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Little Boogie man & Me 小鬼と俺の黄泉奇譚  作者: クリステル


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青天の霹靂パート6


はい、では貴方の来世は〝話しをするチワワ〟って事で、次の方案内して下さい。」


閻魔女王である我が妻ハナちゃんの出産が一週間を切った今、俺は閻魔代行として閻魔丁のトップが座る裁きの椅子に腰掛けて重大犯罪者達の来世決裁を仕切っていたのだった。


「ちょっと待ったー!」


神経質そうなその声が決裁の間に響き渡るとその場にいた補佐官の書記2人も相棒のジョンも警吏の牛頭達も一様にうんざりした表情で顔を顰めるのだった。


「阿弥陀殿、またあんたか?」


イライラと苦虫を噛み潰したような表情を隠しもせずに吐き出したのは、俺の右に控える書記の直江兼続直江兼続(なおえかねつぐ)さんだった。


「犯罪者といえども弁護人をつけるのは当然の権利ですぞ!」

「あんたねぇ…。」

「まあまあ直江さん、とりあえず言い分だけは聞きましょうよ。」

「閣下…、」

直江さん大きなため息をふ〜。

なんか不味かったかな?


「閣下の寛大な御心に甘えて申し上げます。この男は殺人を犯した悪人ではありますが、かつて3回六字名号を唱えております。よって畜生への転生ではなく我が極楽浄土への転生が妥当だと勘案いたします。」

阿弥陀さんに立板に水的にまくしたてられて、俺タジタジ…。

「六字名号って何?」

俺が小声で左の書記小野篁(おののたかむら)さんに聞くと、

「閣下、南無阿弥陀でございますよ。」

と親切に小声で教えてくれた。そう、篁さんは大概は親切な爺さんだ。でも、右の直江さんとはメチャクチャ仲が悪く、間に挟まれた俺はいつも胃に穴があく思いの中間管理職だよ。


「意義あり!」

「はい、直江さん、どうぞ。」

「確かに6字名号を唱えたものは極楽浄土に転生させるという阿弥陀殿の本願は存じておりますが、それはその悪人が本心から阿弥陀殿に帰依し、浄土への生まれ変わりを切望しながら六字名号を唱えた場合のみ適用されるルールであり、今回の悪人が唱えた3回は甚だその点の信憑性に欠けるものと言わざるを得ないでしょう!」

直江さんは昔、阿弥陀さんの信者に散々な目に遭わされたらしく個人的な感情も含めてバッサリと阿弥陀さんの主張を切り捨てたのだ。

「成程尤もな話しだね。南無阿弥陀くらい俺も言った事あるしね。ソコのところどうなの、悪人君?」

俺が殺人犯の悪人に話しを振ると、そいつはニヤリと嫌な笑みを浮かべて、

「そりゃ当然阿弥陀様の本願に真底御縋りしたくて思わず唱えた〝南無阿弥陀〟でごぜぇやす、はい。」

といけしゃあしゃあと答えるのだった。

「コレはアレだね、審議だね。ジョン、アレを持ってきて。」

「Yes,sir!」

小鬼のジョンが小走りにバックヤードから持ってきたのは〝浄玻璃鏡じょうはりのかがみ〟と言って嘘を見分ける便利アイテムだった。

「それじゃ悪人君、もう一度この鏡の前で言ってもらっていいかな?」

悪人君額から脂汗ジトリ…。


「あっしは阿弥陀様の…、」

『ブー!』

悪人君がみなまで言う前に浄玻璃鏡が真っ赤に光って反応した。


「阿弥陀…、」

『ブー!』

浄玻璃君容赦ない。


「阿弥陀殿…、嘘つきの舌を抜く刑は人道上の見地から撤廃されて久しくはありますが、閻魔丁を誑かそうとする悪人は畜生落としが相応だと考えますが如何に?」

直江さんも容赦なくここぞとばかり畳み込む。


「ち、畜生!つ、次はか、必ず勝つからなー!」


阿弥陀様ったら涙目で退出…。


「篁さん、阿弥陀様って何時もあんな感じなの?」

「はい、先日も真言の信徒を無理矢理極楽浄土に連れ込んで差し戻された案件が御座いました。」

一同またまた溜め息ふ〜。


「はい、皆んな気を取り直して、次行こう!」

こんな時はリーダーが場を引き締めないとね。俺、ちゃんと仕事出来てる?うん、出来てるよハナちゃん!



「閣下、次の案件は新法の適応対象者となります。」

直江さんの指摘に研修期間に学んだ記憶を手繰り寄せる俺。

「確か20年くらい前に出来た新転生法で、イジメやらブラック企業で一定の辛苦を舐めた者は異世界に転生させるって言うアレだね。」

ついでに言うと新法の暫定運用期間中は閻魔様直々に裁決する事になってるらしい。

「〝転生ダンプ〟に弾かれた者も対象となっております。」と篁さん。

「先日〝転生列車〟の運行も始まっております。」と負けず嫌いな直江さん。

そう言えばそんな幼女の話しを現世のアニメで観たなぁ…。


「はい、じゃあ案内して!」

仕事は楽しく張り切っていきましょう!なんせ俺、もう直ぐ一児のパパ!

あ、小鬼も入れたら二児か。



「はい、では貴方には前世の記憶を持ったまま異世界に転生するか記憶をリセットして地球の輪廻に戻すか選択する権利があります。どうしますか?」


「えーと…、チートな特典とか無いんですか?」

そうなるよねー、うんうん気持ちはわかるよ。

「どうなの、篁さん?」

「〝魔法の属性選択〟か〝武技系のスキル選択〟どちらかになります。」

「じゃ、水魔法でお願いします。今トレンドは水ですから!」

「了解しました。では…、えーと、転生魔法はどっち?」

「僭越ながらそれがしが。」

直江さん、ちょっと得意げ。篁さんちょっと苦虫。知識の篁さんに実務の直江さん。いいコンビだよ君達。



女王様の出産秒読みという事もあり、俺も含めた皆んな確かに浮ついていたんだと思う。妙にソワソワして…。


直江さん、目を閉じて転生魔法を唱え始める。


薄らと対象者の周りに浮かび上がる魔法陣。


牛頭が案件終了を見計らって休憩のお茶をお盆に乗せて運んで来る。


次の案件の資料抱えて牛頭の後を歩く小鬼のジョン。


裁決の間の扉が勢いよくバーンとあいて駆け込んでくる貧乏神君。


「閣下、女王様の陣痛が始まりました!ご出産間近で…、」


マジか!


その後の事象は何故かスローモーションになってしまった。


貧乏神君の報告が終わるか終わらない内に驚きの表情で振り返る小鬼ジョン。


裁決の間の階段にジョンが躓き、書類をばら撒きながら前へ倒れ込む。


同じく驚いて振り返っていた牛頭に書類の雨が降り、やはり階段に躓く牛頭。


牛頭が持っていたお茶がお盆ごと投げ出され、転生魔法を今正に唱え終えようとしていた直江さんに盛大にお茶の雨が降りかかる。


直江さん、アチー!と、体勢を崩して対象者から俺の方へクルリと向きを変える。


俺の座っている椅子の周りに浮かび上がる魔法陣。


直江さん勢いそのまま、


「転生〜!」


魔法陣の光に包まれる俺。


「あ………!」


一同、あんぐり口を開けて俺を見るがなす術もなく…。


あ゛〜〜〜〜〜〜!



気がつくと森の中に立ち尽くす俺!


まさかの異世界?


え゛〜〜〜〜〜!


青天の霹靂パート6!


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