2番ホール:配属にはもれなく上司がついてくる!①
いよいよ待ちに待った配属の発表。大樹や千夏たちは希望通りの部署に配属となるのか。
また配属先には、いろいろな人たちとの出会いがる。
いよいよ配属発表の時がきた。
オレの希望は営業部、田之倉は経理部、千夏も営業部だ。もし千夏と同じ部署に配属されたらこの先ずっと立場が下になってしまうようで、それだけはないように祈った。
千夏はオレと一緒の部署なら少しは気が休まるなどと、俺をペット扱いにするつもりだ。
営業部は1課から5課と支社が北海道、東北、北関東、中部、関西、四国・中国・九州とあって、毎年5名程度配属されるそうだ。
いよいよ発表の瞬間だ。
社員番号の若い順に名前が呼ばれ、配属先の部署名が発表されいく。
いよいよオレの番だ。
「沢田大樹さん。営業部。」内心「やったー」と叫んだ。
田之倉と千夏が、「良かったね。おめでとう!」自分のことのように喜んでくれた。
結構いい奴らだ。もうすぐ千夏の番だ。
「如月千夏さん。営業部。」
「ちなっちゃん、営業で良かったな!課はわからんけど、同じ課になるといいな。」とオレは思わず言ってしまった。
「ホントにそう思ってる?」と返してきたので、
「冗談だよ。」と言い返してやったら「フン!」だって。レディーにあるまじき行為だ。
田之倉も希望の経理部に配属が決まり、3人とも希望の部署に決まった。
それでも会社の都合で本人の希望通りに行かない者もいて、ちょっと気の毒な気もしたがこれはこれで致し方ない。長い人生色々あるさと無責任に思った。
大講堂の後方にはお迎えの先輩社員がきていて、営業部からは主任の榊原弥生さんがオレら二人を待っていた。
「沢田くんと如月さんね。営業部第1課の榊原です。営業部の代表で迎えにきました。オリエンテーションお疲れ様。これからよろしくね。それじゃ5階のオフィスに行きましょう。ついてきて。」
榊原さんは、なんとなく雰囲気が千夏に似ていた。これまた容姿端麗で姉御タイプ、面倒見も良さそうだ。主任ということは、部下もいるのだろう。この業界も女性がだいぶ増えたとは言っても、まだまだ少数派。そんなところで主任をはってるなら、男性陣を顎で使ってるのかもしれんと考えるとそれも魅力かなと思った。。
エレベーターで5階へ移動すると、廊下の向こうがオフィスになっている。榊原さんが先頭でオフィスに入ると、そこには100名以上の先輩社員が机を並べていた。
新入社員2名が入ってきたことに気付いた先輩社員から笑顔で迎えて頂いたことは心強かった。通路を通ってその一番奥にあるパーテーションで囲まれたブースに行くと、そこには巽部長が座っていた。
「やあ来たね。榊原くん、案内ありがとう。さあそこにかけたまえ。」デスク前のソファーに巽部長が腰かけるのを確認してから、二人一緒に着席した。
「どうだった。オリエンテーションは?取り敢えず会社のことを少しでも理解してもらえれば今はそれでいいよ。仕事に携わればだんだん覚えるから。」
「今年は営業に全部で6名が配属されたけど、一部署に2名配属されたのは営業部だけ。既に説明があったと思うけど、うちの部は1都6県の法人向け営業だ。他に公共案件とか不動産事業などもやってるが、会社の主軸事業を担っている。しっかり勉強して頑張ってください。」
会社組織の一員として当たり前のことだが、改めて会社の厳しさを感じ身の引き締まる思いがした。
「それじゃ、正式には明日の朝礼で紹介するけど、君ら二人が所属する1課と2課の課長をこれから紹介するから、今後のことは課長から話をよく聞くように。」
巽部長は、第1課の末木課長と第2課の香川課長を呼んだ。
オレと千夏はそれぞれ課長に連れられ、各課の課長そして在籍している先輩社員に挨拶をした。中にはむっつりした先輩もいたが、ほとんどの先輩は笑顔で迎えてくれて、ホッとした。
その後、オレの直接の上長となる主任を末木課長が呼んだ。
「沢田、明日からは主任の榊原さんの下でしっかり勉強してくれ、榊原さん、よろしく頼むよ。遠慮せずビシバシ鍛えてやってくれ!」いきなり呼び捨てで名前を呼ばれびっくりした。あとで末木課長という人物がよーく分かった。
「沢田くん、今日からよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします。精一杯頑張ります!」
「そんなに力入れなくていいわよ。まだまだ先は長いから息切れしちゃうよ。それから課長だけど、いつもあんな感じだから気にしないでね。」
お優しいお言葉を頂き、思わずコロっといってしまいそうだ。今はまだ実力ゼロだけど、早く会社の戦力として認められるよう頑張ろうっと。
「席にはパソコンとか最低限の事務用品は用意してあるから。パソコンは使えるわね。社内システムがいくつもあるから、明日一緒に確認しましょう。あと第1営業部で沢田くんと如月さんの新人歓迎会を今週金曜日にやるから予定しておいてね。お酒はいけるんでしょ?」「はい、大好きです!」
「あら良かった。楽しんでもらえると思うわ。それじゃ今日はこれでお開き。帰っていいわよ。お疲れ様。」
「お疲れ様でした。お先に失礼します。」
千夏もほぼ同時に帰宅するところだった。
今日はオリエンテーション最終日ということで、オレと田之倉そして千夏と千夏の友人の三井由佳さんとお疲れさん会をすることにしていた。
次に続きます・・・。