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ごるふ一徹、カノジョ一途、一時社会人  作者: えずみ・かいのう
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7番ホール:ニュークラブでラウンドレッスン!①

ニュークラブを手にした大樹、西垣プロ主催のラウンドレッスンの千夏と臨むことに!

大樹と千夏が急接近の兆し??


2週間後、会社の食堂で千夏と昼飯を食べているときに、西本さんからクラブが仕上がったと連絡があった。オレは今晩にでも取りに行きたかったが顧客との打ち合わせがあり、明日工房に取りに行くと約束をした。


「新しいクラブができたの?」

「ああ、やっとね。早く打ちてえ〜!」

「大樹さあ、子供みたいにうれしそうにして可愛いわよね。」

「あのねえ、この年になって“可愛い”は嬉しくとも何ともない!」

「まあいいじゃない、褒めてるんだから・・。」オレはお前の子供か!?


そんな千夏の言葉をよそに、オレは早くニュークラブを手にしたかった。

「明日の土曜日は練習場に行くの?」

「ああ、そのつもり。朝、工房に行ってからクラブを持って練習場へ直行。」

「じゃあ私も連れてって。練習にも行きたいし、その工房とやらもぜひみてみたいわ。」


「いいけど平塚だぜ。運転大丈夫なのか?」

「じゃあ、迎えにきて。」千夏の家は代官山の方だ。

「あのお〜反対方向なんですけど・・・。」

「お願い!いいでしょ。ダ・イ・キ・く・ん!!」千夏はオレの顔を覗き込んだ。


「分かったよ。じゃあ9時に行くから待ってて。」ぶりっ子する千夏のいうことを渋々オレは連れて行くと約束した。どうも最近こいつのペースに乗せられている気がしてならないが、悪い気はしない・・・。


翌朝、千夏を迎えに教えられた代官山の住所に向かった。

代官山には芸能人やスポーツ選手など数多くの有名人が居を構えている。路地に入りゆっくり車を走らせていると、30mくらい先に千夏らしき女性が立っているのが見えた。

千夏の前で車を止めて初めて、母親らしき女性が千夏の後ろに立っているのに気付いた。


車から降りて、社会人らしく挨拶をした。

「おはようございます。如月さんと同じ部署で働いている沢田と言います。」

「わざわざお迎えにいらしていただいて。千夏がいつもお世話になってありがとうございます。」千夏とそっくりで親子とすぐわかる。違うのはまさしく大人の女性ということだ。


「お出迎えご苦労さん。はい、これ。」そう言ってオレにゴルフバックを任せて勝手に助手席に乗り込んだ。

「沢田さん、わがままな娘ですが、よろしくお願いしますね。」品のある言葉遣いだ。

「とんでもないです。僕の方こそお世話になってますから。」オレは心にもないことを言ってしまった。


「お母さん、余計なこと言わなくていいから。沢田くん、行きましょ!」

オレは改めて母親に挨拶をして車に乗り込んだ。


「ちなっちゃん、すげえ〜家に住んでんだな。あの立派な門は年代物か?」

「よく知らないけど、曽祖父の頃からのものみたいね。」千夏はまるで他人事のようだ。

「それにしても、お母さんによく似てるなあ。」

「よく言われるわ。妹たちはお父さん似ね。」そういえば以前妹が2人いると聞いたことがある。

「妹さんは学生?」

「2人とも大学1年生よ。」

「もしかして双子なの?」

「ええ、そうよ。言ってなかったけ?」

「ああ、聞いてないよ。さぞ可愛いんだろうな?」

「なに、大樹は大学生が好みなの?」千夏がいたずらっぽく言った。

「違うよ。オレは男兄弟だから、妹がいたら可愛いかなあって思っただけだよ。」


そう言ったオレの言葉に、なぜか千夏はなにも言わなかった。その理由がわかったのは

あとになってからだった。


その後、レッスンやクラブ、新しくできたレストラン、会社の話をしているうちに工房に着いた。既に工房は開いていた。


「やあ、いらっしゃい。お待ちしてましたよ。あれ、今日は彼女と一緒ですか?」

「違いますよ!単なる召使いみたいなもんです。」

「召使いですかあ〜、いいですねえ!ハハハ・・・」


「ちょっとなに言ってんのよI同じ会社で働いてる如月と言います。今日は工房の勉強をしたくてついて来ちゃいました。」

「そうですか。ありがとうございます。狭いところですが後でご案内しますよ。」

そう言って俺たち2人を奥の試打室に連れて行った。

試打室に置いてあった13本のクラブを指差して、

「これが沢田さんのクラブです。良かったら打ってみて下さい。」


オレは躊躇なく7番アイアンを手に取り、素振りを数回した。

握り具合い、振りやすさ、ヘッドの走り具合など感触はいい。

ボールをセットし、10球ほど打ってみた。


「バシ」「バシ」「バシ」

「沢田さん、いかがですか?」

「最高ッス!打感も柔らかくていいですし、ヘッドが走る感じがします。」

「じゃあ、ドライバーもいってみましょう。」オレはドライバーを手にして、アイアンと同じように10球ほど打った。“振りやすい”というのが素直な感想だ。


「沢田さん、今測定しましたがヘッドスピードは52m /sですね。距離も290ヤード出ています。左右のブレはありますが、許容範囲ですね。」

「西本さん、本当にありがとうございます。作ってもらって良かったです。早く実戦で使ってみたいです!」

「そう言っていただけると、職人冥利につきますよ。」

「ラウンドでの感想もまた聞かせて下さい。多少の調整もできると思いますので。」


その後、西本さんは千夏のリクエストに応じて、クラブができるまでの過程や調整方法など親切に教えてくれた。

オレと千夏は西本さんにお礼を言って工房を後にした。早く練習場に行きたい!


「大樹、うれしそーだね?」

「そりゃー嬉しいよ。やっとマイクラブができたんだから。それがまた相性のいい彼女みたいなもんだからね、今日から一緒に寝たいくらいだぜ!」

「また大袈裟なことを!気持ちはわかるけどね。」千夏はオレの顔を見て笑った。


練習場では西垣プロがまだレッスンをやっていた。

オレと千夏は、レッスンの邪魔にならないようとなりの打席を天野社長に取ってもらった。

30分もするとレッスンが終わり、西垣プロが俺たちのいる打席にきた。


「新しいクラブきたんですね。」

「ええ、先ほど西本さんの工房に行って来ました。」

「ちょっと打ってみて下さい。」今日はレッスンではなかったが、みてくれるようだ。


5球ハーフスイングで打ったところで、西垣プロが

「いいじゃないですか。振りやすそうですね。左右のブレも少ないし弾道も安定していますね。」

「おかげさまでとってもいい感じで振れます。」

「そりゃあ良かった、僕も安心しました。これからもハーフショットの練習して下さい。ところで如月さんはどうですか?」そう言って今度は千夏のスイングを見始めた。


クラブが変わっただけで、ボールに伸びが出て弾道まで変わった。部長には申し訳ないが、今までのクラブとは安定感がまるで違う。

「じゃあ僕は次の予定があるので、今日は失礼します。練習頑張ってください。」西垣プロはそう言って帰った。


練習場にある時計は既に14時近くになっていた。

「ちなっちゃん、そろそろ切り上げて飯でも行こうーか?」

「あら、もうこんな時間。どおりでお腹減るわけだ。ご飯いこ!迎えにも来てもらったし今日は私がご馳走するわ。何でも食べていいよ。」


「悪いなあ〜。お言葉に甘えてゴチになるよ。取りあえず松坂牛1kgがいいかな?」

「あのねえ、普段食べないものを食べるとお腹壊すからやめときなさい!」まるで母親のような言いっぷりだ。


「じゃあ、ちなっちゃんの好きなラーメンライスにしとくよ。」

「大樹もまだまだね。黙って私がいうとこに連れて行きなさい。」

「ヘイヘイ。」俺たちは車に乗り込み、千夏の言う通り車を進めた。

「そういえば、西垣プロが今度ラウンドレッスンやるって言ってたけど、どうする?」

ラウンドレッスンの翌週には、ゴルフ部のコンペがあるから、オレにとってはいい練習になる。


「行くに決まってるじゃん!何事も初めはあるんだから経験よ、ケ・イ・ケ・ン!」

いつも前向きなやつだと感心してしまう。怖いもの知らずとはこのことだ。

「田之倉とか由佳ちゃんはどうするんだろうな?」

「そうね。みんなにL I N Eして聞いてみよっと。」


結局、田之倉と由佳ちゃんはもう少し練習してから参加するということで、ラウンドレッスンにはオレと千夏2人での参加となった。


次のラウンドに向け、オレはニュークラブに慣れるためにひたすら打ち込んだ。

コンペの反省を頭に入れ、西垣プロから教わった奥のネットを9分割して、一球一休狙いを定めてショットする練習を繰り返した。まだ2回に1回の成功率だが、失敗しても次のターゲットを狙う。この練習は、ただ打つよりも集中力を保つ訓練になる。


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