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ごるふ一徹、カノジョ一途、一時社会人  作者: えずみ・かいのう
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7番ホール:ニュークラブでラウンドレッスン!②

初めてのラウンドレッスン!大樹と千夏はのプレイはいかに!?

オレと千夏の初めてのラウンドレッスンは、千葉県にあるレイクパールカントリークラブ。レイクの名前通り“池”が各所に配置され距離よりも方向性が求められるコースだ。


ラウンドレッスンには、今回は生徒5人が参加した。いつもは10名前後が参加して

いるらしいが、たまたま都合の悪い人が多く、少人数での開催となった。


オレは朝5時に起き、最近では当たり前になった千夏を迎えに行った。

車に乗り込んだ千夏は朝からチョーハイテンションだ。


「ゴルフ場って綺麗なんでしょ!レストランも楽しみね。」

挙げ句の果てに。「パープレイで回っちゃったらどうしよ!?」などあり得ないことを

言っていた。きっと帰りの車の中では意気消沈して静かにしていることだろう。


クラブハウス正面玄関では、制服らしきブレザーを着たスタッフの方が出迎えてくれた。

それまで元気いっぱいだった千夏は、恐縮した様子でバックを渡して車に乗り込んできた。


「駐車場に停めてくるから、ロビーで待ってればいいのに?」

「初めてきたとこだし、なんか落ち着かなくてさあ。一緒に行こうよ。」

千夏も可愛いところがあるものだ・・。


千夏と正面玄関を通りロビーに入ると、西垣プロが出迎えてくれた。

他の3人の生徒さんも既に到着していた。


オレは千夏をフロントに連れていき、受付を済ませてからロッカーに向かった。

もちろん千夏のエスコートも忘れなかった。


着替えをしてクラブハウスを出ると、正面からコースを見下ろせるレイアウトに

なっていた。ハウスの目の前には大きな池があり、色鮮やかな錦鯉が気持ちよさそうに

泳いでいる。その池を囲むように桜や松が植えられている。日本庭園のような趣に、

ゴルフ場だということを忘れてしまうようだ。


スタート前に集合して簡単に自己紹介した。品川で鉄工会社を経営している赤嶺さん。

70歳位の落ち着いた感じの紳士で、練習場でもお会いしたことがある。

もう一人は50歳位の相川さん。大手電機メーカーの営業マンで、競技にも出ている

らしい。最後の1人は、渋谷で寿司屋をやっている二本柳さん、オレも千夏も初めて

お会いしたがぜひお近づきになりたいと千夏が言っていた。


組み合わせはオレと千夏で1組、そして残りの3人で1組作って、西垣プロがハーフ毎にレッスンしてくれる。


その西垣プロから、全員に今日のテーマを各人に与えられた。

オレには、“結果は考えず、一打一打に集中すること。練習をしていることを実践する。“だ。千夏には、結果に一喜一憂せずとにかくゴルフを楽しむこと、と言われていたが、

これが難しいことは既に知っている。

西垣プロは最初に俺たちの組に付いてくれた。


1番ホールは、360ヤード、やや打ち下ろしで真っ直ぐなホールだ。フェアウェイの

芝はまさしくミドリの絨毯。絨毯の一番奥にグリーンが見え、その上空に青い空が覆っている。“緑”と“青”の見事なコントラストだ。梅雨入り前の今だから見ることができる

景色だ。


ショットの順番はオレが一番、2番目が千夏だ。

西垣プロに言われた通り、ティーグランドの後方からコースを見渡しトラブルに

なりそうなところを確認。どちらかというとスライサーのオレは、最悪のケース(この場合は右に行ってしまった時)を想定して少し左サイドを狙う。


あくまでハーフショットの延長線のドライバーショットを打つ。ボールは狙いよりも

少し右に出て右フェアウェイに落ちて、ラフに入った。やっぱり練習場通りにはいかない。トップが少し浅く、左腰が早く開いてしまった。まあ朝一ショットにしてはいいだろう。


次は千夏がレディースティーから記念すべきティーショット。さすがの千夏も緊張して

いる面持ちだ。


「カーン!」静寂の中、ドライバーの打球音が響く。

「ナイスショット!」西垣プロや他の生徒さんから声がかかった。思わずオレも拍手を

した。ボールは見事フェアウェイのど真ん中へ見事なショット。


千夏は“ありがとうございまーす!”と手を振って応えている。本番に強いというか

千夏はやっぱり何かを持ってる。


それにしても最初のホールから一喜一憂していて、西垣プロに言われたことを忘れている。

「大樹、ドライバーって真っ直ぐ飛ぶもんなのね!」全く憎まれ口を叩くやつだ。

練習場ではいつも曲げてるくせに!


オレのボールはラフで少し沈んでいるが、気にするほどのものではなさそうだ。

残り100ヤードをサンドウェッジで打ったボールは、芝の抵抗が思ったより強く

グリーンの手前に落ちた。西垣プロから、ラフから打つときは素振りをして感触を

必ず確認するよう言われた。


一方の千夏は、残り90ヤード。ゴルフが難しいのはグリーンに近づいてからだ。

千夏の「ガキ!」ボールの上の方にヘッドが当たったようで、低く勢いよく飛び出した。

いわゆる“トップ”というやつだ。ところが、このボールがコロコロ転がって

見事グリーンにオン。


「やった〜!予定通りナイスオン!」ポジティブシンキングは好きだよ千夏くん・・・。

オレの20ヤードのアプローチはうまく打てたものの距離感が合わず、ピン手前7mへ。


そこから2パットのボギー発進。千夏は6mのバーディーパットを5mオーバー、

返しのパットはショートしやすいものだがそこは千夏。ガツンと打って何と入って

しまった。


「私って天才かも!!」西垣プロも苦笑いだ。

「大樹はボギーで、私はパーって書けばいいんだね。」スコアーカードに記入するのに、

“オレのボギー”を強調しなくていいから・・・。


しかしゴルフはそう甘くはない。2番ホールから千夏のゴルフは大変な事態になった。

空振りはないものの、トップありダフリありでボギーどころかダブルボギーがやっとだ。それとグリーン上で苦労していた。

結局、千夏は57ストローク、オレは48ストロークでスコアーはまずまず。


俺の新しい”相棒”であるZONEアイアンは、練習の時と同じように打ちやすい。まだまだこのクラブの性能を

だしきれているとは言い難いが、これから長い付き合いになりそうで早くも愛着が湧いてきた。


「ゴルフってやっぱ難しいわ・・。」少しゴルフのことを分かってきたようだ。

「思い通りにいかないから、面白いんだよ。ちなっちゃんはこれからだよ!」

「大樹に言われても説得力がないんだよねえ〜。」憎まれ口を言う元気があるなら、

まだまだ大丈夫だ。それにしても子憎たらしいやつだ。


昼食を挟んだ午後のラウンドは、千夏と2人でのプレイだ。嬉しくもあり不安にも感じる。

コース内の池や樹木は見ている分には気持ちが安らぐ。

だが、ゴルフとなると邪魔の何者でもない。特にショートホールのグリーン手前の池は、しっかり当たれば入ることはないと分かっていてもプレッシャーになる。


千夏は、「大きな池ねえ、なんか入りそう。」と言いながら、言葉通り池にいた鯉を

驚かせていた。鯉もいい迷惑だ。


オレのインコースは46。トータル94でこの結果には満足しているが、内容には

もっと満足した。色々反省はあるが、次に活かすことができそうな気がした。

まだまだ伸び代は十分あると感じた。千夏は52で合計109ストローク。


初ラウンドにしては上出来だが、オレのデビュー戦よりスコアーが悪いと不満そうだった。

ラウンドが終わってから簡単なパーティーが行われた。そこで成績発表と西垣プロから

各人のラウンドに対するアドバイスがあった。


オレには、“練習してきたことはラウンド出せていること。コースでは平らな所は少なく、傾斜地での打ち方はまだ練習していないので今後の課題。

最後に、プレイ中の思考方法の質を高めること”だった。


上級者の赤嶺さん、相川さん、二本柳さんには、いくつか技術的なことを話していたが、いまいちオレには理解できなかった。


翌日の出勤は、朝から気分が良かった。昨日のゴルフの残像が残っていて、18ホールを振り返るのが楽しかった。ナイスショットも何回かあった。考えるだけで気持ちが良い。失敗を思い出すと、なんでそうなったのか?次はこう打とうとか考えている間に、

あっという間に渋谷駅についた。


後ろから肩を叩かれた。田之倉だった。

「おはよう。昨日はどうだった?」

「おはよう!楽しかったよ。スコアーより内容に満足ってやつかな。」


オレは、昨日のプレイを説明したが、ハーフも終わらないうちに会社についてしまった

ので、昼食を一緒に取る事にして別れた。


昼食は、千夏や由佳ちゃんも一緒になった。

みんなで社員食堂のランチを食べながらゴルフ談議を楽しんだ。


昨日のラウンドのことを思い出しながら、最初から話した。

みんな嬉しそうにオレの話を聞いていた。

「それにしても大樹ってすごく上手くなってるよね。練習場は週4、5回くらい行ってるよね?」千夏が聞いてきた。


「ああ。最低週3回は行く様にしてる。後は仕事次第だけど、実は家にちょっとした

スペースがあってそこを改造して練習できる様にしたんだ。天井が低いからドライバーは振れないけど、7番アイアンまでは素振りできるし、アプローチもできる様にした。

もちろんパターもね。」


「すっごい!!じゃあ毎日練習してるの?」由佳ちゃんが質問した。

「ほぼ毎日かな。西垣さんがパターだけは毎日10球でも良いから打ちなさいって言ってたから。」

「沢田はゴルフにはまっちゃったね。僕もはまりそうだけど、毎日となると難しいかも

知れないよ。」


「義務的にやると疲れるから気軽に考えればいんじゃない。オレってコースに行くのは

もちろん好きだけど、練習も好きなんだよね。日課というほどのもんでもないし、パターだけならゲーム感覚でもできるし。」


由佳ちゃんが興味津々に「練習をゲームにしちゃうんだ。どんなふうにしてるの?」

「至って単純。カップに10球連続して入れるまで止めないこと。6、7球までは普通に打ってるんだけど、10球に近づくにつれて気持ちの面で変化してくるんだ。」


「どういう感じに?」

「そうだなあ。“入れたい”とか、“後3球”とかね。それまで考えていないことを考え

始める。だんだん緊張してくるというか。これってバーディーパットとかパーパットを

打つときと同じ様な感覚に近いかな。」

「10球入るまでやめないんだから、しっかりできてるのよね?」

「だいたいはね。」

「だいたいってできない時もあるんだ。」

「途中で挫折する時もある。よく分かんないだけど、入らないことが続くときがあるんだよ。自分で考えて色々試してやるんだけど上手くいかない。」

「なあーんだ。意志よわ!?」全く千夏はストレートだ。


「ほっとけ。でもね、その過程で気づきがあるんだよ。それと毎日やってるとパター

グリップの感覚を忘れないんだ。西垣プロもそれが大事だと言ってた。」

みんな半分納得して、半分はよくわからない様だ。やっぱりまだコースに出てないから

実感が湧かないらしい。

あっという間に昼の休憩時間も終わり、みんな各オフィスに戻った。


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