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ごるふ一徹、カノジョ一途、一時社会人  作者: えずみ・かいのう
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7番ホール:ニュークラブでラウンドレッスン!③

ラウンドレッスンでの新しいクラブの筆下ろしも良好に終えた大樹に、巽部長からダブルス戦への出場を打診される。西垣プロのレッスンでは新しいテクニックも教わり、千夏と二人で飲みにいくことに・・。

オレは榊原さんに指示されていた改修工事の提案書をなんとか纏め上げて、定時も

過ぎていたので帰り自宅をしていると、巽部長が話しかけてきた。


「どう仕事は、だいぶ慣れてきたかな?」

榊原さんには本当に色々と教えてもらって助かっていたので、素直に答えた。


「榊原くんは営業としてとても優秀だ。彼女の下で一所懸命勉強しなさい。きっと君の

ためにもなるから。ところでゴルフの方は順調かな?」やっぱり巽部長もゴルフが

好きで、一日一度はゴルフの話をしないと気が済まないのだろう。


「はい、西垣プロのお陰で自分でも上手くなっているのが少し実感できる様になりました。今はゴルフに行くのが楽しみです。」


「そりゃ良かった。実は、今度ゴルフメーカーが主催しているダブルス戦というのが

あって出ようと考えているんだが、沢田くん一緒に出ないか?」

突然の誘いにびっくりした。オレが試合に出る?


話は内容は、毎年開催されている大会で2人1組でチームを組んでスコアーを競う合う

らしい。地区予選から始まって地区決勝、全国大会と本格的だ。これから、企業対抗戦の選手選出のための社内競技もあるから、如何せん不足しているオレの経験不足を補うために、少しでも競技というものを体験する必要があるとのことだった。

とても有難いことだ。


「有難うございます。喜んで参加させていただきます。ところで本当に私で良いんでしょうか?足を引っ張ってしまうと思うのですが。」

「ダブルス戦は文字通り2人で闘うチーム戦だ。チームは助け合うものだ。私だって完璧ではない。私が足を引っ張るかもしれない。だから助け合うことが必要だ。助け合うとは、スコアーだけではないんだよ。精神的にサポートし合うことも大事なことだ。野球だって同じだろう?」


そういうと部長はオレの肩をポンと叩き、お互い頑張ろうと言って席に戻った。

“オレが試合かあ。”まだ早いんじゃないかと思いながらも、やる気が漲ってきた。


翌日火曜日は、千夏と練習に行く予定だった。“ビギナーズラック”で連絡したが、残念

ながら由佳ちゃんと田之倉は仕事で遅くなるらしい。定時後一緒に会社を出て目黒ゴルフ練習場に向かった。


「ねえ聞いてくれる!」聴かないと言っても喋るくせに・・・。

途中、千夏は“毎日家でパター練習をしている”と嬉しそうに話した。

「昨日ヨツギゴルフに行って早速パターマット買ってきたのよ。その時ね、柴田さんが

いらして、パターの練習器具を教えてくれて買っちゃった。それが50cmの定規みたいなもので、真ん中に細い溝があって端っこにボールを置いて、溝の上を転がすのよ。

それがすごく難しいの。途中で落ちちゃうのよね。」


「へえ〜、面白そうだね。要は、ヘッドを真っ直ぐ引いて、真っ直ぐ出す練習ができる

のかな?」

「そうみたい。柴田さんも言っていた。ゆっくり弾いてラインに沿ってまっすぐ振る動きをマスターできるんですって。500円で買えるしコスパはいいよ。」

「今度オレも買ってこようかな。」

「大樹パター上手だからいらないかもね。昨日大樹言っていた緊張するっていう意味が

よく分かった気がする。まっすぐパットしようとすると、上手くいかないことが多いわ。」


千夏がそんなことを感じるとは、やっぱりセンスがあるのかもしれない。そんなことを

話しながら、練習場に到着。


「天野さん、こんばんは。」

「いらっしゃい。今日は二人か。2階の30と31番が空いているからそこでいいかい?」

「有難うございます。それでお願いします。」


預けてあった7番アイアンとサンドウェッジを受け取り、打席に向かった。

会社との社員利用契約の中で、一人3本まで預かってくれることになっているのだ。


西垣プロのレッスンはすでに始まっていて、生徒は5人いた。この間同じ組になった

赤嶺さんもいらして、挨拶した。ついでに千夏を紹介した。千夏は愛想良く自己紹介して、赤嶺さんも気に入ってくれた様だ。千夏は立派な営業になるだろう。


打席に入ってシューズに履き替え、まずはウォーミングアップ。

その後は、いつものハーフスイングの反復練習。


今日は千夏も西垣プロの手前、一所懸命ハーフスイングを練習していた。

千夏のハーフスイングでボールは70ヤードくらい飛んでいた。安定性はまだまだだが、当たれば綺麗な軌跡だ。

「如月さん、いい感じで振れていますね。力みのないリズム感の良いスイングです。

このまま練習すれば、100切りも相当くないですよ!」

「西垣さん、本当ですか!もう行きたくて行きたくて。」やっぱり千夏はせっかちだ。


「まあそう焦らずに。もう少し安定性が出るまで我慢です。まずは10球中6、7球

イメージ通りのボールが打てる様になってください。

ちょっと目標は高いですが、如月さんならできるでしょう。それとインパクトの音を

意識してください。音でショットの良し悪しを判断できます。」


西垣プロが千夏のスイングを見て、いくつかアドバイスしていた。今はスイングを固める時期だから飛ばすことは重要ではないと言っていた。オレも同じことだ。


次はオレの番だ。西垣プロから一昨日のラウンドで分かった課題をこれから解決していくと言われた。まずは、平らなライではない爪先あがりや左足下がりなどなどの対応策だ。

「まずつま先上がりですが、スイングそのものはこれまで通りでいいです。

変えるのは

アドレスと重心位置です。まずクラブは短く持ちます。傾斜が強いほど短く持ちます。

ボールの位置は身体の中心にセット、それからボールが左に行きやすくなるので、少し右に狙いを定めて構えます。これは、ライ角がアップライトになり、スイングもフラットになるためです。最後に足場が不安定になるので、重心は低くしてスイングはコンパクトに、大振りは厳禁です。先ほども言いましたが、傾斜が強いほど左に行く傾向は強くなります。爪先下がりは、その逆です。但しスイングをコンパクトにする点では

同じです。」


オレは爪先あがりの状況を想像して、スイングをイメージした。

「打ちたい距離が変わることによって何か変わることはありますか?」オレは質問した。

「距離が短くなればクラブも短くなりますが、小さいクラブほどヘッドが返りやすくなるので左に行きやすくなります。その点を整理して狙う方向、クラブ選択など決めることになります。余談ですが、ある程度の傾斜であればまっすぐ飛ばす打ち方もありますが、

これは先ほどのスイングを実践で身に付けたあとでいいでしょう。」


その後、左足上がり、左足下がりの打ち方を教えてもらった。

この間のラウンドでは、兎に角まっすぐ飛ばそうとしてハーフスイングの延長でスイングしていた。爪先上りや左足上りのライも何度かあったが、確かに左にフックしたボールが出ていた。スイングが悪いのではなく、ただ打ち方を知らなかっただけと知って、少し

安心した。


この日も西垣プロはハーフスイングのビデオを撮影してくれて、いくつかアドバイスしてくれた。自分のイメージしているスイングと実際のスイングとは大違いだ。勉強になる。

それにしても、ビデオでみる自分のスイングはアダム・スコットにはほど遠い。


球数はすでに200球を超えて、気がつくと9時になっていた。千夏は黙々と打っていた。

「ちなっちゃん、まだ練習してく?」

「ふぅ〜、そろそろ終わりにしようかと思っていたところ。ちょっと腰が痛くなってきたし。ご飯食べに行く?」

「ああ、いいよ。どこ行こーか。ラーメンチャーハン?」

「あのね〜、なんでいつもラーメンチャーハンなのよ!」千夏は軽蔑した視線でオレを

見て、

「もうちょっと雰囲気のあること言えないかな〜。乙女が晩ご飯付き合ってあげるん

だからさ。」


ちょっと待て。ご飯誘ってきたのはそっちだろ!コン畜生と思って、

「ちなっちゃんはラーメンチャーハンが似合うかなあって思って!」

「大樹と一緒にしないで!私はイタリアンの方が似合っているから、そっち系にする。」


千夏の意向は絶対になりつつあるなと思いながら、腹に入ればなんでも良かったので

目黒駅近くの“Pasto sano”行った。ここはパスタとピザで有名なお店だ。


オーナーはとっても明るいイタリア人で、片言の日本語で話しながら本場のPizza

を食べさせてくれる。

千夏はメニューを見ながら、「お腹減ったね〜。なにしよっかな?大樹はなにするの?」

「とりあえずビール」

「そうだった。忘れていた。」こんな大事なことを忘れるなんて千夏もまだまだだ。


スタッフに生ビール大ジョッキを頼んでから、メニュー選びに入った。

「オレは納豆以外はなんでも大丈夫だから、ちなっちゃんの食べたいものを選んでいいよ。」

「大樹優しいんだね。ところで納豆ダメなんだ。日本人なのに。」千夏がニコッとした笑顔が妙に新鮮に感じた。


「じゃあ、渡蟹のトマトソースパスタとマルゲリータと海鮮サラダね。」

「オッケー。」スタッフが美味しそうな泡だての良いビールを運んできたので、すぐに乾杯した。


「お疲れさん!」

「美味しい!体動かした後はビールに限るね!?」

「ほんと美味い。シ・ア・ワ・セ!」いつも思うが、最初の一口は本当に上手い。

「先週マスターズの総集編っていうのやっていて観たけど、あのゴルフ場すっごい綺麗

だったよ。大樹みた?」

「観た観た!あんなゴルフ場があるなんて驚いたよ。

アメリカにあるオーガスタナショナルってコースだろ。あんなところでやってみたいよな。」

「解説者が言っていたけど、芝を保護するために6月から9月の暑い時期は閉鎖して

いるんだって。マスターズの開催前は全世界から専門の人が100人くらい来て芝の整備をするって言っていた。」

「やることが半端じゃないよな。そう考えるとゴルフ場の整備って大変だよ。敷地も

すごく広いしね。」日本は四季があるからそれも関係するだろう。


「グリーン上は13フィート以上とか言っていたけど、どのくらい早いんだろうね?」

「やったことないからわかんないね。この間ラウンドしたレイクパールカントリークラブは、確か9.5フィートとマスター室に掲示してあった。それでも結構速かったし、特に

下りになると余計にそう思った。」


「芝にも色々種類があるみたいね。確かベントとかコウライ、バミューダ芝とか。」

「アメリカのゴルフ場は、東海岸と西海岸で使われる芝も違うから、打ち方も変わるって言っていた。全く想像もつかないね。この間も、フェアウェイはいいんだけどラフに入ったボールはすごく打ちづらかった。芝に食われて飛んだり飛ばなかったり。


そうだ、西垣さんに聞くの忘れた・・・。」


「本に書いてあったけど、ボールが全部沈んだ場合と半分だけ沈んだ場合とか、打ち方があるって書いてあった。」千夏もレッスン書を一応読んでいるようだ。


「やっぱりゴルフは、ゴルフ場に行っていろんな事を経験しないと上達しないかもね。

それには基本ができてないと上達の妨げになるって西垣さんも今日言っていたよ。」

「大樹は野球やっていたからわかると思うけど、私も剣道で基本の大事さは嫌っていう

ほど理解しているつもり。ゴルフも同じね。今やっているハーフスイングは、剣道でいえば素振りのことね。何千、何万回という数を振り込んでやっと身に付く。それで竹刀を振る身体が出来上がるのよね。」


「それは分かる。積み重ねが大事ということだ。ラウンドレッスンで一緒に回った

相川さんは素振りはもちろん、毎日腕立てやスクワットやってるって言ってた。マジ努力しているって感じだった。でもそれが楽しそうだったけどね。それに上手だから説得力

がある。」


「ストイックな人ね。そのくらいやらないと上達しない?」

「そうだろうね。それにゴルフのことをよく勉強してる様だった。」

「取り敢えずはゴルフのルールを勉強しなきゃね。」

「それとマナーもね。」こういう話は全く楽しい。


ビールがなくなったので、料理を持ってきたスタッフに生ビールを注文した。

喋っていると喉も乾く。

「みんなで一緒に勉強できる様な仕組みは作れないかな?多分大樹が一番先行している

から先生役になって。」

「う〜ん、仕組みかあ。そしたらL I N Eでグループ作ってそこで情報共有しよっか?」

「本だけ読んでいても個人にしか分からないから、勉強になったことを登録すればみんなで見れるね。」

「“ビギナーズラックS T U D Y”っていうグループ名はどう?」

「いいよ、それで。やってみよう!」


千夏が料理を取り分けてくれた。女性らしいところも持ち合わせている。

「美味しいね。」千夏の言葉に全く同意だ。

「次は由佳ちゃんと田之倉を連れてこよう。由佳ちゃんは特に喜ぶんじゃない?」

「意外と田之倉の方が喜んだりして。どっちかって言うと日本料理という気がするけど。」

「田之倉くん、今頃会社でくしゃみしているんじゃない。」

田之倉は仕事しているんだった。ちょっと失礼なことを言ったかも・・・。


料理を食べ終わる頃には10時を回っていた。今日はカラオケにも行かず、大人しく帰ることにした。たまには千夏と二人で来るのもいいかもしれない。そんな心境になった。


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