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ごるふ一徹、カノジョ一途、一時社会人  作者: えずみ・かいのう
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3番ホール:うちの会社はゴルフも社命です!?①

希望した営業に配属された大樹と千夏。来月社内のゴルフのコンペが開催されることに・・。

3番ホール:うちの会社はゴルフも社命です!?


営業第1課に配属されてあっという間に1週間がたった。

指導役の榊原さんはまだオレを顧客先には連れていってくれない。千夏はすでに顧客への挨拶回りをしているというのに。まずは社内のキーマンや事業内容、I Tシステムを覚えることが先だそうだ。

第1課の戦力になっていることといえば、資料作りとコピー係り。エクセルとかワードはそこそこ使いこなせるが、資料作りは主にミクロソフト社のパワーポイントなので、あまり使ったことが無かったオレにとっては苦労した。

それでも“誰でも絶対わかる、間違いなく分かるパワーポイント”という、しつこいくらいの名前の解説本を1週間で読破した。

「どう、社内の組織とか事業内容は大体頭に入った?」出張から帰った榊原さんが突然聞いてきた。

「ハイ、大体概要は掴めました。」“大体”という部分は少し弱めにして答えた。

「それじゃ、」という言葉を聞いた瞬間、ついに顧客デビューかと期待した言葉は、

「今度会社主催のゴルフコンペがあるから、課内の参加希望者を取りまとめて総務課へ提出してちょーだい。」だそうだ・・・。

「ゴルフコンペですか?よくやってるんですか??」

「うちの社長がゴルフ大好きで春と秋の年2回やってるわ。巽部長や末木課長はゴルフお上手だし、営業はお客様との付き合いでゴルフすることも多いから、沢田くんもゴルフ始めた方がいいわよ。」“末木”と聞いて闘争心が湧いてきた。

「ゴルフですか。そういえば、配属前の面談の時に部長とゴルフの話しました。榊原さんもゴルフやるんですか?」

「ええ、会社入ってから始めたわ。レッスンにも1年通ってそこそこのスコアーで回れるようになって、お客様とも話ができるようになったし、付き合いも広がったわ。沢田くんは野球やってたし、ゴルフやったら結構上手になるかもね。じゃ取り纏めよろしくね。分からない事があったら聞いて。あと最後に巽部長に確認してもらうからそこまでよろしく。」

そういえば昨日総務課からメールで、春の社内コンペ開催の案内が来てたな。

改めてメールを読み返すと、千葉県のゴールデンリバーカントリークラブで5月26日開催と書いてあった。まるで犬の名前みたいなゴルフ場だな。

参加者は、社員はもちろん派遣会社の人や外注の人もオッケー。初心者大歓迎とまで書いてあって、何かの広告と勘違いしているようだ。

早速、第1課の面々にメールで参加の可否回答をメールした。

翌日には13名全員から返信があり、参加者はオレを除いて7名。榊原さんも末木課長も参加だ。

さて肝心のオレは参加するかどうか考えもんだな。初心者大歓迎とはいえ、クラブを握ったのはたったの数回でラウンド1回。結局ゴルフ場というところは、景色が良かったことを除いては何も分からない。

メールに添付されているエクセルのフォーマットに参加者の名前を入力していると

突然、背後から声をかけられた。

「資料作成してるの、仕事は捗ってる?」巽部長だった。こうして時々声をかけてくれて気遣ってくれる。

「来月のゴルフコンペの参加者リストを作っているところです。」そう答えると、

「1課は何人参加かな?」

「7名です」

「沢田くんも、もちろん参加だよね〜。」

思わず、「もちろん参加させて頂きます」と答えてしまった。ここが体育会系の悲しい性だ。

「ほとんど経験ないから最初は苦労するだろうけど、そのチャレンジ精神はいいよ。沢田くんの持ち味だから、頑張ってな!ところでクラブはあるのかな?」

「有難うございます。クラブも何も持っていないので、買わないといけないです。」

「そうか。良かったら僕の使っていないクラブを持ってるからあげよう。シューズとかグローブは自分で買った方がいいな。」オレは部長の好意を受けて良いのかどうか迷ったが、有り難く頂戴することにした。

「重ね重ね有難うございます。お言葉に甘えさせて頂きます。」

「分かった。そうしたら、君の最寄り駅は目黒駅だったよね。今度の土曜日に駅の近くに目黒ゴルフ練習場という練習場があるから、そこにクラブを持って行ってあげるよ。」

「そこまでして頂いたら申し訳ないので、自分が部長の家まで取りに伺わせて頂きます。」

「いや、それには及ばないよ。さほど遠くはないし、久しぶりに練習場にも顔を出したいし、遠慮しなくていいから。」

本当に申し訳ないと思いつつ、部長の好意を受けることにした。

「それではお手数をおかけしますが、よろしくお願いします。」

巽部長の後ろ姿はなんとなく嬉しそうだった。

周りにいた先輩方も、無責任に「頑張れよ〜!」と嬉しそうに声を掛けてくれた。

これは大変なことになった。まあ部長に乗せられたように気がしないでも無かったが、こうなったら後の祭りだ。部長もチャレンジと言っていたし、空振りだけはしないように練習しないと。そんなことを考えていると、部長とのやりとりを聞いていた千夏が寄ってきて、「ゴルフ参加するの。大樹ゴルフもやるんだ?」

「やるわけないだろ。お金掛かるし。全く考えてなかった。ちょっと向こうに行こう」

5階フロアーの昼食時間にはちょっと早かったが、千夏を連れ出し食堂に向かった。

「部長との話、聞いてただろう」

「聞いてた。大樹が“もちろん参加します”って言ってた」

「そこですか!?ああいう風にいわれたら、欠席しますなんて言えないだろ」

「まあね。でもさあ、遅かれ早かれゴルフは仕事にも役に立つし、いいんじゃない。大樹の英断を指示します!!」

「アホか!?ところでちなっちゃんは参加するの?」

「実は私も香川課長から誘われたんだけど、秋のコンペから参加することにした。それまで練習する時間をくださいって言ったら、期待してるわって言ってくれたわ。香川課長も新人の時に上司から言われて、秋のコンペまで練習して参加したんですって。香川課長って上手らしいわ。仕事もゴルフもできて憧れちゃわ。ねえ聞いてる?」

そんな話はオレの耳には届かず、既に戦闘モードに入っていた。

こうなったら、ゴルフを練習して末木課長と千夏をギャフンといわせてやる。ゴルフも野球もさほど変わらん!肉体労働ならオレに任せろだ!!

千夏の今日の食事はヒレカツ定食、オレはカツ丼大盛りのチケットを買い窓側の席についた。ゴルフの道具の事を千夏と話していると、またまたオレの背後に人の気配がした。

オレの目の前の千夏が突然立ち上がり、目を丸くして「お疲れ様です」と神妙に挨拶した。


次号に続きます・・・。


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