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三章:欲しかったのは(2)

 

 私達が使える能力はいくつかに分類することができる。私が使えるのはこのうち六つ。

 

 一つ目は物体操作、変化系の能力。これは私の得意とする能力だ。物の移動する方向を操作したり、気体→液体などの状態変化を起こすこと、化学変化という種類の反応を起こすことが可能。この種類の能力はエネルギー消費も少ないのでまだいけるだろう。

 

 自然系の能力。これは炎や雷、水などを発生させる。これは使えないことはないが、あの高速で動き回るマグロに対しては広範囲で使わざるをえず、消費が激しい。それに私自身がコントロールが苦手だということもある。

 

 次は探知系の能力。本来は相手を識別し、どこにいるかわかる類の能力を使いたいが、それには相手との接触が必要になる。

 

 さっき突き刺された時に使っておけばよかったのだが、いつまでも出現しない事への苛立ち、突然の襲撃、負傷によりそこまで頭が回らなかった。情けない。そうすれば相手がどこにいようがその場所がわかり、エネルギーの回復を待ち、万全の状態で戦う事も可能だった。その間に乗り移らないという保証はないが。敵の位置を把握するための大規模な探知能力もあるが、これも消費が激しいので現時点では却下。

 

 精神系の能力、相手の脳内に干渉し、思考をいじる能力だが、これは相手が知識を付けたとはいえ、人間レベルにならない限り有効ではないだろう。できるとしては、ちょっとした誤認程度。

 

 肉体強化系の能力。さっきの五感の強化のようなものだけではなく、力や体力を上げるものもある。これでマグロの速度に追いつくというのはまた難しい。先ほどの回復もこれに属する。自らの治癒力を高めるのだ。

 

 そして、時空間凍結能力。本当は出現時にこれを発動するのが一番よかったのだが……。嘆いていても仕方がない。もはや発動するだけのエネルギーはない。

 

 一つ一つの能力を検討するが、思いつかない。こうしている間にも私は消耗していく。それに、もうすぐ一分経つ。また回避のためにエネルギーを必要とする。

 

 敵の接近方向に例えば氷で作ったような棘を置くというのは? だめだ。マグロは超高速で移動している。置いたとしても、簡単に突き破られるだろう。それに耐えられる土台がないし、作るにはエネルギー不足。

 

 ……待てよ、マグロは高速で動いている。いや、動き続けなければいけない……。

 

――もし、この一分ごとの攻撃に意味があるのならば。

 

 そうしている間に次の攻撃がきた。まずは、これを避けなければ今考えているのも実行不可能だ。聴覚と触覚にすべてを集中する。上だ。マグロが近づき、左に大きく移動して回避する。回避したときに周辺一帯に力を発動した。

 

――後は、運次第か。

 

 私は水面の方に向けて移動した。次の攻撃が来る。私は同じように回避し続けた。左、後ろ、前。移動してから四度めの攻撃、ついにきた。

 

――下から!

 

 私は同じように攻撃を回避する。そしてマグロはそのまま直進し、空中へと躍り出た。私はすぐさま後を追い、海水からでた。マグロにあたる太陽の光が眩しかった。

 

 時速200kmを越えた速度はマグロを高々とあげ、しかし限界がきて、落下を始めた。私は全速で落下予想位置に向かい、空気を圧縮して水中への落下を防ぐ。マグロの体はなにもないように見える空中で跳ね返る。それを何度か繰り返すとマグロは空中で動きを止め、苦しそうに体をばたつかせた後、動かなくなった。

 

 やはり。あの攻撃を考えてみれば、下からの攻撃は一度もなかった。あの速さでは急に速度を緩めるのも、曲がるのも難しいはず。だから、攻撃と攻撃の間の一分はわざと作ったのではなく、仕方のない時間なのだと気づいた。通り過ぎて速度を緩め、一度回って戻ってくるのにかかる最短時間が一分なのだ。

 

 なので、私は回避したときにマグロに上下を誤認させた。案の定四度めに敵は上下を間違え、空中へと飛び出てしまったのだった。

 

 今回も辛くも勝利。一戦一戦が緊張の一戦であり、命懸けである。しかし、私は思った。なぜマグロなのだと。蛇やサラマンダーはなんとなく受け入れられた。マグロと戦った女子高生、聞いたことがない。

 

 私は苦笑し、その場を立ち去った。


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