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夢の続き  作者: 霧澤 零
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入学式

今日、四月七日は、星南芸術大学付属高校の入学式である。


入学式など隆之介には関係ないので本来なら学校になど来ないで家で楽曲制作に(いそ)しみたいところだったが、入学式の後に行われる部活動勧誘活動には参加しなければならない。


音楽研究会の部員は隆之介一人であるため必然的に隆之介が部長となる。


しかし、部員を増やしたいわけでもないのでテキトーな募集ポスターを掲示板に貼り、音楽準備室という名の部室で一人ピアノを弾いていた。


弾いているのは二週間前に投稿した楽曲をピアノ版にアレンジしたものである。


そんな時に部室のドアが叩かれた。

「失礼します。音楽研究会の部室ってここであってますか?」

意外だった。正直こんな部活に人が来るとは思っていなかった。

「あってるよ」

「どんなことしてる部活なんですか?」

「特に何もしてないよ。ここで放課後テキトーにここで過ごすだけ」

「何もしなくていいんですか?」

「うん。これといってしなきゃいけないことはないよ」

「じゃあ、私入部したいと思います」

これは隆之介にとっては好ましくないことであった。誰かが入部するということはここでの楽曲制作活動はそんなに出来なくなるということである。


しかし、「部員は募集してないからお引き取り下さい」なんてことを言うわけにもいかない。

「わかった。じゃあ、この仮入部届け書いてくれればいいよ。仮入部期間終わっって入部するなら何も手続きいらないし、退部するなら退部届を提出して」

「わかりました」


一年D組 榎本美優(えのもとみゆう) 


「これでいいですか?」

「いいよ。じゃあ、毎日部活に参加しなくてもいいから」

「わかりました」

と言いながら彼女は窓際にある椅子に座った。

「榎本さんはなんでこの部活に入ろうと思ったの?」

「私は普通に音楽好きなので・・・ちょっと興味があって」

それはとても申し訳ないことをした。音楽研究会など名ばかりの部活であり、研究はもちろんこれといった活動はしていない。

「そうなんだね」

話も続かなくなってきたのでピアノを弾くことにした。弾くのは隆之介と悠が一番最初に作った曲。

『蝉時雨』

デビューと言ってもそこまで有名な曲ではないけれど多くの人に聴いてもらえている。

弾き始めこそ普通に弾いていたものの途中からアレンジしながら弾いていく。一曲終わる頃には自分が作った曲とは少し変わってしまっていた。


弾き終わると窓際に座っていた彼女が驚いた顔でこちらを見ている。

「先輩・・・ピアノ弾けたんですね」

「一応ね、でもこのくらい弾ける人は結構いるし」

「そうなんですか?」

「多分」

「それより、今弾いてたのって空蝉(UTUSEMI)の曲ですよね?確か一番最初に出した曲の・・・」

「よく知ってるね。そんなに有名な曲じゃないのに」

「私の親友がその人の曲好きで私もおすすめされて聞いてるうちに結構詳しくなっちゃって。」

それは嬉しいことだった。ここ最近の楽曲は多くの人に聞いてもらえているが、昔作った曲はそんなに聞いてもえているとは思えなかった。

「そうなんだ」

「今度その子も連れてくるね」

「え?」

「私の親友!」

それは困る。これ以上部員が増えるのは正直やめてほしい。

「じゃあ、また明日連れてきますね」

「あ、また明日・・・」

そんなことを口走ってしまい後悔したが、それはもう気にしても遅いことだった。


こんなことがあった部活動勧誘期間初日は幕を閉じた。


四月八日の放課後になると

「支倉先輩昨日言ってた親友連れてきました!」

という声と共に榎本美優が部室の中に入ってきた。

隆之介は『・・・本当に連れてきたのか』と思いながら入り口に目を向けた。


そこに立っていたのはおよそ三ヶ月前の冬の日に話た女の子だった。


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