表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

エピローグ

※本作は戦争を題材としたフィクションです。

作中には戦闘、流血、死、差別的表現や精神的苦痛を伴う描写が含まれます。

これらの表現に不安を覚える方、過去の経験から心身に影響を受けやすい方は、無理をせず閲覧をお控えください。

本作は戦争を肯定・美化することを目的としたものではありません。

諸君が今この瞬間も享受している平穏無事な日常――それが誰の血と死体の上に成立しているか、考えたことはあるだろうか。もっとも、考えなくて済むように設計されているのが「平和」という制度なのだが。

学校という箱庭ですら、いじめ一つ根絶できない人類が、国家規模では高潔で理性的になると本気で信じているのなら、よほど楽観的な脳構造をしている。戦争は異常事態ではない。人類社会が正常に稼働した結果として発生する、極めて健康的な症状だ。疫病? 違うな。常在菌だ。

それを運命と呼ぼうが、業と呼ぼうが、実務上の意味はゼロだ。原因が分かっても、治す気がないのだから。

さて、平和について少し整理しよう。行きすぎた平和は人間を怠惰にし、怠惰は欲望を肥大させ、欲望は衝突を生み、衝突は争いを呼び、争いは戦争に昇華される。そして戦争は、血と死体を肥料にして次の平和を育てる。

実に美しい循環だ。もっとも、その循環に巻き込まれるのが常に「その他大勢」である点を除けば、だが。

戦争で得たものはすべて戦争に回収される。領土、資源、栄光、未来――例外はない。それでも人類は「今回は違う」と毎回本気で信じる。知性とは便利な装飾品だな。

さて、前置きは十分だろう。

先の大戦を、諸君はどう受け止めた?「地獄だった」? 結構。観光名所としては不人気だろう。「平和と怨念の化学反応」? なるほど、随分と詩的だ。だが結果は爆発だ。

暴動、革命、下剋上、暗殺、裏切り。国境を越えて連鎖する殺意と恐怖。史上最悪? 違う。史上最新だ。最悪の更新は、今後も予定されている。

人類は哀れな種族だ。いや、正確には都合よく忘れる能力に長けた種族だ。幾億の死を支払って学んだ教訓を、数十年で「そんなこともあったね」に変換できるのだから、進化としては大したものだろう。

勝利という麻薬に酔い、戦争を日常業務に組み込んだ諸君に聞こう。

なぜ戦った?なぜ、同じ人間に何の疑問もなく銃を向けられた?

もちろん、これは私自身への質問でもある。

なぜ私は戦ったのか。なぜ合理性という免罪符を握りしめて、同種族を殺したのか。

家族のため?祖国のため?平和と未来のため?

素晴らしい。模範解答だ。教科書に載せてもいい。死者の数を小さく書けばな。

国家は優しく囁く。「祖国のために死ね」と。だが不思議なことに、「祖国のために殺せ」とは決して言わない。殺人を命令している自覚があるからだ。実に健全な自己保身だと思わないか。

はっきり言おう。戦争に正義はない。あるのは合法化された大量殺人だけだ。官軍も賊軍も存在しない。存在するのは、勝った犯罪者と負けた犯罪者の違いだけだ。

一人殺せば犯罪者。百万人殺せば英雄。――この論理をおかしいと思えなくなった時点で、もう十分に「戦争向き」だ。

今一度考えてほしい。諸君が引いた引き金の先にあったものは、本当に平和だったのか?

私の評価は単純だ。先の戦争はただの火事だ。生きた人間を燃料に、人間の欲望と恐怖を着火剤にした大規模火災。消火後に残るのは灰と瓦礫、そして――

「次はもっと上手くやろう」という、実に前向きで、実に愚かな反省だけだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ