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プロローグ
初めて歌を歌った人は、誰の耳に何を残したかったのだろう。
初めて写真を撮った人は、誰の目に何を残したかったのだろう。
初めて料理をした人は、誰の舌に何を届けたかったのだろう。
皆そうやって生きてきて、私もきっと、これからそうやって生きていって。
誰かの為の自分が、何処かで生きて。
涙も。痛みも。時には、愛も。多分、幸せも。大きな、壁も。
もし心が明確に人のどこかにあって、その片隅にでも私がそっと暮らせて、あなたが時に、居なくなりたいとか、消えてしまいたいとか、果てには死にたいとか思ったとしても。
絆創膏張ってあげたり、包帯巻いてあげたり、そんな事じゃどうしようもない暗闇でも。
あぁ、やっぱり上手く言葉にできないな。多分私は、とてもとても不器用だから。
それでも歌ってみるよ。生きてるし。
どうせいつかは死んでしまうなら、ね。