11話 パズルのピース
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「どうする?」
「どうするって、助けるしかないじゃん」
ミコは明らかにいらいらしていた。一つにはアイツが大人たちに捕まって、病院にぶち込まれてしまったから。二つには俺の態度が煮え切らなかったから。そしてミコにとっては、二つ目の要素が特に重要だったんだと思う。
「だからどうするんだよ」
「わからないよ」
「でも、あいつはもともと何か――」
「ストップ! それ以上言ったら、私、マジでキレるから。それより方法を考えて」
「……」
ああ、こいつ、あのこと気にしてんのかな。もしかしたら。
「ねえ、私が働けって言ったの、べつに徹に仕事してほしいからじゃないんだ。ただこうやって、今みたいに何でもかんでもすぐに諦めちゃう徹のそういう気質が、私は駄目だって言ってるの。諦めたら試合終了だよ?」
「べつに……諦めてねえ……」
「じゃあ何で、考えないのよ! もっとちゃんとしてよ!」
そだよな。
俺だってアイツを助けたい気持ちはあった。でも周りは大人たちががちがちに固めていたし、物理的にもアイツは高い塀の中にいた。それからミコが行っちまって、俺はいろいろ考えたけど、それでも思いなおして、行くとこ向かった。
働くことは怖かったし、検索機が求人票を吐き出すときには、正直吐きそうになった。それから求人票をもって受付に行き、紹介状を書いてもらって、清掃やなんやの仕事を受け持っている共生の面接を受けてみた。それが十五日だった。けど、そんなことしたってミコが褒めてくれるわけじゃねえ。第一、ミコとはこの数日、連絡がつかなくなっていた。
計画は十七日から。俺はミコにメールで一応、そのことを伝えた。返信はなく、既読もつかない。
「アイツがいたから、俺たちの間に、アイツが入っていたから、多分、これまで命との仲がなんとかなってたんだ……でも、今は、俺から離れようとしている。俺は、どうすればいいんだ……」
そのとき思いがけず、共生の作業はあいつが入院させられている病院だということが分かった……何かが動き出す気配がした。それは俺にもわかった。パズルのピースがかちりと嵌る音だ。
ミコがそこに帰ってきた。
「コンビニよ。なに? 腹をくくったの?」
「ああ」
「やることは分かってるんでしょ?」
「ああ」
「私もサポートするから。……『卒業』って映画観たことは」
「ない」
「花嫁泥棒の映画。今度観て」
俺たちは、ついに計画を実行した。そうだ、俺はやるときはやるんだ。そうとも。やってやるとも。俺は絶対に、ミコを失望させちゃならないんだ。




