6話 2歳
暑かった夏もいつの間にか過ぎ去り、早いものでもう10月、今日でこの世界に生まれて二年ということになるらしい。
とはいってもそんなに特別なことはしない。みんなでご飯を食べる、それだけである。
と、思っていたらパッパが誕生日プレゼントを持ってきてくれるらしい。どんなものを持ってきてくれるのかと楽しみにしていると、ママンがメイドに裁縫道具を持ってくるように言いつける。
裁縫道具?何に使うんだろう。
戻ってきたパッパは何やら丸まった紙きれのようなものを二つほど持っていた。そしてその紙を私の前に広げる。
紙の真ん中には〇が書いてあり、その周りには何かが書いてある。
これがプレゼントなのだろうか。もしプレゼントであるならおそらく魔法とかのやつではないだろうか。
ママンはメイドから裁縫針を受け取ると、私の手首をつかみ指に針を浅く刺した。
どうやら予想通りらしく真ん中の丸のところに私の指をつけると紙は消えてなくなってしまった。凄い、魔法だ。
それを二枚分終えた私は気になることを聞くことにした。
「今の何?」
「さっきのは魔力を消費して出す技が使えるようになる紙よ。」
「一枚目が水の温度を変えるスキル、二枚目は何もないところに水を作り出すスキルだ。」
ということらしい。どうやら滅茶苦茶高そうなものをプレゼントしてくれたらしい。
「アメちゃんが絵本と魔法とご飯ぐらいしか動かない、って聞いたからちょっと高価なものだけどパパが家にあるやつから選んでくれたのよ?」
「パパありがとう。」
パッパにお礼を言うと頭を撫でてくれた。
それにしてもどうやったら魔法が使えるのかわからず悩んでいたものだが、スキルが必要だったとは。
せっかくならと、コップに入った水を飲みコップの上で体内に感じるスキルを使ってみる。
が、水が出ない。と思ったがどうやら魔力を込めなくてもスキルは発動するようだ。スキルに魔力を注ぐと少しずつ水が出てきた。
いや、凄い。電池で動くオルゴールなんて探せば無限にあっただろうが、何もないところから水が生まれるなんてことは前世ではなかった。これが異世界に来たということなのか。
「アメちゃん、最初から調整できるなんて偉いわねぇ。」
と言いながらママンが撫でてくれる。
気を良くした私は氷を作ろうとスキルで水の温度を下げていく。
が、氷は出来ないな。温度はかなり下げたはずだ。
その証拠にコップの周りにはたくさんの水滴が付き始めている。いや、よく見るとコップの周りに付いた水滴はちゃんと凍っている。ということは、あれか。刺激を与えればいいのか。
そう気が付いた私はコップをコンと叩くと...
水は途端に凍り付きコップは真っ二つに割れてしまった。
ママンはとても苦笑いしていた。