夢見がちな姉が婚約解消をしてその元婚約者と結婚することになった
メレディスはタウンハウスから飛び出して、アカシアの並木道を足早で歩き運河沿いの道を目指した。水を見ていると気持ちが落ち着くからだ。
運河沿いにはいくつかのベンチが据え付けられていて、その一つには初老の男女が時折お互いを見つめ合い、肩を寄せ合いながら微笑みを浮かべて鳥たちに餌をやっていた。
メレディスは結婚した相手とあんな風に年を取れたらいいなと思いながら、空いているベンチに座った。
帆の付いた小さな舟が目の前を滑るように通り過ぎた。水鳥たちが水中に嘴を入れて魚を獲っている。向こう岸からは子供たちの笑い声が聞こえた。
何もかもが自分の気持ちなど関係なく進んでいく。
水面にはくすんだ空の青と運河沿いの建物が揺れて、それをじっと眺めていると自分の足元まで揺らいでいるような気がした。たぶん揺らいでいるのだ。確かなものなんて何一つない。
メレディスは先程、父親から聞いたことを思い出し、大きな息を吐き出した。
姉であるセレニティが婚約者に婚約解消を願い出たという。だがその婚約者はそれならば妹のメレディスと婚約させて欲しいと言ったらしい。父親も賛成している。
(冗談じゃない!)
メレディスにとっては、姉とハッター公爵家の次男サヴィオンとの婚約が成立した三年前から、サヴィオンはあくまでも義兄でそれ以上でもそれ以下でもなかった。急にこの人と結婚しなさいと言われても戸惑うだけだ。嫌いかと問われれば嫌いではない。だからといって姉がだめなら妹って、なんだか釈然としない。
ふと影が差した。
「メレディス、大丈夫?」
「お姉様!」
セレニティが日傘を差しかけてくれたのだ。
セレニティは傘を持ちながら、メレディスの隣にそっと腰かけた。
「お姉様、どうして婚約解消なんて」
「サヴィオンとは合わないの」
「何となくそう思ってはいたけれど」
「私こそごめんなさい。彼があなたと婚約し直すなんて考えてもいなかったわ」
「お姉様、お願い。正直に話して」
「なにを?」
「お姉様には好きな方がいらっしゃるわよね」
セレニティは返事をしなかったが、メレディスは気が付いていた。セレニティは一年前からサヴィオンを避けるようになっていた。
例えば、サヴィオンが我が家に来るときには体調が悪いと言って、メレディスにサヴィオンの接待を頼んだり、観劇やピクニックなどの時は「メレディスがどうしても一緒に行きたいって言うの」とメレディスを伴った。
セレニティとサヴィオンとの会話は、いつもあまり弾まず、結局、メレディスが仲を取り持つ形になるのだ。
そのせいで、メレディスは『姉と姉の婚約者との間に割って入る鈍感な妹』、あるいは『姉の婚約者に言い寄っている性格の悪い妹』などと噂された。
それを聞くと姉はいつも言う。
「メレディスは良い子です。ただ自分に正直なだけなのです」
傍にいるメレディスはそれを黙って微笑んで聞くだけだったが、内心はこれは全然否定になっていないと思っていた。
セレニティはいつもそんな風だ。悪気があるのかないのかそれはメレディスにもわからない。
セレニティの小さい頃は、それは可愛らしく美しい子で評判だった。
そよ風に揺れるやさしく輝くブロンド。青く澄んだ大きな瞳。笑うと花が咲いたようだと誰もが褒めそやした。それを聞く母のカティアもこれ以上ないくらい鼻を高くしていた。
セレニティはいつか王子様が迎えに来るはずだと思っていたし、カティアもあなたなら王室から声がかかるかもしれないわねと冗談とも本気ともつかないことを幼い子に言っていた。
一方、一歳半下のメレディスと言えば、庭のブランコを高く漕いだり、側転をしたり、蝶やトンボを追いかけたりと地味なダークブロンドをひとまとめにして飛び回っていた。
カーソン伯爵家の娘たちは天使と野生児などと陰で言われていた。
しかし、時は経つ。少女は誰しも美しくなるのだ。
メレディスは姉のセレニティよりも背丈が伸び、肩から首の線も綺麗で体型も女性らしくなってきた。ボサボサだった髪もしっとりとした質感になり、どうかすると姉よりも目立つようになってきた。
その辺りからだ。セレニティがメレディスを貶めるような発言をするようになったのは。
お茶会などで、周囲がメレディスを「綺麗になったわね」と言おうものなら
「体ばかり大きくて、もう少し可愛らしさがあれば良いと思うのですが」
「野生児と言われた小さい頃と何も変わっていないのです。礼儀もなっていなくてお恥ずかしいですわ」
始めは謙遜しているのかと思ったが、どうも違うようだとメレディスも気が付いた。
まあ、それでも反論するほどでもないと思っていた。
驚いたのは、淑女学院の友人から聞いたことだ。セレニティは、あちらこちらで
「メレディスは私の婚約者のことが好きみたいなの。まだ子供だから甘えているだけかもしれないけれど、ちょっと度が過ぎていると思える時もあるのよ」と言っているらしいのだ。
そのことを聞いてから、セレニティに誘われても二人とは一緒に行かないと決心した。だが、セレニティから懇願されると嫌とはっきり言えずに、二度に一度は三人で過ごすことになる。サヴィオンもそれを望んでいるのがメレディスにもなんとなくわかった。
そんな矢先に二人が婚約解消をして婚約者を妹に代えるということになれば、自分はどんな悪女として語られるのだろう。そう思うと本当に頭が痛い。
「お姉様の好きな方って、第二王子のラシード殿下ですか?」
「どうしてそれを?」
「私は友人が多いのです。たしかラシード殿下は隣国のケイラ王女殿下と婚約していらしたと思いましたが」
「でも、その方はとても我儘な人らしいの。だから婚約破棄するんですって」
「王女殿下と結婚したら、ラシード殿下はあの大きな国の公爵に叙されると聞きましたが、その名誉もお捨てになるのですか?」
「そんなことに心が動くような殿下ではないわ。私との愛を貫き、王子としてこの国に貢献するつもりとおっしゃっていたわ」
「ラシード殿下からの求婚はありましたの?」
「私に婚約者がいるうちは出来ないって」
「だから、婚約解消をしたのですね。確約もないのに」
「メレディス、失礼よ。あの方は私を一途に愛しているの」
「お父様には?」
「話はしたわ。でもこちらから王家に話を持って行くわけにはいかないって」
「それはそうね。お母様には?」
「話したわ。『王子殿下に気に入られたなんて、あなたの長年の夢がかなったのね』っておっしゃって喜んでいたわ」
メレディスはため息をつかずにはいられなかった。母のカティアはセレニティに関する限り、盲目なのだ。
「お父様はお義兄様とのことは何かおっしゃっていた?」
「私に家を継ぐ気がないのなら、メレディスとサヴィオンを結婚させる。サヴィオンはこの二年間、お父様について領地経営の事を勉強しているから、いまさら婿を代えるわけにはいかないと」
メレディスにはもはや悪女を続行するしか選択肢がないのだ。
「あなたはサヴィオンのことが好きでしょ」
「義兄になる人として接していただけです。急に結婚相手と言われても困ります」
「あらそうなの。仲が良かったじゃない」
「それは、お姉様があまり彼とお話しにならないので場を取り持つのにおしゃべりをしただけです。それでラシード殿下とのことはいつ公にするのですか?」
「来週、王女殿下がいらっしゃるからその時にっておっしゃって」
メレディスはどう考えても、殿下が隣国の王女との婚約破棄をするなんて出来るわけがない。たぶんセレニティの独りよがりな思い込みではないかと思うのだが、それを指摘すれば彼女は余計に頑なになるだけだろう。こうなったら頼りたくはないがサヴィオンにでも相談するしかないと思った。
サヴィオンは殿下の従兄に当たるので、彼の性格を知っているはずだ。
初老の夫婦と思われる男女が立ち上がり、手を取り合い、寄り添いながら運河沿いを歩いて去って行った。
メレディスは彼らを目で追いながら、
(あの人たちは最初から惹かれ合いすんなりと夫婦になってずっと仲の良いままなのかしら。それともあのようになるまでにはいろいろあったのかしら)
答えのない問いを自分に投げかけた。
次の日、メレディスがサヴィオンに手紙を書こうと思っていた矢先に、彼の来訪を告げられた。
「急に来てすまない。君が動揺しているかと思ってね」
彼はサロンに入るなりそう言った。
「動揺しています。お義兄様には失礼かと思いますが、私の心の中ではまだこの話に納得していません」
「それはそうだろう。だが私はセレニティから君に心変わりをしたわけではない」
「というと?」
「君と会った日から、君が好きだった。というより、あの時君はまだ十四歳前だったから気になったという方が正しいかな。好奇心に輝く君のすみれ色の瞳が美しかった。そしていつしか君を愛しているのに気が付き、君が私の婚約者だったらよかったのにと思うようになった。それでも私は自分の立場を分かっていた。君が幸せならば他の男と寄り添っても仕方がないとは思った。だからセレニティには誠実に接するように心がけていたよ」
「お義兄様が誠実だったのは、私も分かっています」
「彼女は私を知ろうともしなかったから、私の気持ちなどに気付くはずもない。それにセレニティはあの通り今でも夢見る少女だ。初めて会った時も私ではなく遠くを見ていた。もっとも私はこのようにごつい顔と身体だからね」
「お義兄様は騎士をしていらしたのですもの。意志の強そうな顔立ちと大きな身体は当たり前です。それはごついとは言いません。ところで、お姉様とラシード殿下のことはご存じですか?」
「最近、噂を聞いた。だがラシードは本気ではないと思う。あいつはあちらこちらに優しい言葉をかけて相手をその気にさせて楽しんでいるのだ」
「どうしたらいいのかしら......」
「二週間後に王女殿下の歓迎のための夜会があるのは知っているよね。もしかするとその時に何か起きるかもしれない。あいつを恋い慕う数名の女性と婚約者が会するのだから」
「お姉様が傷つかなければいいけれど」
「そうだな」
メレディスとサヴィオンはしばらく無言でお茶を飲んでいたが、急にサヴィオンがメレディスの前に跪き、その両手をメレディスの両手に重ねた。
「メレディス、頼む。私と結婚して欲しい。婿と言う立場でなくても君を選ぶ。そして君を必ず幸せにする。今すぐとは言わないが、少しずつ私を好きになってくれればと願う」
ここまでくれば、逃げることは出来ないとメレディスは思った。悪女と言われようが自分にできることは彼の手を取ることだけだ。
「お義兄様......、ではなくサヴィオンと呼ばせていただきます。サヴィオン、男の人の手って大きいのですね。この両手の温かさを大切にしたいと思います」
「ありがとう」
夜会の前日に、セレニティはメレディスにこう言った。
「明日の夜、殿下は私を傍らに呼んで、王女様との婚約を破棄すると宣言するはずなの。私もこれで王子妃への道が開けるわ」
メレディスは、そんなことがあるわけがないと思いながら、浮かれている母と姉の前では口を慎んだ。
夜会の出席が許されるのは女性が十六歳、男性が十八歳だ。メレディスにとっては初めての夜会になる。十六になった時にドレスは作った。自分の瞳に合わせた薄紫のドレスは袖なしで襟ぐりも程よく開き、身頃は体に添っているが、スカートは薄い生地を重ねてふんわりと広がる。
若さを強調するために少し太めのリボンを腰に巻いて後ろに結ぶようになっている。
夜会当日、セレニティの薄いピンクのドレスは袖が少し膨らんでいて身頃とスカートの切り替えが胸の方に近い。メレディスはセレニティがメレディスより若く見られたいという欲求が強いとは感じているが、それでも今日は若いというより幼い感じがする。
(ケイラ王女はまだ十六歳前だったかしら?)
メレディスはそう思い出して納得した。
セレニティは両親と連れ立って、メレディスはサヴィオンのエスコートで会場に入った。
周囲の目がメレディスに突き刺さる。だが、メレディスは親しい友人たちが皆自分の味方だと知っているので、顔を上げてサヴィオンと視線を交わしながら歩いた。
サヴィオンの紺色の瞳は優しくメレディスを見つめる。
メレディスを屋敷に迎えに来たサヴィオンが
「君が美しすぎて、平静でいられない。躓かないように歩かなくては」
などというものだから、メレディスは思わず吹き出してしまった。お蔭で緊張で強張っていた体から力が抜けた。
さて、メレディスたちが会場に入ってしばらくしてラシード王子とケイラ王女が手を携えて会場に現れた。
もちろん国王夫妻と王太子夫妻も姿を見せた。
夜会が始まると最初に国王が招待者に向かって告げた。
「皆も周知の事と思うが、ラシードとケイラ王女はすでに婚約してから五年の月日が経つ。この度、正式に結婚式の日取りが決定した。今からちょうど一年後になる。詳細は追って知らせる。何はともあれ目出たい。ラシード、挨拶を」
ラシード王子が一歩前に出た。
「ケイラもやっと十六歳になった。美しく聡明な彼女と結婚できるのは心から嬉しく思う。われわれは仲良く手を取り合って両国の懸け橋となり、さらに両国の発展ためにこの身を捧げよう」
拍手が鳴り響いた。メレディスは思わずセレニティを見ると、目を見開き顔面を蒼白にして立ち尽くしている。傍で母のカティアが彼女の肩を支えていた。
するとすぐにセレニティは泣き崩れて蹲ってしまった。周りを見渡すと、他に二人ほど同じように泣き崩れている若い女性がいた。
拍手が鳴りやんだ時に、セレニティが大きな声で叫んだ。
「私のお腹にはラシード殿下の赤ちゃんがいるのに、私と結婚しないなんて、なぜなの!」
沈黙が会場を支配した。
ラシードはセレニティのその思いがけない言葉に非常に焦り、
「何を言う、セレニティ。君とはキス以上の関係ではなかったはずだ!」
そう口走ってしまった。
ことの成り行きを注視していた王女は、ラシードの言葉を聞くや否や身を翻して、従者と共に会場を退出してしまった。
メレディスはセレニティに駆け寄り、母親にセレニティを控室に連れて行くように促した。もちろん自分とサヴィオンも一緒に控室に向かった。
泣きじゃくっているセレニティの背中をさすりながら、メレディスは尋ねた。
「お姉様、赤ちゃんてホントなの?」
「ええ、だって、殿下とキスをしたもの」
「えーと、キスだけ?」
「そうよ!」
父のネイサンがカティアに聞いた。
「もしかしてセレニティはキスだけで子供ができたと思っているのか? お前は何も教えなかったのか?」
「結婚はまだ先だと思っていましたし、母親からは言いづらいものなのです。結婚前は専門に教えてくださる方を雇うつもりでいました」
かくして二人は頭を抱えた。
メレディスは恋愛本などで、キスだけでは子供ができないと知ってはいたが、それ以上の知識となると良く分からない。自分も似たようなものだと思った。
「お姉様、キスだけでは子供は出来ないようですよ。だから心配しなくても良いかと思います。あとはお父様にお任せしましょう」
それから三週間後、ラシード王子とケイラ王女の結婚は、国同士の政略結婚なので解消とはならなかったが無期延期となった。
カーソン伯爵家は泣き崩れていた他の二人の女性の家、伯爵家と男爵家と一緒に連名で王室に対して慰謝料の請求を行った。
セレニティは、しばらく自室で寝たきりだったが、メレディスが傍らで本を読んでいた時に、急に起き上がった。
「メレディス。私、分かったわ。ラシード殿下は私の王子様ではなかったの。私の王子様は他にいるの。私、その方のために元気にならなくちゃいけないわね」
メレディスは、方向は違っても姉が元気を出そうとしているのだからこれで良いのだろうと思って返事をした。
「そうですね。お姉様の王子様は、白い馬に乗ってきっとお姉様を迎えにきます」
その後、あの夜会の噂はしばらくは消えないだろうということで、セレニティは母親と一緒に、祖母が住んでいる気候の良い南の別荘に旅立った。
カティアは厳しい姑が苦手だったが、「セレニティをしばらく母に任せて教育し直してもらった方が良いだろう」という夫のネイサンの助言を仕方がなく受け入れた。
それから二年後、メレディスとサヴィオンの結婚式に現れたセレニティは、血色も良く溌溂としていてメレディスは安心した。
だが、祖母の話を聞いて唖然とした。
セレニティはあれからしばらく祖母の言うことを聞いて大人しく過ごしていたようだ。
ところが一年前のある日、白い馬に乗った若者が屋敷を訪ねて来た。
前庭でレース編みをしていたセレニティと眼が合ったという。
セレニティは
(ああ、メレディスの言う通りだったわ)と思ったとか。
彼は、南の地方で手広く商売をしている商人の息子だ。祖母の屋敷に出入りしている彼の父親が間違った商品を祖母の家に納品したので、その交換と謝罪に手の離せない父親に代わって慌ててやって来たのだ。
セレニティはそんな彼に運命を感じ、彼の方もセレニティを気に入り、二人は今から一年後に結婚する約束をしているという。
夜会での騒ぎは下火になっているが、それでもセレニティに来る縁談は、後妻かかなりの年上の者ばかりだ。祖母は白馬の彼との結婚は悪くはないという。
結婚すればセレニティは平民にはなるが、お金もあるし中流でも一番上の階層であるのは間違いないので、祖母はメレディスの結婚式が終わった後にでもセレニティと一緒に父を説得するつもりだという。
メレディスは、姉が幸せなら、それが一番だと思った。
いよいよ神殿での誓いの儀式が始まる。
ダークブラウンの髪をきれいに撫でつけ騎士服に身を包んだ二十四歳のサヴィオンは凛々しく、白いレースを基調にした流れるようなドレスを纏っている上背のあるメレディスも優雅で美しい。二人が見つめ合っている姿を見て姉の婚約者を取ったなどと言う人は誰もいなくなった。
その後、王都の屋敷で行ったガーデンパーティは、晩春の柔らかい陽射しの中で多くの友人や知人から花びらの祝福を受け、すべてが滞りなく終わった。
そしてその夜。ベッドの中に薄絹一枚だけの夜着を纏ったメレディスと逞しい上半身を見せているサヴィオンがいる。
サヴィオンがメレディスの髪を遠慮がちに撫でた。
「大丈夫か? 嫌ではないか?」
「サヴィオン、姉のように勘違いしてはいけないと思ってきちんと勉強したわ。そして分かったことがあるの」
「なにが?」
「これからすることは、愛する人としか出来ないって。すべてをさらけ出して一つになるなんて愛してるからこそだわ」
「君からその言葉を聞くことができてとても嬉しい。私も同じ気持ちだ」
「だから嫌でもないし、不安でもない」
「時間はある。ゆっくりと愛を確かめ合おう」
その言葉とは裏腹にサヴィオンのキスは今までとはまったく違って、口の中を弄び舌を絡め取られる。その大きな手はメレディスの体を時には強い風のように、時には宝物のように扱っていく。
メレディスは頭がくらくらしてきたが、なぜかあの運河沿いにいた初老の夫婦を思い出した。
(私たちもきっとあんな風になれる)
そんな予感がした。
終
読んでくださってありがとうございます。
虐めたり虐められたりする関係ではなく、どこにでもいるような姉妹の心の葛藤を書きたかったのです。
誤字、脱字のご指摘はいつも助かっています。