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ごるふ一徹、カノジョ一途、一時社会人  作者: えずみ・かいのう
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4番ホール:ゴルフって難しい、でも楽しい!❷

この練習場は、打席数が1階、2階各20打席あって計40打席。奥行きはレイアウトの図を見るかぎり70ヤード。テレビでよく出てくる練習場とは違って、かなりこじんまりしている。巽部長とオレの打席は19番と20番。オレは一番端っこだ。内心真ん中じゃなくて良かったとホッとした。


部長が、「こっちのバックに入っているのが沢田くんのね。ドライバー、フェアウェイウッド、アイアン、パターと一通り揃ってるから。3年前まで僕が使っていたものだから、まだまだしっかりしてるよ。シャフトは沢田くんには少し柔らかいかも知れ無いけど、まずはこれで少し打ってから、新しいのを買った方がいいと思う。」


「本当に何から何まで有難うございます。このクラブでしっかり練習させて頂きます!」

ここまでしてくれる上司がいるだろうか?オレは、本当恵まれてるなあ。


「さあ、打ってみようか。まずは7番アイアンでいいかな。」

「この“7”と書いてあるクラブですね」オレはクラブを確認して言った。当たり前だが、バットより遥かに軽い。

プリペードカードを装置に挿入すると、自動でボールが上がって来た。ちょっと汚いボールで、かなり使いこまれているようだった。


クラブでボールをマットのセンターに移動し、アドレスに入った。

部長がこっちを見ている、そう思った瞬間に緊張が体を走った。


「ブン!」クラブが空気を裂く音がなった!?

「あら?」

「力入りすぎだよ。最初から上手く当たることの方が少ないから、気にせず2、3球打ってみて。」


「はい」その後、3球打ったが結果は、空振り、トップ、トップ。野球でいえば、3打席凡退といったところか。最初のを入れれば4打席か。ジャイアンツの長嶋と一緒だ!?

部長を前にして妙な汗が出て来た。


「よし。分かった。沢田くんのヘッドスピードは、おそらくドライバーなら50m /s以上出ているかもしれない。これは凄いことだよ。」褒められているんだろうが、実感が湧かなかった。


「沢村くん“ビジョン54”を読んでたよね。そこにも書いてあったと思うけど、まずは小さいスイング、ゆっくりしたスイングを練習した方がいい。」

そう言えばそんなことが書いてあったな。やっぱりゴルフも基本練習というのがあるんだ。


「分かりました。すみませんが、小さいスイングを教えていただけますか?」

その後約2時間、グリップの握り方からアドレスの取り方・作り方、そして小さいスイング(いわゆるハーフスイング)をご教授いただいた。


戸惑ったのがグリップだ。バットの握り方と同じベースボールグリップというのもあるそうだが、左手人差し指と右手小指を絡めるインターロッキングという握り方が最後まで違和感がまとわりついた。それでも、小さいスイングで最後の方は4、5球に1球は芯で当たるようになった。


「どうだった?」

「想像以上に難しかったです。でも練習も面白いです。」


「そうか、それは良かった。ゴルフはうまく行くと凄い快感を得られる。例え練習場でもね、逆にうまくいかないと自分が嫌になってしまう。でもそれが、ゴルフの面白いところなんだよ。野球のバッティングも7割は失敗するだろう。ゴルフも1ラウンドして納得できるナイスショットなんて数回しかない。それでもスコアーがいい時もあるんだ。」


「野球で打ち取られた時の気持ちとゴルフで空振りした時の気持ちは違うように思います。ゴルフの方がショックが大きいです。」


「そこなんだよ。野球は投手が打者を抑えようと投げているから、抑えられた打者は投手のせいにできる。いいコースに投げられたとか、もの凄い変化球だったとかね。ところがゴルフは、ボールは止まっているんだよ。ナイスショットができるかどうかは、プレイヤーに全て預けられているんだ。もう少し言うとゴルフは屋外のスポーツで、雨もあれば風の中でプレイすることがある。ナイスショットしても、風でO Bになってしまうこともある。それで風のせいにしても何も変わら無い。全てはプレイヤーの責任になるから、うまくいかない時に自分に嫌気が差してしまうんだよ。」


「ゴルフって奥が深いんですね。そんな事考えた事なかったです。」

「それでもゴルフをするのは、今のようなことを克服した時の喜びが想像以上に大きいからなんだ。もちろん楽しみ方は人それぞれ。競技会に出て成績を競うも良し、仲間と楽しくやるのもいいし、健康維持のための運動でやるも良しだ。」


「自分はこれまで野球をやって来て、勝った負けたという勝負が好きでした。ゴルフをやるならスコアーはもちろんですが、やっぱり勝負したいです!」


「いいじゃないか。沢田くんが求めるゴルフを続けてもらえれば、クラブを提供した私も嬉しい限りだよ。今度ぜひ一緒にラウンドしよう!」

「有難うございます。喜んでお供させていただきます。それまでに、ご迷惑をおかけしない程度の力をつけておきます!」


部長をお見送りして、自分の打席に戻った。


改めて部長からいただいたクラブを見た。ドライバーにはP I N G、アイアンにはM I Z U N O、パターにもP I N Gと刻印されてあった。ネットで調べた限り、有名ブランドばかりだ。まだ物足りなかったので、プリペードカードを買い足し小さいスイングの練習を再開した。さっきよりは、少しは当たるようになり、何球かは奥のネットに当たるまでになった。クラブの芯で当たった時の感触がたまらなく良い。これはクセになりそうだ。


帰り際にカウンターにいた社長に丁重に挨拶して、帰る頃には2時を回っていた。

野球で振り込んだ掌がヒリヒリした。部長も言っていたが、力の入れすぎなのか・・。

力を抜くとちゃんと当たらない気がするけど、まあ力を入れても当たらないんだからやってみる価値はありそうだ。


まずはコンペまでにどういう練習をするのか考えとかなくちゃな。それから“ビジョン54”にも色々と練習方法も書いてあったから、試してみるか。自宅に着くまで、バックを担ぎながらそんなことを考えながら歩いていた。

それにしてもゴルフバックは重い・・・。


次号に続きます・・・。

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