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黄昏と丑三つ時  作者: 浩幹
2/4

ハロウィン(後編)

前編後編の分け方をミスりました。

申し訳ございません。

「…。」

暫く、水音だけが聞こえた。あ、血音かな。

5分位だったと思う。飲むのを止め、顔をあげると、それとほぼ同時に誠介が倒れた。俺の方に。

「!」

自我を戻した…って言ったらおかしいかな、でもそんな感じやったからな。

とりあえず、俺は誠介をベットに寝かせて、リビングに避難することにした。…悪いやつが自ら避難するとかどういう事やねん。

寝かせたときに見た誠介の顔は、血の気が失せていた。

ホンマに、ごめんな。ありがとう。



リビングに着くなり、俺はソファに寝ころんだ。天井が見える。あ、当たり前か。

「そういや…レイドフォーズ病ってどんなんやったんやろ。」

ちなみに、喉の渇きはまだまし。

「てか、俺救急箱ほったままやん。」

取り出していたものをすべて直し、元の場所に置いた。指の所は、また耐えれなくなった時のために絆創膏を貼らないようにした。

「どうせ暇やし、調べるか。」

机に置いていたスマホを取り、例の病気について調べることにした。

調べた結果、


・ハロウィンで仮装した人の3分の1がかかる病気

・かかった人は各々の欲求不満などによって魔女とか人狼とかに本当になってしまう

・ハロウィンの日の午後11時から次の日の午前3時の4時間

・それぞれ、財欲が幽体離脱によるゴースト、色欲が吸血鬼、食欲が人狼、名誉欲(?)が狐、睡眠欲が魔女、孤独がゾンビになると言われている


ということが分かった。

「…調べれば調べれるほど、ツッコミどころ満載な病気やな。」

てか俺は色欲だったんかいな。

「…とすると、俊太もなっとるな。」

そうつぶやき、俺はため息をついた。

俊太は前に俺に「俺さ、毎日毎日蒼依の事が頭から離れねえんだ。…どうしよう。」というめちゃくちゃ贅沢な悩みを聞かされたことがあった。

「俺だって頭から離れねへんわ。佐久間…。」

「呼んだ?」



その頃、俊太は邦海の言ったとおり、同じく吸血鬼になっていた。

「ちょ…止めてよ!」

蒼依は、俊太を殴って気絶させようと右腕を振り回した。しかし俊太はそれを華麗によけ、さらにその腕を掴んで蒼依を自分の方に引き寄せた。

「ふぇ…!」

抵抗できなくなった蒼依は怖さに目をつむった。

「…。」

暫く俊太は蒼依の顔を見つめていたが、やがて蒼依の肩に牙を刺して、血を吸い始めた。

「っ!」

はじめは痛さに顔を歪めたが、その内目がとろんっとなってきて、しまいには気を失っていた。

「あ。」



「え、さ、佐久間…!?」

慌てて立ち上がった俺の後ろにいたのは、佐久間だった。

「驚いた?何てったって今日はハロウィンだもの。」

「あ、そっか…。」

何年か前から、ハロウィンの日のみ幽霊が見えるようになるという現象が起きていた。

あの時はニュースとかが騒がしかったで。

「にしても、有間君…。」

「ん?」

「吸血鬼になっちゃったの?」

「え、あ、まあな…。」

佐久間は俺の体、特に顔をまじまじと見てきた。何すか、恥ずかしいんやけど。

「吸血鬼になってもかっこいいね。」

「…。」

俺、多分顔が真っ赤になってたんだと思う。佐久間が慌てて駆け寄り、心配そうな顔をしていた。

そして軽く微笑むと、俺に尋ねてきた。

「その姿だと、結構しんどいでしょ。」

「まあな。喉乾く。」

そういうと、佐久間は俺の目の所に自分の手を当ててきた。当たらなかったけど。

「お休み、有間君。」

俺は何かにかかった様にその場から崩れ落ちたーー。



「ん…あれ。」

気づいたときには、朝になっていた。俺はベットで寝ていた。

「誠介は…?」

どうやら先に起きていたようだ。珍しい。

リビングに行くと、寝間着のまま誠介がテレビを見ていた。時刻は午前9時だった。

「お、おはよう。」

「おはよう…体大丈夫?」

誠介の首元には、噛み跡が2か所ついていた。

「俺は大丈夫。安心しろ。」

「よかった。」

俺は胸をなでおろした。

「邦海こそ大丈夫か?」

どうやら俺は、床に倒れていたそうだ。それを見つけた誠介が、俺をベットまで運んでくれたそうだ。優しい。

「俺も大丈夫。そんなにやわじゃない。」

「佐久間が死んだときはすごかったけどな。」

…佐久間、俺に何をしたんだろう。

「ニュース、何やってんだ?」

「例の、レイドフォーズ病について。今回はヤバかったらしいぞ。」

ニュースによると、今回レイドフォーズ病にかかった人の大半が外を出歩いている人だったらしく、一時期治安が最悪だったそうだ。

ま、当たり前か。

「うお…。」

これからはもう仮装しないようにしよう…かな。


=====


「…ふ~ん。」

原稿を読み終えた浩幹は、それを邦海に返した。

「どうや?」

「面白かったけど…これをホンマに学校に提出するんか?」

国語の宿題で物語作成をすることになった邦海達は、浩幹の部屋で宿題を取り掛かっていた。

「俺もそれは思ったんだよな~。吸血鬼とか。」

「でもさぁ、森。そもそもテーマがファンタジーなんだよ?」

「だよな。もうこれは出してもいいと思う。」

「そうか~?」

俊太は納得してない様子だったが、星梨奈と誠介に丸め込まれた。

「俺、これの誠介さん目線も読んでみたい。」

浩幹が邦海の持っていた原稿を指さしながら言った。

「え。」

「あ~。私も読みたい!」

蒼依が目を輝かせながら言った。

「…やなこった!」

誠介はそっぽを向いた。

「「「「「ええ~。」」」」」

その場にいた全員が残念そうな顔をして言った。


 ☆


「…。」

後日。邦海は、浩幹に一つの茶封筒を渡した。

「…これは?」

「誠介が渡せって。」

「…。」

浩幹は不審そうに邦海の顔とその封筒を交互に見た。そして、恐る恐る封筒を受け取った。

「…俺、誠介さんを怒らせたかな。」

「さあ…。あいつ結構沸点高いけどな。」

そんな話をしつつ、浩幹は封を開けた。中には、数枚の原稿用紙とメモが入っていた。

「えー何々?…『絶対に他の人には見せるなよ!あと、夜の所だけだからな!』。」

「…。」

「誠介さんって、抜けてる?」

「ちょっとな。」

そういうと、邦海は浩幹の隣に座った。

「…読むか。」


=====

…首元が熱い。しかし体は冷たい。

「ん…う…。ふぁ…。」

俺に何が起きてるんだ…。首の違和感が半端じゃない。誰?邦海?何してるんだ?

「…。」

ま、まさか。

「え…え、は!?」

俺は慌てて起き上がった。頭が割れるように痛い。

咄嗟に俺の上に乗っていた邦海を引き離した。邦海は、目が真っ赤になっている上に、ボーっとしていた。

「え、邦海。お前、まさか…。」

邦海は口を半開きにしていた。そして口からが血が垂れていた。

「な…あれって本当にあったのかよ。」

レイドフォーズ病。多分邦海はそれにかかったんだと思う。

「大丈夫か…?」

さっきから俺が何を言っても反応しなかった。

「…。」

暫く黙っていたが、体は寒く、かすかにふるえていた。俺は、いつもの癖で邦海を抱きよせてしまった。

…まあ、こっからまた引き離すのもあれだし、まあいいか。

「…何があったのか知らねぇけど、気が済むまで吸っとけ。」

そういった後、俺は首を軽く左に傾けた。吸いやすいように。

「…。」

邦海は一瞬唖然としていたが、すぐに俺にかみついてきた。

暇だし、今の状況でも整理しておくか。

えっと…?多分、邦海は吸血鬼になったんだよな。

で、多分自分で自分を制御できてない。あれ。俺何を言ってんだ?

そんなことを考えていると、だんだん気が遠くなっていった。

血が少なくなったのか。もしかしてさっきからめちゃくちゃ寒いのもそのせい?

あ、もう…無理…。

俺は邦海の方に倒れた。



「…。」

再び起きたのは午前7時。俺にしちゃあ、めちゃくちゃ早い。

「…?」

邦海はいなかった。どこかに行ったのかな。

重い足を動かして、リビングに向かう。邦海はそこにいた。

「え…?」

邦海は、ソファと机の間に倒れていた。何があったんだ。

とりあえず、邦海をベットに運ぶ。邦海は人間に戻っていた。

「よかった…。」

暫く邦海の近くにいたが、俺はテレビを見に行くことにした。


=====


「…本当に夜だけの話やったな。」

「ま、誠介も忙しかったんとちゃう?」

読み終えた浩幹は、原稿を封筒に入れて邦海に渡した。

「にしてもさ。」

「ん?」

「本当に、レイドフォーズ病?があったら怖いよな。」

そういうと、浩幹は椅子にもたれかかった。

「…え、ホンマにあんで?」

「…はい?」

「俺、今なってるし…。」

そういうと、邦海は自分をさした。浩幹は驚いた顔をして、少し邦海から離れた。

「…。」

それを見た邦海は軽く微笑んだ。

「なぁ~んてね。」

彼の笑顔は、いつにもまして恐ろしく、美しく、またひどく不気味だった。

今日は10月31日、午後11時を過ぎたところーーー。

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