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三章:欲しかったのは(18)

 

――同日、時間と場所は変わる。由里の部屋、朝日が差し込む頃。

 

「ん……」

 

 昨日、あれだけ消耗した中で、起こされたとはいえ目醒めた私の体。昨日丸一日休めた今日は当然のことのように不快なアラーム音が鳴る前に目を醒ました。

 

 目覚まし時計のスイッチを切る。そのままベッドの上で体を軽く動かしてみたが、軽い関節痛は残る物の、他に異常はなかった。昨日の二人や家族による看病のかいあってか、風邪はぶり返すことなく完治したようだ。

 

 しかし、昨日の一件のことを思い出すと、今はまだ圭織には会いたくなかった。明らかに昨日とは違う理由、逆の理由で体がベッドから離れない。今日は体が起きることができても私の中身が起きることを拒否する。

 

 悪いのは明らかに私。私は圭織を、私の親友である圭織の信頼を裏切り、嘘を吐いて踏みにじった。圭織の愕然としたあの表情は何度思い出しても恐ろしかった。私と圭織の間の何かにヒビが入ったように見えた。いや、そんな逃げをしても意味がない。見えたのではない、私がヒビを入れたのだから。そのヒビを直そうとしても、圭織との距離はそうしているうちに広がっていく。

 

 圭織を信頼しなかった自分。圭織に全てを話さなかった自分。圭織に嘘を吐いた自分。そして、圭織を避ける自分。それぞれが考えれば考えるほどどんどん自分を追い詰めていく。

 

 圭織はきっと、圭織自身を責めただろう。やった側の自分がこうであるのなら、やられた側の圭織はどうなってしまうだろうか。その結果、もし圭織が私から離れるという判断に辿り着いてしまったら、私はどうなるのか。想像もつかなかった。

 

 それを確かめるのが怖い。私は両親にまだ頭が痛いと言い、今日も学校を休むと言った。両親は心配はしてくれたが、疑う様子は全く見せなかった。圭織とのことで思い詰めている様子が本当に具合が悪そうに見えるのかもしれない。学校を仮病でさぼると言うこととそのことに罪悪感を覚えつつも、布団に入ってしまえば余計なことを考えたくないと言わんばかりに私は睡眠を貪った。


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