはないらしい。法律でも奴隷は護られているから非人道的な扱いをすれば犯罪となる。ただ、奴隷の身分はついて回る。例えば逃げてどこかで身分証を手に入れようとしても〝奴隷〟という事は必ず身分証に提示されてしまう。身分証が無ければ生活にかなりの制限がかかるのだ。


「20年前にスゲーチート貰って転生したんだ。歳も若くなって髪の毛なんてフッサフサさ!」

ギルドへの道すがら奴隷のろくちゃんのお喋りは止まりゃしない。


「え? でも今は…?」

「そーなんだよ! 転生してチート貰ってもDNAまでは変えられなかったみたいだな、ガッハッハッハー!」


ろくちゃんの頭は去年三途の川で別れた時のまま、ツルッピカのスキンヘッドだった。まぁ、頭だけじゃなく見た目も中身も全てあの時のまんまっぽいな。

魔王を倒してやる事なくなって暇だった時に悪い奴に唆されて魔獣賭博にどっぷりとハマったのが運の尽きらしい。

うん、ろくちゃんらしい。


取り敢えずパーティーメンバーは一旦ホテルカリホルニアに帰す事にした。狐人の面倒見ないといけないしな。後で合流するよ。


ギルドに着くとセシルさんは不在で館の方に来てもらうようにとの伝言があった。


「馬車をご用意しております。」


セシルさんの執事を名乗るサーモスさんにドアを開けてもらって俺とろくちゃんは馬車に乗り込んだ。

異世界初の馬車!

うん、なんて事ないね。思った程揺れないし近代工業技術でチートは…無しだな…。


10分程馬車に揺られて領主の館に到着。うん、それなりの大きさと威厳のある建物。イメージ通りだ!

応接室に通され、セシルさんを待つ間、ろくちゃんには今回の身受け代、金貨200枚を払った人だからよ〜くお礼を言わなきゃだよと釘を刺しといた。


「これは勇者様、お久しぶりでございます。」


セシルさん、初めて見る気合の入ったドレス姿で優雅なカーテシーの礼をするのだった。さてはセシルさん、勝負ドレスに着替える為に館に呼んだな!


「え…? もしかしてセシルちゃん?なんだあの小ちゃくて可愛かった女の子が別嬪さんになっちゃって…。」


「お…、覚えていてくださったのですか…? そ、それはとても嬉しゅうございます…。」

あらあら、セシルさんお顔を赤らめて乙女になっちゃってるよ!


「ろくちゃん、お礼言わなきゃでしょ!」

「お、おう。今回買い取って貰ってありがとな。今の俺は勇者でも英雄でもない只のクズ奴隷だからな。セシルちゃんの好きに使ってくれよ。」


「ロクロー様…。取り敢えず両親にもお会い下さい。あの時のご恩も未だ返し切れてはいませんので。」


セシルさんろくちゃんの腕を取り応接室から退場。

うん、俺は空気だ。

もうろくちゃんの世話はセシルさんに任せよう。うん、それが一番いい。

サーモスさんに館を辞する旨を伝えるとホテルまでまた馬車で送って貰う事になった。


「最近のお嬢様は表情が豊かになられました。苛立ちも楽しさも以前は読み取る事が出来ませんでしたので…。」

「それって…、どういう…?」

返答に困る事ってあるよな…。

「エンマー様がこの街にいらしてからです。私はお嬢様の為にその変化を歓迎しております。」

「そうですか…。」

やはり返答に困る話しだった。

でも、名前通りの温かい人なんだな。


「凄いんだよ、ジョンニャンは!」

ホテルに戻るとニアリーが興奮気味だった。骨子ちゃんも〝カタカタカタ…〟

ゴメン、俺だけ君の言うこと分からないんだよ。


「狐人さんは?」

「今はグッスリ眠ってる。」


奴隷商でジョンが俺に耳打ちしたのは治癒魔法のレベルが上がって〝再生〟が使えるようになったという事だった。

「腕がピカーってニャって、光る砂がサラサラサラーってニャって、そしたらもう再生してたニャン!」

うん、俺も見たかったよ!

〝カタカタカター〟

ゴメンて骨子ちゃん!

「狐さんの服とか買って来てくれた?」「ニャ、スっごく可愛いのあったニャ!」

うん、なんかスっごく和服っぽい。

作務衣って言うの?

イメージにピッタリだね。


「あの〜…、すいません…。」

「あ、狐さん起きたんだね。」

「オレ、ゴンって言います。色々ありがとうございます、腕まで生やして貰って…。オレ何でもしますから!」


まさかの〝ゴンギツネ〟!


「とりあえず綺麗にしよっか。このホテル大浴場あるから。」


はっ!


自分で言って〝はっ!〟っとした!

なんで今まで気付かなかったんだろう?

俺、浴槽転移あるじゃん!


結果…………。


お風呂場テレポーテーションで世界を跨ぐ事は出来ませんでした。残念!


で、綺麗になったゴンちゃん。パーティーに入れてステータスを確認したら、


ゴンちゃん

種族……獣人(狐人)Lv4

HP……38/38

MP……45/45

SKL……器用、真面目、求道、変身。

狐魔法Lv4……狐火、

水魔法Lv5……飲料水、エビアンの水、ウォーターボール、狐の嫁入り。


うん、打ってつけだね、ジョン。


「じゃあ、ジョン君はゴンちゃんにアレの指導しといて。俺はちょっと物件見てくるから。」

「オッケー、とうちゃん!」


うん、阿吽の呼吸だ!親子だからねー!


ギルドに不動産屋さんを紹介してもらって条件を言ったらピッタリの物件があったよ!

あとは看板屋さん…、なんて無いだろうからペンキ買って自分達で作るか。

ちょっと森に寄って材料を調達。

うん、ノコギリ無くてもウォータージェットでサクサクだー!


「ただいまー!」


「ゴンニャンってば凄いんだよ」

ホテルに戻るとニアリーがまたまた興奮気味だった。骨子ちゃんも〝カタカタカタ…〟

もう、ゴメンて…。


「美味しいお蕎麦をニャーっと作れるようにニャッたニャ!」

「ヨシヨシ。じゃあ物件契約してきたから皆んなで行ってみようかー!」


「「「「おー!」」」」


飲食店を居抜きで借りられる物件という条件だったので、テーブルに椅子、什器まで揃ってるからあとは看板出せば直ぐにオープン出来る。

金貨1枚で半年の契約をしてきたが、直ぐに元を取って家賃も払えるようになるだろう。

俺が大きな木の板に赤い塗料で〝ワザと〟下手ウマな書体で(あくまでワザとよ。)書いた店の名前は、


『赤いきつね蕎麦店』


うん、俺だって異世界に爪痕残したいじゃん。


今は亡き友人のろくちゃんに合掌。

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