表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/15

残されたメッセージと残念な真実


 事実に暫く呆然としていたが、気を取り直す。

 何故ならあまり時間が無い。このまま野宿はとても危険だ。

 異世界という事なら尚のことで、予想外の出来事が起こりかねないため、入念に準備をしなければならない。


「申し訳ないけど、食糧として貰っとかなきゃな……」


 正直言って美味しそうとは微塵も思えないが、どのくらいサバイバルをしなければならないのかもわからない。背に腹は変えられないということで、エルフの彼が持っていた袋を袋ごと頂戴する。もう完全にハイエナだ。だが頂く物はもう1つある。


「刃物は必要だよな」


 俺はサバイバルについては全くもって未経験なのだが、そんな俺でも分かる必需品、ナイフの類だ。

 勿論、事故当時のまま異世界に飛ばされた俺は日頃からそんな物は持ち歩いていない。筆箱はあるがカッターはないので、やはり彼から拝借するのが一番手っ取り早いのだが。


「腰のヤツはちょっとなぁ」


 さっき触った時に思ったが、重い。

 これは俺が持ち歩いても邪魔になるし上手く使えないだろう。


「転生した時にスキルで体力無限とかを貰っていれば話は別だろうけど」


 さっきまで森を探索し、かなり疲れたのでそんなもの付与されてないのだろう。


「短剣とか……持ってないかな……おっ」


 いっその事、彼の鎧を取り外し内部を探ろうかと周囲をウロウロしていると、正面からでは気が付かなかったが、背面に小剣が装備してあった。

 

「これはありがたい」


 小剣は柄頭の部分に装飾として宝石が埋め込まれた美術品のようなとても美麗な品であった。

 売ったら金になるなぁ、と思いながら撫でるように触れる。すると、


『あー、あー!』


 急に大音量で響く野太い肉声、おっかなびっくりキョロキョロと辺りを見回すも影もなし。

 普通に怖い。ファンタジーで怖い。


『私の名はザイオン。このメッセ-ジを君が聴いている頃には私は死んでいるだろう!』

「めっちゃ声色元気じゃん。ホントかよ」

『ちなみにこれは直接君の心に私の残したメッセージを送っているので盗み聞きされる心配はない!』

「心に送ってるのにうるさい……」


もう声を発さない小剣の主を睨む。


『なお、この道具は長時間収録できないので手短に伝える』

「スパイ映画みたいなこと言いだした」


『まずは私の持ち物だが、好きなだけ持って行って貰って構わない。しっかし残念なことに!薬の類は解熱草と回復液しか残らなかった。まっこと遺憾だが許して欲しい!あと、好きなだけと言ったが下着までひん剥くのはやめて欲しい!』


 ガハハハ!と声は豪胆に笑う。

 それにしてもこんなにも楚々とした見た目をしているのに、言動といい声質といい、かなり逞しい。とても筋肉質な印象を受ける。THE兄貴肌といった感じの印象を受けた。


『あとは断片だけだが、鑑定の巻も確保できた!これに触れば君のできることが表示される。なんと言ったかな……まぁ能力だな!とにかく異世界から来た君にとっては道しるべともいえる重要な品なので大切に扱うように!』


 さらっと超重要なことを言われた。


「やっぱり俺、能力とか貰ってたのか!!嬉しい!!」


 思わず声が出る。やっぱり異世界と言えば能力、能力と言えば異世界!このルールは絶対だったのだ。震えてた恐怖が一転、子どものようにはしゃぐ。


『そして現在位置だが、この地域は魔鋼の森という未開の地でな、私にも正直よく分からないので頑張って何とかしてくれ』


 地図がないことに俺は少し落胆した。


『しかし、私が死んでいるからといって怯えることは無い。私の死因が君に襲いかかることはないので安心して生き延びてくれ』


 まだ彼の肉体は新鮮だったし、もし実行犯がそばにいたのなら襲われておかしくない状況だったことを俺は理解していなかった。

 先ほども舞い上がり大声を出したし、こういった危機管理も今後は気を付けなければ、と思わず流れた不安の冷や汗を感じつつザイオンの言葉を心に刻む。


『最後になるが、君にとっては何も関係なく迷惑と思うかもしれんが姫様をよ……』

「えらい中途半端なところで切れた」


 小剣を抜き差ししたり、バシバシ叩く。


「おーい、どの姫様だよー」


 もう宝石に触ろうとぺちぺち叩こうと何も起こらない。

 一回きりの使い捨てアイテムなのだろうか。


「まぁでも、当面に必要なことは教えてもらえたかな」


 一つ気になるとしたら、なぜ彼はこのメッセージを聞くのが異世界人だと知っていたのかということだ。残念ながら、真相はもう語られまいが。それよりも


「能力!確か鑑定の巻に触るんだよな!」


 早速、袋からそれっぽい巻物を取り出し慎重に開く。

 先ほど練習しても能力は発現しなかったので、やはり本質を理解しないとダメなのだろう。

 開いた巻物には何も書かれてはいなかった。

 一瞬だけ疑ったがちょっと紙とにらめっこすると、淡い光が一面を包んだ。


「おぉ!!」


 黒い文字が浮かび上がってくる。その文字がはっきりするにつれて期待がガンガン高まる。

 鏡がないから何とも言えないが、俺は希望に満ちた喜色満面の、言い換えればだらしなくキショイ笑みを浮かべていたと思う。


 (当たり前だ!中二病を患ったことがある奴なら誰もが一度は夢見る異能者だぞ!そうもなるわ!!)


 と心の中で騒いでいると発光が収まり、手元の巻物にはしっかりと文字が刻まれていた。

 

(ドキドキする。大学の合格発表よりもドキドキする)


 そして!俺は!意を決して!鑑定の巻を!見た!








【名前:御厨 曹(ミクリヤ ツカサ)

【種族:人間】

【HP:30】

【MP:21】

【状態異常:なし】

【魔法:なし】

【特技:なし】

【特能:ち〇こ無限創造】

【耐性:なし】

【加護:なし】








「……は?」



 我が目を疑う。よく凝らす。筆箱から目薬を取り出し一心不乱に注す。

 恐らく特能の欄がスキルだ。

 もう一度、よーく見てみよう。今度は、見間違いのないようににしっかりと。




【特能:ち〇こ無限創造】




 俺はこの時初めて、転生直前のやりとりを思い出した。

 あの時の声は幻聴なんかじゃなかった。

 欲に従ったらまさかこんなことになるとは。

 愚かなことを言ったと悔やんだ。そして危険も何もかも忘れて絶叫した。



「あんなの叶ったのかよおーーーーーーーーーーっ!!」





これ、描写細かくやりすぎると怒られそうで怖いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ