12話 内部侵入
翌日から徹と命は共生で働くことになった。一日目は仕事のレクチャーを受け、二日目から計画に取り掛かった。もとより、二人にはここで働く気はなかった。目的は病棟に忍び込んで名前の分からないあの子を病院の中から救い出すこと、そしてそのあとはバレないようにまた仕事に戻る。
そして、時刻が四時になったら、帰宅時間に隠れていた彼と合流し、どこか身を潜められるところへ逃げる。共生の仕事はしばらく続け、頃よいところでやめる。といった穴だらけの計画だった。
作業は各病棟1~4階(北・南棟)のドア前に置かれたリネン(毛布・シーツ)類やごみの入った袋、おむつの入ったごみ袋を回収し指定の場所に捨てに行く作業。指定の場所に汚れ物を置いたら、しばらくして回収業者が取りに来てくれる。この病院はこうして回っているらしい。裏方の仕事だ。
「うう、さむ」
「動けば平気よ」
「汚物は俺が持つよ」
「ありがとう。当然よね」
徹が階段をさっと駆け上がり、リネン類を持ち上げて階段の踊り場から何個も蹴り落して運ぶ。このやり方はたぶん怠慢だろうが、何個も何個も持つと腰が痛くなることに徹は気づいた。長いこと勤めるならこのやり方一択だが、徹は別にここに就職しようという訳ではない。
ではなぜ?
命は一階のリネン置き場の前まで、徹が蹴り落したリネンバックを運び、また、彼が手で持って運んでくるシーツやブランケットを丁寧に折りたたんでいる。整頓までが仕事だ。
「ねえ徹、目的忘れてない? 私たちにはすることが――」
「そりゃそうだけど、一応、ここの仕事はやってからの方がいいだろ? 間に合わなくなって病院の運営に差しさわりがでたら少し申し訳ないし、俺さ、責任感じちゃうよ。計画は計画。でも、これも一応は受けた仕事なんだから、仕事はちゃんとやるさ」
「責任……まさか徹の口からそんな言葉が。ヤダ……。ねえ、帰るころには仕事大好き人間になってたりとかしない? それはそれで……」
「なるわけない」
「ここに勤めるのもいいんじゃない?」
「そうさな、夏が大変そうだけどな」
「汗かくくらい平気よ。ね、そうしたら?」
空気は乾いて、汗で徹と命のつけているダウンとその下のエプロンの内側が蒸れた。空っ風が吹き、二人の頬を撫でる。外の景色はもの寂しく、落ち葉が散っていた。
冬の木立があの子のいる病棟の窓からも、二人のいる外からも見えた。それからその日の作業をすべて終えて、あとは更衣室に戻ろうという時に、命が思い出した。ふと。徹は南棟一階の1病棟のドアを鍵で開けると、そっと中に入った。平気だ。1病棟は中の廊下にゴミやリネンが護いてあったが、すべて回収済みで、何もなかった。
それを確認すると、エプロンとダウンをその場に隠し、ポケットに証明書を突っ込むと、証明書についている鍵を使って、二人は奥の大きな鉄扉から中に静かに潜入した。
三時、病院ではちょうどおやつの時間だった。




