1話 0歳
「ぁぎぃぁぁぁあ、ぁぎぃぁぁぁあ......」
......はっ。危ない、死んだかと思ったわ。
息がしづらいうえに体もうまく動かないがどうやら一命はとりとめたらしい。
目を開くとすぐ近くに誰かがこちらを覗いているのがぼんやりと見えた。
しかしなぜか視界がかなり眩しく、目を閉じるとそのまま眠ってしまった。
時が流れて一年後、どうやら今日が誕生日らしい。というか転生したらしい。
どうして転生したのか、いつ死んだのかはもはや定かではない訳だが、前世の記憶によればこれは異世界転生というやつで間違いないだろう。おそらくここから急激に成長して最強の魔法で敵を一網打尽にしてハーレムを作る、はずなんだがおかしい。
私の名前はアメリアというらしい。女の子だ。
まあでも現状は正直何も関係ない。これから最強の冒険者として名をはせていくことには変わりないのだから。
成長の方はかなり順調に進んでいる。これだけ頭が回っているだけでも一歳に成りたてとしては破格なのはもちろんのこと、もうすでにハイハイを卒業して一人で歩行できるところまで来ている。
これは快挙といってもいいだろう。
あとは魔法に関するものもそろそろ探索したいとは思っている。しかしそれもなかなか一筋縄ではいかない。昼間は基本メイドのエマが面倒を見てくれる。しかし完全につきっきりというわけではない。そう、私には兄がいるのだ。
兄の名前はフィン。たぶん3歳か4歳ぐらいだ。
寝起きの時たまにエマが兄さんの方についていることがあるのだ。その時、今がチャンス!と部屋を出ようとする、がそうすると第二の刺客が現れる。
その名もタマだ。体長は私よりも大きいぐらいのネコであり、基本は白いが部分的に黒が混じっているような奴。このタマが大抵近くにいるわけなんだがなかなかに手ごわい。ちょっと散歩しに行こうと思っただけですぐにダッシュして回り込まれるのだ。うん、まあでもお前可愛いな。仕方ない、今日だけは遊んでやるとするか。
魔法の本とかを探すのは明日にしよう。人生は長い、急ぐ必要はないのだ。